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ロシアの戦争の足跡を知る(ロシアの論理)

ロシアの戦争の歴史をYouTubeで詳しく解説

豊島晋作のテレ東ワールドポリティクスの動画から引用しています。


ロシアはなぜウクライナへ侵攻したのか?

ロシア人の世論調査の数字
緊張を高めたのは誰なのか?
アメリカやNATO:50%
ウクライナ:16%
ロシア:4%

ロシアは報道の自由がないので真実は報道されないという前提がある。


世界はロシアを侵略的国家だと思っている

2014年、クリミア半島を軍事力で奪い取った。
軍事力でウクライナを脅している。


ロシアからすると逆の論理

歴史的には侵略的なのは西ヨーロッパ諸国である。
ロシアはフランスやイギリスを侵略したことはない。
過去にロシアはドイツのベルリンへの侵攻はあったが、ドイツがモスクワを脅かしたからであり、それは専守防衛的な行動に過ぎない。


フランスのナポレオンに攻め入られた過去

1812年頃、フランスのナポレオンがロシアに侵攻しモスクワは陥落。
当時のロシアの首都はサンクトペテルブルク。

ナポレオンはロシアの当時の第二の首都モスクワに約60万人の大軍で侵略した。
国土は蹂躙され多くの国民が亡くなった。
ロシアでは国を守った”聖戦”として記憶され、「祖国戦争」という。


他国からの侵略を受けるロシア

ドイツは1918年のドイツ革命まではプロイセン王国と名乗っていた。

1914年頃、プロイセン(ドイツ)がロシアに侵攻
(第一次世界大戦中)

プロイセンはまずフランスを攻撃したのち帝政ロシアを攻撃。
ロシアはフランスの要請を受けてプロイセンを攻撃した。
しかし、ロシア第1軍第2軍が壊滅。
ロシアは同盟国であるフランスとイギリスと戦うために参戦したという意識がある。

1915年、プロイセンは本格的にロシアへ侵攻する

ロシア軍はベラルーシやウクライナから敗走して、長引く戦争でロシアの国家財政は逼迫することに。
この国民の逼迫状況が1917年のロシア革命となり帝政ロシアは崩壊する。

革命の赤軍と保守の白軍による内戦に突入

第一次世界大戦は1918年に終わっているが、ロシア国内ではさらに混乱していた。
内戦により1000万人も減少し、浮浪孤児は700万人超となった。
1921年 農業生産も激減し、ヴォルガ川沿岸地方での飢饉では500万人以上が亡くなった。

他国から侵略を受ける

1918年 ロシア国内の混乱に乗じてドイツ軍はウクライナを占領。
ベラルーシ、ラトビア、エストニアを占領。

トルコ軍はカフカス地方(ソ連南部)に侵入。
(トルコ軍は現在NATO加盟国)

1918年 日本軍がウラジオストクに侵攻。

いろんな国から侵略を受けた。

国の弱体化が他国の侵略を招く

このように侵略された過去から、ロシアは緩衝地帯、強いリーダー、強い軍隊が必要と考える。
これがトラウマとなっている事情である。


第二次世界大戦

ドイツとの戦争は熾烈。

独ソ戦(東部戦線)

1941/6月 ドイツはバルバロッサ作戦を発動。
独ソ不可侵条約を一方的に破り、ドイツ軍は330万人の大軍でソ連領土に侵攻。
北のバルト海から南のクリミア半島まで3000㎞もの戦線において一気にソ連を攻撃。

独ソ戦の凄まじさは、第二次世界大戦での日本の死者数は約300万人と言われるなか、独ソ戦でのロシア人の死者数は2700万人と言われる。

ロシアでは第二次世界大戦を「大祖国戦争」と呼んでいる。

(注)ロシアではドイツのファシズムからヨーロッパを解放したという自我がある。
ソ連はドイツベルリンへ侵攻し、大半はソ連が攻略したと言われる。
連合軍はノルマンディー作戦でヨーロッパ北西部を奪回したが、ドイツ本土侵攻はソ連がその中心的役割を果たした。



第二次世界大戦で最大規模の闘いはこの独ソ戦だと言われている。

「独ソ戦」著書からの引用
「あらゆる面で空前、おそらくは絶後であり、まさに第二次世界大戦の核心、主戦場であったといってよかろう」
「北はフィンランドから南はコーカサスまで数千キロにわたる戦線において数百万の大軍が激突した」
「戦いの様態も陣地による歩兵の対陣装甲部隊による突破進撃空挺作戦上陸作戦要塞攻略等々、現代の陸戦のおよそあらゆるパターンが展開され軍事史的な視点からしても稀な戦争であった」

ソ連軍は敗退を繰り返していた

開戦初期で100個師団以上を失う。
(全部隊の5分の3、航空機3500機)
キエフ戦までに45万人の兵員を擁する。
43個師団からなる4個軍が壊滅。

ドイツ軍はキエフを占領してモスクワに進軍する

モスクワ攻防戦は第二次世界大戦で最も重要で史上最大の戦闘であった。
両軍で700万人動員、戦死・捕虜・行方不明者・重傷者は250万人。
ドイツ軍は捕虜にしたソ連兵を殺害。
戦死者、捕虜、行方不明者のソ連兵95万人が消えたとされている。

ソ連側死者:189.65万人
ドイツ側死者:61.5万人
スターリングラード攻防戦での死者数は91万人であるから犠牲者250万人は圧倒的である。

大きな被害となった劣勢の原因の一つには、スターリンは戦争前に赤軍幹部を大量に処刑。
軍事的合理性に欠ける命令を乱発し内部から苦しめていた。


ソ連軍のバグラチオン作戦(1944/6/22)

ソ連軍は125万人動員。
戦車自走砲4000両、航空機4800機投入。
ドイツ軍は33万人の兵力。
戦車自走砲500両、航空機600機。

ノルマンディー上陸作戦(フランス奪回作戦、1944/6/11)
この作戦の最初の参戦兵力は20万人であるから、バグラチオン作戦は最大規模の作戦であると言える。


ソ連の被害

人口は約3440万人も減少(2億人から約1.6億人に)。
260万人が身体に障害が残った。(日本の戦死者数に匹敵)

1710の町、7万の村が破壊。
3万1859の工場施設が破壊。
1000の鉱山が破壊、6万5千キロの鉄道が破壊。
3分の一の国富を失った。

独ソ戦は絶滅戦争、皆殺しの戦い

自分たちの国土は侵略され続け、国民は虐殺され混乱に苦しんだ。
2700万人の犠牲を払ってきたロシアはこれが根底にあるとされている。
現代のロシアの人々の原点とも言える。

被害者意識が強いため、ウクライナという緩衝地帯をNATOにさせるわけにはいかない

ウクライナはルーシ公国(キエフ公国)の発祥の地


タタールの軛(くびき)

ロシアは13世紀、モンゴル人による国土蹂躙と支配を受けた。
ロシアは他国からの侵略に警戒感が強い。


大祖国戦争後

スターリンは800万人を処刑・収容所へ送った。
外国から攻められ、国内では独裁者が暴君となり、大惨事に見舞われてきたロシアの歴史。

マルクス主義というロシア人からすればおよそ使い物にならないイデオロギーの実験台にされ、国内経済がメチャクチャになった。

亀山郁夫氏というロシア研究の専門家は、新聞への論考では
「20世紀のロシアという地域に幸せな時代はほとんどなかったように思う」と語っている。 



1989年 冷戦が終結

アメリカなどの西側と和解。(ゴルバチョフ書記長、ブッシュ大統領)

ソ連は西側と対峙してきた軍事同盟であるWTO(ワルシャワ条約機構)を解体。
ゴルバチョフ書記長は自分が剣を捨てたのだからWTOと対峙してきたNATOも解体してくれという提案をしたが、それは認められなかった。

ゴルバチョフ書記長は、とにかくNATOが東側に拡大してくるのは困る、自分たちの縄張りに接近するのは困ると伝えていた。

このNATO不拡大の約束に関しての事実的証拠は下記。
(外交文書が機密指定解除となったものなどを参考)

① ブッシュ政権のベイカー国務長官 1990/2/9
NATOは東に1インチも拡大しないとゴルバチョフ書記長に発言。
② 外交文書
アメリカがソ連にNATO不拡大を約束した拘束力のある外交的な合意は存在せず。


NATOはクリントン政権になって東に拡大

ブッシュ政権からクリントン政権へ代わり、NATOは旧共産圏諸国を取り込み、東方に拡大した。
16カ国(1949年)が30カ国(現在)となる。


ソ連時代の衛星国は離反が相次ぐ

ソ連は東欧諸国を弾圧してきた。
衛星国はロシアから段々離れていき、西側によっていった。
(ポーランド、ハンガリー、チェコなど)
旧ソ連諸国は「もうソ連は嫌だ!」となり離反。
ソ連の自滅と西側の巧みな情報戦により取り込んでいった。
これがNATO拡大の原因でもある。

ロシアからするとアメリカが裏切り(NATO不拡大)、かつての衛星国をどんどんと取り込まれ、アメリカへの不信感が強まった。


ソ連は社会主義から資本主義に

ソ連崩壊後、西側主導で市場経済を導入。
急激な経済改革で国内経済が大混乱。
ハイパーインフレになり、貧富の格差拡大。

ロシアは経済安保で西側に嵌められたと思っている。


これ以上のNATO拡大は絶対に許さない

仮にロシア、中国、朝鮮半島、インドネシア、フィリピン、台湾などが同じ軍事同盟で日本に圧力をかけられたら、当然に日本は外交交渉等で不利になる可能性がある。
すると、軍備増強や核武装という議論が熱を帯びてくる。
(補足)
最近の北朝鮮による日本海への旺盛なミサイル着弾と中国による尖閣諸島への威嚇行為が日本人の軍備増強賛成派拡大に寄与することとなっている。

相手が民主主義国家や専制国家などは理由にならず、経済的軍事的に圧力をかけられた国は当然のように防衛的な政策になる。

そういった背景からもロシアはNATO拡大に反対してきたし、兄弟分のウクライナまでもがNATOに入るのは絶対に許さないという意識がある。
ウクライナにNATOのミサイルシステムが配備されれば、ロシアの喉元に銃を突きつけられるのと同じ。


アメリカ国内でもNATO拡大に反対する勢力があった

国際政治のリアリズムを考える人たち。
「どのような状況が国家間の緊張を緩和し、戦争を回避する状況を生み出すのか」ということ。

ジョージ・ケナン元外交官(1904-2005)
”対ソ連封じ込め戦略”の立案者であるが、当然にソ連からも嫌われている。
その彼ですらNATO拡大は強く反対であった。
「NATO拡大がアメリカの致命的な過ち」
「NATO拡大はロシアのナショナリズムを反西側的で軍国主義的な傾向を助長し、ロシアの民主化を妨げるだろう」
「東西間には冷戦のような雰囲気が戻り、ロシアはアメリカに逆らう外交をとるだろう」
せっかく冷戦が終わったのに、NATO拡大で刺激して「侵略のトラウマ」を呼び起こせば、かつての敵国に変えてしまうと警鐘を鳴らしていた。

NATO拡大は正しい民主主義に見えても、国際政治のリアリズムでは危機を助長するだけなんだということ。
アメリカの国務省、ロシアの専門家のなかでもかなり多い意見だと言われている。

現実はまさにジョージ・ケナンが言ったとおりとなった。


現在のロシアはアメリカの敵国

ロシアは中国と仲良くし、共同でアメリカに立ち向かうようになっている。
つまり、アメリカが自ら2つの大国を敵にする状況を作ったとも言える。

国際政治における勢力均衡(バランスオブパワー)は大きく崩れると戦争が起こりやすくなる。
NATOが拡大すると追い込まれたロシアは何をするか分からない。
であれば、NATO拡大はせずに均衡させておいたほうが秩序と安定が保たれるのではないかという見方がある。


原点に返る

だからといってロシアがウクライナに侵攻して良いとはならないし国際法違反である。
ロシアが侵略されてきたことをウクライナにやろうとしている事実となった。

NATOは開かれた国際条約で、どの国でも加盟できるのでウクライナが加盟することに間違いはない事実。


マデレーン・オルブライト国務長官

クリントン政権の国務長官だった人物。
ヒトラーやスターリンの脅威から逃れてきたチェコスロバキアからの移民(ユダヤ系)である。

オルブライトの地元を中心にチェコ、ハンガリー、ポーランドなどをNATO加盟国にしてきた。
彼女はそのNATO加盟式典で「ハレルヤ(讃える、賛美する)」と言った。

ナチスやスターリンといった独裁者によって周辺国は脅威にさらされたのだから、守りたかったという思考もなくはないだろう。
(もちろん、彼女の意向だけで実現するわけではないが)

ソ連の東欧弾圧を考えればNATO拡大は当然の報いと考える人もいる。

プラハの春というチェコスロバキアの変革運動。 



長期的な視点で見ることが大事

国際政治の永い歴史において、良いことや正しいことと思えるモラルや道徳的判断が必ずしも長期的に秩序の安定をもたらすわけではない。



「同士少女よ、敵を撃て」

本の紹介
逢坂冬馬氏著作

独ソ戦における女性スナイパーの話。
旧ソ連には2000名とも言われる女性スナイパーがいた。

リュドミラ・パヴリチェンコ(ソ連軍の女性スナイパー)
確認戦果300人超は世界屈指のスナイパー。
英雄と言われている。 


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