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故きを温ね新しきを「創る」〜テーマパークとしての飛騨・高山を観る〜

じはんきです。
ずーっと飛騨・高山という街は、日本人の旅行先にとってあまりメジャーなところではない気がしていました。実際に行って見てみるまでは。

この度の旅行で、この街に感じる魅力の素晴らしさと、さらに強力な案内のバックアップとともに「テーマパーク」として高山を観て、何か還元できないかと思いこの記事を書き出しています。

それでは早速。

肉料理というマジック

飛騨牛というブランドに飛びついて高山にやってくる人は多くいらっしゃるでしょう。各地で食べられる牛肉を使った料理は、まるで魔法のように私たちを楽しませてくれます。しかしながら飛騨牛がここまでの賑わいを見せるまでに、そう長い時間がかかっていないことを知る人は多くないと思います。なんなら東京ディズニーランドと、そののし上がりの歴史の長さは同じくらいです。

ディズニーランドがウォルトの思いつきで始まったように、飛騨牛は一頭の牛の購入からその歴史がスタートしています。「安福」と名付けられたその牛は、4万頭以上という信じられないくらい驚異的な子を残しこの地に礎を築いているのです。飛騨牛の特徴として「ほろろとした柔らかさと甘い香り」が第一に上がりますが、その魅力全てはこの一頭から始まっています。

さて。飛騨牛の「強さ」は良質な牧場の環境と気象にも大きく支えられていることはご存知でしょうか。旅館にいるとわからないんですが、飛騨って寒い時はめちゃめちゃに寒い上にその日まで天気が全く読めないんです。変わりやすい天候が肉質に影響を与えていることは、まだ掴めていないところもありますがどうも事実だそう。さらにすごいのが「有名どころのファームは牛にどこまでストレスを与えずに育てるかに力を入れている」ということ。牛同士の位置から飲み水に至るまで気を遣う徹底ぶりに驚きを隠しきれませんでした。

ここで注目すべきは、どれだけの魅力を持っているか、生産者も提供者も、そして飛騨中の料理人もわかっている上で、良い方向へと持っていけるように全力を尽くしているということです。全員が同じ方向を向いていない限り、その魅力を伝え切るのは難しいんですね。飛騨牛のバックグランドストーリーめいたものは強烈ですが、それ以上に私も含めて「自分から触れなければ知ることがない」というのが課題になっている気がします。しかしこの熱意なら、きっといずれ自然に気づくはず。そう感じずにはいられませんでした。

それぞれのテーマパークの魅力も、そうであってほしいものです。

荒れたジオパーク

飛騨高山といえば豊かな自然のイメージがありましたが、特急に乗って訪れる途中で「それ」は音を立てて崩れていきます。鬼のような形相でこちらを見つめてくる飛水峡、放置された土砂崩れ、さらには「白雪姫の恐ろしい冒険」に出てくるような色をした緑の葉っぱ一枚つかない痩せこけた木々もところどころで姿を現してくるのです。日本ラインという言葉の響きからは想像がつきません。

私たちは思ってる以上にコントローラブルな世界で生きています。それは都市というものでもあり、人間のエゴというものでもあり、さらにはアドベンチャーランドのような「整備された自然」というものでもあります。私はこの荒れ狂った大地を見て、初めて日本の本来の自然とはこんなものなのだろうな、という感想を抱きました。それは間違いなく、いざとなったら容赦なく牙を研いで襲いかかってくる獣のようです。

それでも、緑あるところは本当に緑豊かです。痩せこけた大地というわけでもなく、自然に任せた自然のままが残っていることが、このジオパークの魅力であるとも感じます。決して美しくはないです。決してきれいではないです。でも、そこから目を背けては生きていけない。そんな厳しいメッセージを受け取ったような気もします。

さて。アドベンチャーランドやロストリバーデルタで見られる自然はさながら亜空間爆弾で切り張りしたようにも感じますが、その整備度合いは見事なものです。適度に、邪魔せず、さまざまな世界の「自然」を調和させている様は、毎回訪れるたびに感心しています。しかしながら、木々は毎度変わる景色ではなく、成長したり伐採したりされるのはみなさんもご存知のことでしょう。それはテーマパークに限ったことではありません。

例を挙げるとするならば開園当時ののホーンテッドマンションかなぁと。資料画像を見る限り何もなかった土地にうっそうと茂っていく様は、1年や2年という歳月ではなし得ないものです。テーマパークにおける自然の奥深さは「隠す」ことではなく「再現する」「変わりゆく」ことにあると私は考えています。刻一刻とありのままを変えていく自然なら、テーマパークの植栽も(コストを許す限りで)変わっていったりするのが「自然」かもしれませんが、逆に変わらないものを残す自由さもあるのがまた面白いところです。

「古い町並み」とメインストリートUSA、そしてアメフロ

高山で最も賑わい、またテーマパークらしさが色濃く出る場所といえば間違いなく「古い町並み」でしょう。城下町、商人街、中世建築の保存という三つの顔を持つこの地区が持っているポテンシャルは相当のものです。外国人と若い方がいっぱい溢れ、活気に満ちていることに大きな衝撃を受けました。

この地区に最も近いテーマパークのエリアはメインストリートUSAやアメリカンウォーターフロント。そして西武園の商店街もそうです。伝統ある建築と、その「種」の保存。ただし、彼らと決定的に違うポイントが「古い町並み」には存在します。それは「外見は伝統ある建築でも、中身は全く関係のないあたらしいお店やカフェになっている」という点です。どちらかというとUSJにおける「セットファザード」に近いかもしれません。

アメフロなどは「その地域の特色とストーリー」を生かしたお店が多いのですが、古い町並みに関しては本当に建築と土地のストーリーに全く関係のない「インスタ映え」するカフェもあります。それでも、建物自体の構造を生かして新しい風を吹き込んでいるのだから素晴らしいものです。

またすべての建物が全く関係のないものになっているわけではなく、上記画像のように「実際のお酒造りの史跡を残した建物」もあります。「うそのほんもの」ではなく「ほんもの」なのでむっちゃ強いです。これでバランスを取っていると言ったら雑になりますが、そうしたものがあること自体に驚嘆していました。

メインストリートUSAとアメフロの真のテーマの凄さは「当時のアメリカの人々の想いの再現」にあると私は思います。なつかしさだけでなく、自分たちが何をしたのか、してきたのかを呼び起こし、知らない人にはそれをわかりやすく紹介する。歴史に基づくものを主軸にしているエリアは、それなりの「覚悟」を持って描ききっています。BGSの力を信じる方は、同じようにそう信じているのです。

これからの「歴史を再現しようとする」テーマパークにおける建築とストーリーのヒントは、この飛騨・高山にあると私は確信しています。ディズニーやユニバーサル・スタジオはなかなかこういうものに踏み切らないかもしれませんが、そうなった時はこれらの持つパワーを感じて、何か新しいイマジネーションを起こすことができればと願ってやみません。

おや、タバコを持って町並みにはいっちゃいけないったら。

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