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2/14 ニュースな英語 Las Kellys:ケリーたち

「ケリー」はアイルランド語(irlandés)に起源を持ち、現在は、主に英語圏で、女性の名前として使用する。また、男女問わず、名字にも使うこともある。

しかし、現在スペイン語では「Kelly」は「ホテルの清掃員」を指すという。

これは、Kelly(ケリー)が、「きれいにする女性たち」を意味する「(las)que limpian((ラス)ケ リンピアン)」と音が似ているため。

いわゆることばあそび(juego de palabras)レベルのことで、深い意味はない。

見た目は英語だが、音(の一部)と意味がスペイン語なので、いつもどおり「ニュースなスペイン語」でも良いのかな……。

ちなみに、ちょっとググってみると、少なくとも、2016年にはすでに使用例が確認できる。

むむむ、知らなかったなぁ。

それはさておき。

私たちの作業がなければ、ホテルは機能しない(Sin nuestro trabajo, un hotel no funciona)

清掃員の女性たちは言う。

ちなみに、わざわざ、「女性たち」というのは、今回、参照した記事では、「清掃員」を表すスペイン語が「limpiadora(camarera) de piso」のように女性形でしか現れていないからだ。

「ケリー」は、つまり、その原語が女性名であるのと同様、現在のところ、スペインでは主に女性たちの職業ということになる。

彼女たちの語る労働環境は極めて劣悪だ。

清掃員の多くは1日で30部屋を受け持つこともある。客は一部屋に300ユーロ(約4万2000円)払うが、清掃員は一部屋2.5ユーロしかもらえない(約350円)(La mayoría llegaba a limpiar hasta 30 habitaciones al día, una habitación que al cliente le costaba 300 euros aunque ellas cobraban sólo dos euros y medio)。

また、ある清掃員は次のように話す。

夏は水を飲みたくなるけど、自分に言い聞かせるの。水は飲んじゃだめ、だっておトイレに行きたくなるでしょ。どうしてトイレに行けないか。だって、時間がないから。仕事のペースはギリッギリなの(En verano quería beber agua y me decía: No puedo beber agua porque luego tengo que ir al baño, y no puedo ir al baño porque no me da tiempo. Es un ritmo de trabajo muy alto)。

別の清掃員は次のような環境を語っている。

仕事は何年もずっときつかったし、それは今も変わらない。だから、あたしらは傷だらけ。清掃員は皆、カバンの中に薬を山ほど入れてあるの。きつい仕事に耐えるためにね。しかも、家族といる時間を作るのもひと苦労。だって、シフトがコロコロ変わるんだもの。それに、あたしらの多くは日雇いだからさ、今日契約したら、明日はもう来なくて良い、ってこともあるから、不安で仕方がない(La carga de trabajo ha sido muy fuerte durante muchos años y sigue siéndolo, y eso les ha provocado lesiones. De hecho, todas las camareras de piso llevan un montón de pastillas en el bolso para soportar la carga de trabajo. Además, la conciliación familiar es muy complicada porque tienen horarios muy cambiantes y una gran inseguridad laboral porque muchas dependen de subcontratas, tipo hoy te contrato, mañana no)。

頭のてっぺんから足の先まで職業病(Enfermedades profesionales de la cabeza a los pies están reconocidas)という女性の話も紹介されていた。

彼女たちは口々に「una visibilidad social」を訴える。直訳すれば「社会的に見えること」だ。

別の言い方をすると、「人としての尊厳がある仕事(trabajo más digno)」であり、「社会的に認識されること(un reconocimiento social)」――。

清掃員の女性たちが求めることだ。

ホテルの清掃員たちは「自分たちが見えない存在であること(invisibilidad)」に不満をもち、抗議運動(protesta)を呼びかけている。

ホテルの清掃員は、小生も見たことはあるが、彼女たちに関心を示したことがあるかというと、正直、無い。

むしろ、忙しそうにしていて、挨拶も返してくれない人たちとすら思ったことも、正直、ある。

しかし、彼女たちの証言を聞けば、1秒たりとも無駄話なんかしてる時間がないことは自明だ。

せめて、これからは、1ユーロでも良いから、チップ(propina)を置いて、これまでの非礼を詫びるとともに、あなたのことは見えてますよ、ということを具体的に示すようにしたい。

写真は今回の記事の冒頭を飾るケリーたち。

ちなみに、Kellyは男性にも使える名前みたい。

姓にも、女性にも、男性にも使えるとは万能だ。

日本語の「ユウキ」みたい。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20230212/objetivo-igualdad-kellys-queremos-dejar-ser-invisibles/2421846.shtml