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5/12 ニュースなスペイン語 Ley de aborto:中絶法

この度、男女平等省(Ministerio de Igualdad)が中絶法(ley de aborto)の改正案の骨子をまとめた。週明け火曜日から数ヶ月間の審議に入る。

スペインでは人工中絶は2010年に合法となっているが、今回の改正によって、女性の中絶の権利をより確固たるものにする狙いがある。

まず、16歳と17歳の未成年者に対しても人工中絶を認めるが、その際、親の同意(consentimiento paterno o materno)を必要としなくなる。

現行法では、女性が人工中絶を申し出た後、「3日間の熟考期間(plazo de reflexión de tres días)」を課していたが、改正案ではこれは廃止される。熟考期間中、かつては、女性たちは妊娠を続けるための経済援助についての情報を得ていたが、今回は、女性たちがこうした情報を要求した場合に限られる(sólo si la mujer lo requiere)。

そして、中絶は基本的に公的機関で無料(aborto gratuito en la sanidad pública)で可能となる。

このように中絶を受ける側が利便を受ける面が多い改正案だが、実は、この度、中絶を施す側の権利も保障されることになった。

良心からの拒否(objeción de conciencia)――。

このスペイン語は「良心的兵役拒否」と訳すこともある。ただ、今回のテーマでは兵役は全く関係ないので、単に「良心からの拒否」とした。原語のスペイン語にも、「兵役」を意味したり、含意する語は入っていない。

良心的兵役拒否とは、宗教的な信条から、本来であれば従事しなければならない兵役を、拒否する行為を指す。

今回のテーマに置き換えると、宗教的・人道的な信条から、中絶措置を行わない権利を医師らに保証するということになる。

ただし、予め、文書にて、中絶拒否の旨を表明しなければならず(debe manifestarse con antelación y por escrito)、「良心による中絶拒否者(objetor de conciencia)」として登録(registro)を済ます必要がある。

その一方で、代理母妊娠・出産(gestación subrogada)が国内のみならず、国外で行うことも違法である(ilegal)ことを定め、こうした代理母を仲介する企業の広告の掲載なども禁じる。

このほかにも、

〇 どうにもならない生理痛(menstruación incapacitante)については、月に5日間を上限に、医者の診断書(certificado médico)があれば、休職(baja laboral)できる
〇 妊娠30ヶ月以降、有給(retribuido)で、出産前休暇を取ることができる
〇 女性の生理用品(higiene femenina)の付加価値税(IVA(=日本の消費税))10%を削減する
〇 教育機関(centro educativo)で生理用品を無料配布(reparto gratuito)する

など妊娠しているしていないは別に、女性の性の権利を保障する改正案となった。男性優位社会と叫ばれて久しいスペインだが、どこまで、この骨子案が尊重されるか。スペインの、本当の意味での、男女同権の成熟度を計るための指針になりそうだ。

写真は中絶促進派の女性。口にくわえられたプラカードには「私の体は私のもの。私が決める」と書かれている。「私が決める(Yo decido)」は中絶促進派の標語のひとつだ。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20220511/borrador-ley-aborto/2347625.shtml