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猫と子どもと距離感

特定非営利活動法人峠工房は、所謂総合福祉を目指して50数年前に発足。
当時から犬、猫、うさぎ等がいて重度障害者の為の情操教育なんかにも役立っていたなんてのはあります。

本音は、単に動物好きなだけってのもありますけどね。
そんな活動ができる程度には田舎だった峠工房ですけどこの20~30年で宅地も増えて来たこと、相続税対策での資材置き場への貸し出しが増えるなどで、昔ながらの動物状態にはし辛い環境に。
ただ、猫だけはいつもいる、猫の途切れない福祉施設、福祉事業者としてほそぼそと存続してきたりしてました。

で、現在は放課後等デイサービスも故あって行っているのですが、そこにも猫が関わる事になったのですね。

発端は野良猫がいついていた事

数年前に放デイをやる事を勧められてというか半ば懇願されて始めた訳ですが、借りる場所は地元地域なので昔から知っている方の所有物でした。
資料館として元々存在していましたが、創設者が亡くなった事で半ば閉鎖気味でいた所、色々と変遷を経て峠工房が借りることになったのですね。
このあと色々とあって家で借りました。
そして、準備の時から猫が多いなあ、と。
それなりに楽しそうな建物だなあ、とおもってましたが開設1年目。

子ネコがいるじゃん!!

となりまして、そこから数年に渡る野良猫保護作戦も平行してきたのですね。
数匹生まれる子ネコからシーズンごとに幾匹か捕獲して里親探すというね。
そんな事が続いて数年。
猫もなれてきたので、時々気づくと開けたドアから入ってくることも。

転機は2021年

ドアを開けているのは、2020年のコロナ対策で開放しなさい案件から。
そのために、玄関とスロープのある入口ドアを開けていたら猫達は普通に入ってきて餌をねだる様に。
春の子猫を捕獲したものの秋の子猫はとおもっていた黒子猫が行き倒れ気味なのを助けて(後にわかったけど腰に畸形があった)、子どもたちが猫にテンションアップ!しばし保護して里親の元に行く事になったんですが、その後がやばかった。

一番猫をかわいがっていた小学校1年女子がこの世の絶望を全て受け取った様な表情でこちらを見上げる状況になって、罪悪感がマックスに。
いや別に何もこちらは悪いことしてないし、猫は優しい人が引き取ってくれるんだよ、と言ってたのですが、まだいるとおもってたのでしょうね。

そんな事で(大人の心が)修羅場だった2~3日後。
今いる子猫が玄関先にちょこん、と。
やたら人馴れしてて、飼い猫?迷い猫?とおもったら資料館の住人猫の一団にいつもいるので、あの子猫の兄弟姉妹かとなったし子育て確認してる時にいた毛並み、多分オス、と思って傍から見るとコメディ映画そのものな流れで保護をしていったのです。

初日はしゃー!とかふー!とか言ってた癖に翌日には撫でれ撫でれとよってくる。
まさかこれが噂のNNN!
保護して数日後に件の女子がやってくるのですが、猫がいると言う事で見て、そこからの展開がとんでもない事に!

猫偉大なり!     

最初は、また居なくなる事があると思ってた様で、自分はいいと言ってたのですが、園長がスタッフ創くんと、スタッフのんちゃんが猫を飼うって決めたからずっといるよ、となって今度はこの世の希望を全部受けたかのような笑顔で、猫ちゃんの所に行く!となって来ると毎回猫の所に行くように。

そして、小さい子猫(この時点ではまだ2ヶ月くらい)のお姉ちゃんとして遊んだり、なでたり一緒に居眠りしたりをしてる様な日が増えてきました。

反面、同じ1年生の男児たちは猫と遊ぶという事になって、大騒ぎになるのですけれど、これも人それぞれ。
猫の事を本で調べて四角四面に対応する子。
猫と一緒になってハイテンションになる子。
そして猫が自動作動の自分のためのおもちゃの様に思う子。

四角四面には猫もお世話係認定、ハイテンションの子には下僕認定、で自分をおもちゃの様に思う子にはまったくの無視という感じがでるくらいに成長した頃、その1年生女子に対しては群の仲間かコロニーの兄弟のような遊び相手兼仲間の様に付き合う様になったのですね。

変化すごい!

そしてその女児が最初はぬいぐるみを可愛がるかの感じだったのですが、猫だって嫌なら逃げますし、近寄りません。
だんだんと猫との付き合い方がわかってくると、猫から近寄っていきますし、その子をみると喜んでいる時があります(しっぽの動きとか鳴き声から理解る)。

段々と猫と遊ぶ時間、一緒にいる時間、ご飯を上げる時間などを分けていくとご飯を上げるときには、ままごとのような小芝居をしたりお母さんにそうやって怒られてるのね、みたいな感じになったりして猫に対しても本当の意味で可愛がるができてくるようになります。
ぬいぐるみではなく、生きている動物、何かを考えている生き物として認識してくると対応も変わってくるものなのですね。

そうこうする内に猫も数ヶ月になると年齢的には小学生よりお姉ちゃんになっているので今度は猫がお姉ちゃんの様な振る舞いをします。
遊んであげたり、一緒にソファで座ったり、退屈なら遊びに誘ったり。
多くの行動が猫の群、集団としてのコミュニケーションを使って行うので小学生も猫とコミュニケーションを取ろうとします。
その1年生女子も、だんだんと猫と対話する事で会話がスムーズになってきている面はでてきていたのですね。

で、あるとき医療センターで会話の能力が凄く上がっていると。
それをいわれた保護者さんが、放デイでの猫体験を話したら合点がいった、みたいになったそうです。
猫と、猫の世話を一手に引き受けている(事になっている)おっちゃんこと、スタッフ創くんとの会話や要望を伝える為の言葉えらびなどが成長に役立っていったのでしょうね。
餌を上げるときにも自分でやるということで、今まで開けられなかった蓋を開ける事ができるようになってきたし、フォークを使って餌を細かくすることもできるようになりました。

下手な人を雇うより猫一匹飼った方が療育にいいんじゃないの?みたいな勢いです。

そして子供と猫との距離感

1年生女子は、猫ととの距離感が非常に近くなっていて猫が甘えていく事もあります。
ふたりとも猫なんじゃないのか、と思うくらい仲良く寝転んでいたり話していたり(通じているかは知らない)、ご飯時に我慢をしてもらったり(時々は待つ)、遊んだりまったりしたりという距離感は、お互いの好意とか相手を考える事をしている様です。

反面、猫の方が大人になってきているので悪知恵で翻弄されてしまったりしますが(笑)
餌を上げる時に甘える振りして容器からいっぱいださせたりね。


四角四面一年生男子は、四角四面が災いしてお世話係の域をまだまだ脱出できない状態。
本で読んだ通りにするので、本で読んだ通りの動きしかしないので猫が退屈マニュアル通りにやってますてのは以下略してしまうのですね。
柔軟性や突拍子もない反応に対処できるようにならないとなかなか、動物と仲良くは難しいでしょうねえ。
飼育係脱出には、まず本で読んだ通りを脱してからになります。
そして柔軟に対応し本で読んだ智識や情報を自分の経験で補える様になると良いのですが、まだまだ先は長そうです。

ハイテンション1年生男子は、猫が遊び相手とは思ってくれているみたいなので、まあまあ。
この子はものすごく低いといわれていたのに、実は情緒面が豊かな子です。
そして、相手の事を自分に置き換えて悲しくなったり怖くなったりできる子なんですね。
親猫が怪我して最後の子猫と一緒に玄関に入ってきた時には「怖い」と泣きましたが怪我して血が出てて怖い、痛そうということ自分に置き換えてしまうと怪我で怖いだろうという共感をしてしまったのですね。
これも猫保護してなかったらわからなかったかもしれません。
または、時間がものすごくかかったかも…。

猫を自動おもちゃと感じてる子は、自分が王様だった幼少期を過ごしているので(持病のこともあったので)、元気になった今も世界は自分中心として回っているかの様に振る舞いますが、猫にとっては世界の中心は自分なので相容れず、あまり相手にされていません。

とは言え、この子だって最初から猫が相手にしてなかった訳ではなく、ハイテンション男子が怒られている事で落ち込んだときに猫が前に来て撫でて良いよ、と慰めにきたのに無視しちゃってからなんですよね。
猫にとっては群の相手に入れるか入れないかの判断基準をしてた時期なのでそこで相手にされなかった事もあって、私あなたのおもちゃじゃないんで、反応になっているのだと思います。
まあ、逃げないしそこに居ても良いよ?を見せるのでまだリカバリのチャンスはあります、がんばれ!

距離感が仲良しの尺度

猫がどれだけ近づいてくれるかが仲良しの尺度になります。
猫が自分から近づいてくる事があれば、またくつろいでいる時に近寄っても逃げなければそれは猫にとって好ましい存在。
小動物にとって好ましい存在であると言う事は、人と相対する時にもそれが発揮できるかもしれません。

猫に嫌われない様に普段から気をつけているとか小動物に相対することで相手が弱い(と言うこともないですが)なら自分が気をつけるというのを理解していくこともあります。
必ずしも、良い反応ばかりとは限りませんが、猫、犬、うさぎなどに限らず亀やトカゲ、虫や魚やザリガニなんかを相手にする時も、色々と考えて、相手を思いやって、相手が嫌がる、危険になるような事をしないという事を常に気をつける事の大事な経験になっているのですね。

動物、特に虫なんかは無意味に殺してしまうのは障害の有無に関係なく、子供の頃には有ることですが、それを頭ごなしに叱りつけるのではなく、実際に動物と触れ合う事で悪いこととしる事もあるのですから、非常に大事な経験を積める環境にある、と思っているのですよね。

また、峠工房の創さんはスズメバチも殺さないどころか、ゴキブリやハエも基本殺さない、蚊は刺されている時は殺す、あとは食べる時以外は殺さない、というのを一応実践しています。
なので、殺したら食え!と言うと実際にやらされそう(しないけど)と言うので話をちゃんと聞いたりしてくれます。

幸せ時間

猫と仲良くなって一番いま楽しい、幸せを感じているのは1年生女子だと思います。
猫との関係が良好である事で、自分が楽しいということや、猫が近寄ってくれる事、猫から優しくしてくる事(と言っても人それぞれですが)等もあって今はこんな感じが良く見られます。

猫は猫で自分の心地よい、幸福を感じる相手をえらびますし人も人で同じ様に動物に接します。
猫と仲良く幸せ、楽しいを感じる事で情緒面や対話スキル等が伸びていくのはそれこそ褒めて育てると同じようなものですが、猫に限らず動物はやってはいけない事をしたら怒ることをします。
相手に対して躾と言う事をちゃんと教える事はするのですね。

いま、叱らない子育てを躾けない子育てと勘違いしている人も多いし、褒めて育てるを何をしても褒める事にしてる人もいますけど、この辺はそろそろ改めて動物に学んだ方が良いかもしれません。
何しろ、猫(に限らず犬でもうさぎでも)と一緒にちゃんと生活している子はやはり成長の度合いが違うのですからね。


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