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3/30 ニュースなスペイン語 Turismo de borrachera:酩酊観光

酩酊観光(turismo de borrachera)ー。ここ2~3年くらいの間に見かけるようになった表現だ。他の国や地域に行って、どんちゃん騒ぎをしでかす行為を指す。

5月に行われる予定のマドリード州知事選挙に向けて、各党が争点を探る中、この酩酊観光が現マドリード州知事のイサベル・ディアス・アジューソ(Isabel Díaz Ayuso)を責め立てるための恰好の材料となっている。

マドリードでは、聖週間(Semana Santa)が始まってからの週末3日間だけで、353件の違法パーティー(fiestas ilegales)が摘発され、40名が逮捕され、1000件を超える罰金の処理が行われた。違法パーティーに参加した中には、外国人もいるという。

こうした状況を、アジューソの政敵であるスペイン社会労働党(PSOE)のアンヘル・ガビロンド(Ángel Gabilondo)は、「正真正銘の大混乱(auténtico desmadre)」と表現し、アジューソ州政を非難した。

また、州知事の座を虎視眈々と狙っているのがポデモス党(Podemos)のパブロ・イグレシアス(Pablo Iglesias)だが、その参謀ともいえるイサ・サラ(Isa Sarra)は、アジューソを「無責任の極致(absoluta irresponsabilidad)」と批判した。スペインの政治では、招かれざる外国人が次々と入国してくる時「呼び込み効果(efecto llamada)」という語を使うが、この用語を使い、外国人観光客を歓迎しているアジューソを糾弾した。

こうした口撃に、まず、アジューソは「フランス人たちを「酩酊観光客」などと呼ぶのは外国人差別(Llamar “turismo de borrachera” a los franceses es xenofobia)」とツイート。さらに、囲み取材でも、「観光客の皆さんが市内の美術館やお店にどれだけのお金を使っているかを調べれば、皆さんがただ酔っ払いに来ているわけではないことが分かります。酩酊観光なんて表現は外国人差別的ですし、大変攻撃的なニュアンスですね(Si se estudia cuánto gasto están aplicando nuestros turistas a los museos o comercios de Madrid se verá que el turista no solo viene a emborracharse. Es un comentario de tinte xenófobo y muy ofensivo)」と応じた。

さらに、攻撃は政府に向く。「こうした人たちが、フランスだろうと、どこから来ようと、入国するか否かの最終権限は、マドリード州ではなく、スペイン中央政府にあるんです(La entrada de todos esos ciudadanos, vengan de Francia o de donde sea, le compete al Gobierno de España, no al de la Comunidad de Madrid)」と述べ、空港閉鎖を行わない、ペドロ・サンチェス(Pedro Sánchez)政権に批判の矢を放った。

マドリード知事選まではまだ1か月あまりあるが、早速、前哨戦が始まった感がある。スペイン政権と何かと対立姿勢を示してきたアジューソ州政が継続するか否かは、今後のスペインの行く末を占ううえで、極めて重要だ。

写真は州警察(Policía Municipal)が公開した、違法パーティの摘発の様子。