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さようなら、よかよかきっぷ

2023年10月29日をもって、山陽新幹線のよかよかきっぷが廃止されました。

福岡県外にお住まいの方は「よかよかきっぷって何?」となりそうですが、博多ー小倉間の新幹線を割引価格で往復できるきっぷのことです。
(他の区間の設定もあるのですが、今回は博多-小倉間に限定した話です。)
土日祝日限定、日帰り限定、自由席限定、前日までの予約・購入が必要(当日購入不可)といった縛りはあるのですが、それに見合うだけの利用価値のあるきっぷでした。

福岡市ー北九州市は人の流動が多く、新幹線の他にも高速バス(西鉄)や在来線特急(JR九州)といった交通手段もあるのですが、それらに対抗すべくJR西日本が用意したのがよかよかきっぷです。
(※博多ー小倉間は、同じ区間なのに新幹線の管轄はJR西日本で在来線はJR九州という、ややこしいことになっています。同じJRですが競合なのです。)

私はギラヴァンツ北九州の試合を見に行く等で年に数回は北九州に行く機会があり、そのたびによかよかきっぷを利用していました。

よかよかきっぷの実物

一度利用するとやめられない、圧倒的な快適さ

先ほども述べたように、福岡から北九州に向かうにはいくつかの交通手段があるのですが、所要時間では新幹線が圧倒的優位に立っています。

  • 新幹線(博多-小倉) 15~20分

  • 在来線特急(博多-小倉) 40~50分

  • 高速バス(天神-小倉) 95分

新幹線の20分というのはあっという間で、ちょっとスマホをいじっている間に着いてしまうので物足りなさすら感じるくらいです。
熱々のコーヒーだと飲む前に冷ましているうちに着いてしまいます(猫舌の私がよくやるやつ)。
在来線特急は新幹線の2倍、高速バスだと5倍近くの時間がかかるので、新幹線の圧倒的スピード感に慣れてしまうともう他の交通手段には戻れなくなります。

一方、他の都市間輸送でよくあるのが「新幹線は速いけど価格が高い(ので敬遠される)」というパターンです。
この点でもよかよかきっぷは競争力を持っており、

  • 新幹線(よかよかきっぷ、博多-小倉) 3,100円

  • 在来線特急(お買い物往復きっぷ、博多-小倉) 3,100円
    (買い物券1,000円分付きなので、運賃は実質2,100円)

  • 高速バス(スマホ2枚回数券、天神-小倉) 2,300円

在来線特急や高速バスの最安値との差額が1,000円以内におさまっているので、それならば圧倒的に速い新幹線で行こう、となるわけです。

実際にどのくらいのシェアがあるのか、までは調べてもわかりませんでしたが、博多から新幹線に乗ると小倉で降りる人が多いことがよくわかります(逆もまた然りです)。

コロナショックには耐えきれず

しかし、そんなよかよかきっぷにも逆風が吹きます。
その要因はコロナショックによる移動需要の減少、そしてそれによるJR西日本の収益悪化です。

冒頭によかよかきっぷの購入条件として「前日までの予約・購入が必要(当日購入不可)」と書きましたが、もともとはその条件はなく、予約不要で当日にいきなり購入することも可能でした。
それが、2021年4月より、前日までの予約・購入が必要となりました。
前売料金と当日料金を分けることは真っ当だと個人的には思うのですが、いつでも買える状況に皆が慣れすぎたせいで「改悪」という声も多かったです。

そして、それから2年半ほどが経過した2023年夏には、遂によかよかきっぷの廃止が決定。
移行措置としてポイント還元施策が用意されましたが、これも期間限定なので終了後には割引の類はいっさいなくなると思われます。

「アフターよかよか」の世界はどうなる?

よかよかきっぷ廃止後の新幹線自由席の料金は4,320円です。
高速バスや在来線特急の最安値の倍、価格差は2,000円以上となります。
これにより、新幹線を選ばない人もこれまでよりは増えるかもしれません。

ただ、価格は変わっても、新幹線の圧倒的なスピードは変わりません
倍の価格を払ってでも新幹線に乗りたい、という人は多いでしょうし、そのあたりの勝算があるからこそ、JR西日本もよかよかきっぷの廃止という思いきった手に打って出たのではないかと推測します。
また、JR九州や西鉄も経営が苦しくなっているのは同じなので、右にならえで割引きっぷを廃止したり割引率を弱めたりすることも考えられます。そうなればまた新幹線の優位性が増すわけです。

今後、福岡市ー北九州市の交通機関の勢力図がどのように変わるのか、それとも変わらないのか、利用しながら注意深く見守っていきたいと思います。

ちなみに、私はよかよかきっぷに骨抜きにされてしまっているので、今後も新幹線を使い続けます。

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