春休みの宿題の答え合わせその1

【毎週火曜更新・時間堂、年商1億プロジェクト28】時間堂プロデューサー大森晴香です、ごきげんよう。1か月ぶりの更新でも「毎週」を堂々と謳ってやります。Twitterはほそぼそやってまして、つい昨夜もこんなことをつぶやいたばかりです。

そんなわけで(どんなわけだ)この1か月ずっとずっと気にかかってた宿題に今日こそ着手します。その宿題とは、公演直前あるいは初日明けないと予約が伸びない!という積年の課題です(ことの経緯を最初から読みたい方は「超・具体的な小劇場の課題と対策」→「チケット予約の波を前倒すための考察」もどうぞ)。

ちなみに「チケット予約の波を前倒すための考察」の段階で、ここまではたどり着いていました。

よくある「売れ行きの波」は、
第一波:発売開始直後(ファン)
第二波:劇場入り前後(マジョリティ)
第三波:初日が開けてから(クチコミで判断するひとびと)
の3パターンなんじゃないかと思う。この第二波・第三波を前にずらすには、という発想。もしくは第一と第二、第二と第三の間でなにができるか、という発想の話だ。なんなら第0波があったら安泰。

で。

時間堂では具体的になにをどうするのか。まだこれから一般発売だというのに手の内を明かすのはどうなの?という気持ちはなくはないけど、ひとつめのアンサーが終わったのでアツアツなうちにはやばやオープン。今書かないと忘れちゃうからね、私。

第0波:期間限定・各回枚数限定先行予約の実施

よくあるやつだな、と侮るなかれ。先行で用意した「各回限定」の枠が売り切れるかどうかは、その先のプロモーションにはもちろん、公演に向かっていくあらゆるスタンスに多大な影響を及ぼします。決して大袈裟ではありません。なにせ、「2か月も先の公演のためにお金を払って時間を確保してくれるひと」が200人もいるわけですから。ものすごい心の支えです。

今回は先行予約でフルキャパの15%くらいのお席が埋まりました。もともと10%くらいを想定して予約枠を設定していたので、予想を上回る売れ行きだったといえます。この先行予約を振り返ってポイントだったことと、それを可能にしたものについて考えていきます。

先に言っておくと、「先行予約」をただやみくもにやってもうまくいかない危険だってあります。鳴かず飛ばずだったとか。安売りしすぎて売れたのに赤字になるとか。魔法の杖ではないのであしからず。

チラシを早く配り始めたこと

今までの公演では、初日の2か月前からチラシを配って1か月前からチケット発売、というスケジュールが多かったのですが、今回は先行予約もあるし、劇場も今までより大きいし、ということで約3か月前からチラシ配布を開始しました。そして先行予約は当初5月15日~24日の10日間を検討していたのですが、それだとDMが届いた直後すぎることが発覚。とはいえ一般発売との間に1週間くらいは時間がないと、票券の準備が整わないだろう(はじめてで不慣れだし)、なんて議論を経て、5月22日~29日という期間に落ち着きました。

結果、「チラシ届いたよ!」というお客様の嬉しいお声がSNSにちらほら見えてからの先行予約期間となり、「時間堂の公演は必ず観に行く」というコアなファンの方々にしっかりご希望の回をご予約できたと思います。先行予約は早くお客さんをつかまえたいという思惑ももちろんあるんだけど、応援してくださるかたにこそメリットを感じてもらいたい側面も強いので、この日程でできて本当によかったと思います。日程の再検討に関わってくれた劇団員と「時間堂の味方」のお蔭。

ちなみにこのかっこいいチラシ画像は、「チラシステージ」というアプリからダウンロードもできるんですよ。スマホでチェックだ。

はっきりと、前売との差をつけたこと

下世話に聞こえるかもしれないけど、これ以上パワフルな理由はなかなかないんじゃないかと。わざわざ早く予約してもらうための魅力は、わかりやすい方がいい。1,000円もお得!というのは非常にわかりやすい。

余談ですが、「当日券と前売券にはなぜ価格差があるのか」って聞かれたら、どう説明しますか?差があれば予約してもらえるから?もしそうなら、そもそもここでの悩みは一挙解決ですね(苦笑)。

本来の理由は別のところにあるそうなんです。

大手プレイガイドをちょっと検索してみましょう。チケットを買うためには登録料・購入手数料・発券手数料・システム利用料などなど、実にさまざまな「手数料」が上乗せされます。合計すると500円くらい。当日券と前売券が同一価格だったら、前売券を買ったほうが高くついてしまう。だから、手数料分くらいの差額をつけてしかるべき、という理屈なのだそうですよ。私もつい3か月前に知りましたけども。

そんなわけで、プレイガイドを使うなら前売と当日に500円以上の差をつけて、使わないなら同一料金でいいんじゃないか、というのが最近の私の持論です。

全席指定で席を選べるようにしたこと

ディスカウントすれば売れる、というだけでは説明のつかないことも実はあって、それは今回でいうと「もともと安いプレビュー公演まで売れた」ことです。値引き以外にも、早めに予約しておきたいと思わせる何かがあった、ということ。今回の場合、「お席が選べる」=「早い方が自分好みの席が取れる」というメリットを押し出したことが、プレビュー回への購買意欲を刺激したのではないかと思います。

「事前決済」が簡単にできる仕組みを採用したこと

今回はじめてLivePocket-ticketを使ってみました(詳しい特徴は、いずれ、プレイガイド比較の話は別立てで書くだろうからここでは割愛)。各社比較検討した際に、私が重視したのは「お客さんが自分で席を選べる」「決済方法が複数あって、誰でもどれかはあてはまる」「お客さんの手数料が無料」「主催者手数料が安い」の4点でした。このふるいにひっかかったのはLivePocket-ticketだけでした。

ちなみにお客さんも自分たちも手数料をゼロにするには完全直販という手もありますが、そうすると決済方法は振り込みか直接支払いくらいに絞られます。とても不便。手軽に支払えるシステムであることは、先行予約へのハードルを下げてくれます。

LivePocket-ticketは、カード、コンビニの他に携帯料金とまとめて支払う方法が選べます。ガラケーも対応。カード持ってなくても携帯は持ってる、携帯持ってなくてもコンビニには行ける、という理屈で便利です。

早い段階で売切れ回が出たこと

この効果は絶大でした。たとえ1ステージでも、発売初日に予定枚数完売、という響きは強烈な促進材料になります。これはたまたま同じ時間帯に予定があう方が多かった、という「運がよかった」こともありますが、「なるべくしてなった」とも言えます。その要因は、枚数をかなり限定したこと。まさか初日に完売するとはさすがに予想しなかったけど、期間の前半で1ステージは無理なく売り切れるような枚数にしていました。そして、これはあとから気づいたのだけど、「2時間45分」という上演時間をチラシに明示したことも一因だと思います。長大な作品は休日の昼間に観たい、という心理、5年前までサラリーマンだった私にはわかる気がします。回によって売れ行きが偏るのはネガティブに思われることもあるけど、今回は断然ポジティブな効果が大きかった。今後も、「1ステージ完売回を出す」という意識を戦略に乗っけると勢いがついてよさそうです。

ちなみにまたまた余談ですけど、枚数限定にするのはほかにもいくつか意味があります。その中で私が重視するのはチケット単価を下げすぎない、ということ。先行予約が好調だからと言って、単価の安いチケットを売りすぎて定価で売れる席数が減りすぎてしまうと、全体としての収入のキャップ(上限)がどんどん目減りしていきます。お客様があふれたらどんどん追加公演を打てるとか、会場がいくらでも拡張するとかだったら話は別ですが。

毎日、売れ行きレポートを内外に出したこと

Twitterや関係者メーリングリストで、どの回がどのくらい残っているのかをデイリーで発信しました。ひとは、目に入らないものを意識に上らせ続けることは不可能だと聞いたことがあります。どのくらい急がないと希望の回が取れなくなりそうか、というのがある程度の頻度で目に飛び込んでくる環境をつくる、とでもいいましょうか。これができた背景には、票券管理を複数体制にできたことが大きく関与しています。

もともと先行予約スタート時点では、私の準備がまごついたせいで票券情報が取り扱えるのは私だけでした。このまま一人でやろうか、とも迷ったのですが、設定ミスが見つかったこともあって、ダブルチェックできるように制作助手に使い方を伝授。そしたら忘れっぽい私と違ってきっちり毎日レポートが流れるようになりました(嬉)しかも私の睡眠時間も伸びるという副次効果つき。

こういう経験をすると、成果へのインパクトはスキルやノウハウ以上にマネジメントが持ってるんだな、と身に沁みます。

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まだありそうな気がするけど、ひさしぶりなのにいっぱい書いてちょっと息切れです。思いついたらまた書きます。

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そんなこんなで次の日曜からはいよいよ一般前売開始です。ここまでこんだけ「先行予約はお客さんにメリットいっぱいだ」と書いておきながらアレですが、実は一般予約が始まることで解禁になるおもしろチケットや、先行予約に間に合わなくてもお得に観る方法がまだあるのでした。うふふ。

その他、今日6/1は実はめっちゃたくさん情報公開しました。題して「ゾヤペを10倍楽しむ方法」、チケット情報は④に詳しいです。

【ゾヤペを10倍楽しむ方法③】ワークインプログレスで稽古場に潜入!

【ゾヤペを10倍楽しむ方法④】「VIP席」「Z席」ってなーに?

【ゾヤペを10倍楽しむ方法⑤】7/9土どくんご『愛より速く』にゾヤペが乱入!

ちなみに【ゾヤペを10倍楽しむ方法①】ロシア勉強会で学んじゃおう!6/5日14:00~16:00第3回『ロシアNOW』もまだ受付中です。日露演劇会議専務理事で文化交流コーディネーターの田代紀子さんをお招きします。田代さんは、私が知り合った昨年11月末から今までだけでも知ってるだけで3回はロシアに行ってらっしゃいます。もっといってらっしゃるかも。すごい頻度。

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さて。また近いうちにお会いしましょう。おやすみなさい。

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