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8/22 ニュースなスペイン語 Discurso de odio:ヘイトスピーチ

既視感のあるニュース。

先月末、イギリスのサウスポートにあるダンス教室に刃物をもった男が押し入り、その場にいた女児3名が殺害されるという、痛ましい事件があった――。

その容疑者像について、「昨年ボートで入国したイスラム教徒だ」とのデマ情報が流れ、各地で反移民デモなどが巻き起こったーー。

デモの参加者たちは暴徒化し、モスクや移民施設を次々と襲撃したことから、「過去10年で最悪の暴動」と評される事態に陥ったーー。

手口や構図(modus operandi)はこのイギリスの事例によく似ている(幸い、暴動などは起こっていないけど…)。

カスティージャ・ラ・マンチャ州のモセホン(Mocejón)で18日に発生した未成年の刺殺事件で、その容疑者についての偽情報が拡散し、検察(Fiscalía)が調査に乗り出すことになりそう。

20日の小欄でも紹介したように、モセホンのスポーツ施設で友人たちとサッカーをしていた11歳の少年を10数回滅多刺しにして(apuñalamientos)殺害した男は、犯行の翌日には、すでに、国家憲兵隊(Guardia Civil)などによって逮捕されていて、スペイン国籍の20歳であることが公表されている。

しかし、ネット上には容疑者の国籍については「マグレブ出身(magrebí)」、そして、年齢については「未成年(menor de edad)」との誤った(falso)情報が流れている。

イギリスの女児殺害の容疑者のケースと同じで、人種によるヘイトスピーチを拡散する(extender el discurso de odio racista)ことを目的とした、デマ(bulo)の拡散が横行している。

なお、「マグレブ」とはアフリカ大陸の西部の地域のことで、具体的には、モロッコ、アルジェリア、チュニジアあたりの国々を指していて、モロッコと言えば、スペインにやってくる移民(migrante)の出身国の筆頭格を占める。

国内で事件が起きたら、その容疑者を移民に何とか結びつけ、治安悪化を理由に彼らを排除しようとする勢力が、ここぞとばかり、デマをねつ造・拡散する。

こんなことをするのはどこかの極右のならず者ばかりと思っていたら、EU議会議員(europarlamentario)の役職についている政治家も次のような投稿をしている:

モセホンの皆様。先日8月5日にアフリカ人が50名バスに乗ってやってきて、市内のパッタヤホテルに降りて行きました。モセホンはわずか5000人足らずの町で、我ら住民はこれまで静かに暮らしてきました。それが、今では、暴行はあるわ、窃盗はあるわ、10歳(ママ)の男の子まで殺害されるわ・・・。マスコミが勝つか、真実が勝つか、です(Los vecinos de Mocejón:El pasado lunes 5 de Agosto llegaron al pueblo 50 africanos en un autobús que los dejó en el Hotel Pattaya. Somos menos de 5.000 personas y vivíamos tranquilos. Ahora hay violaciones, robos y el asesinato de este niño de 10 años. Medios VS Realidad)。

この議員もアホじゃないから、未成年男児殺害の容疑者がアフリカからの移民だなどとは一言も断言していない。

そんな分かりやすい虚偽情報は流さない。

しかし、読み手にはいくらでもミスリードできそうな投稿をするあたりが、巧妙だし、卑劣だ。

また、男児殺害の容疑者が未成年であることを理由に罰せられないというデマも拡散されているらしい。

公表されている容疑者の年齢は20歳だが、仮に、未成年だとしても、スペインの法律ではちゃんと裁きを受けることになる(もっとも、適用されるのが刑法(Código Penal)ではなく、未成年刑法(Ley penal de menor)だけども)。

写真は事件現場に手向けられた花とろうそく。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20240820/desinformacion-asesinato-nino-mocejon-toledo-discurso-odio-racista/16222730.shtml