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2/26 ニュースな英語 Vishing:ビッシング詐欺

ある日、突然、こんな電話がかかってきたとしよう(内容は一部再構成)。

我々の病院にいる患者さんの息子さんに施しをお願いしたい(ayuda para el hijo de un enfermo que está en un hospital nuestro de Barcelona)。息子さんは父上に会いに行きたがっています。ただし、ご子息は失業中のため、銀行に口座を差し押さえられる恐れがあるので、現金を手渡しする必要があります(recogerá el dinero en mano porque está en paro y el banco se lo podría quitar)。つきましては、今から使いの者を向かわせますので……云々

まぁ、文字に起こすと何とも稚拙だが、これが、もし、自分の入信している宗教の上層部からの頼みだったら……。

今の日本人は、哀しいかな、もっと巧みな詐欺(estafa)をかいくぐって来ているから、冒頭のような怪しげな電話がかかってきても、一笑して、携帯を切るだろう。

今、スペインでは、カミロ看護修道会(Orden de los Camilos)のスペイン管区長(superior provincial)ホセ・カルロス・ベルメッホ(José Carlos Bermejo(写真))と偽り(haciéndose pasar;suplanta)、現金を騙し取る詐欺が発生しているという。

クラレチアン会(casas claretianas)、イエズス会(jesuitas)、アウグスチノ会(agustinas)などの本部に同様の電話がかかってきており、すでに400ユーロ(約5万7000円)から、最大3500ユーロ(約50万5000円)を払ってしまった被害者(víctimas)がいる。

ベルメッホ自身が今月9日、SNSなどで各地域のトップに向けて文書(comunicado;escrito)を発信し、この詐欺行為について注意喚起(alertó)を行った。また、自らを騙ったこの詐欺について、刑事告発した(denunció estas estafas)ことを明らかにした。

ベルメッホによると、詐欺グループは3〜4人(tres o cuatro individuos)でチームを構成しているようで、

①ベルメッホに扮し、電話をかけ、現金を要求する役(uno que finge ser yo y que llama y persuade de que den dinero)
②その金を受け取る役(otro el que lo recoge)

という、いわゆる、日本の特殊詐欺の「掛け子(①)」と「受け子(②)」に当たる人物がいる。

①と②に加えて、

③何らかの方法で、バルセロナ市の支部長に扮して、電話の内容が本当であることを念押しする役(otro que, de alguna manera, se muestra como el que confirma la verdad fingiendo ser un superior en Barcelona)

もいるらしい。

コルドバやグラナダなどの複数の修道院(convento religioso)に同様の電話がかかってきているという。

さて、タイトルの「ビッシング詐欺」とは、ここまで述べてきたように、主に電話などで音声(voz;voice)を使って、ことばたくみに相手を騙す詐欺を指す。

日本のオレオレ詐欺や振り込め詐欺もビッシングの一種。

ビッシングは「voice(声)」と「phishing(フィッシング詐欺)」が合わさった語。

一方のphishingは、諸説あるみたいだが、「sophisticated(洗練な;巧みな)」と「fishing(魚釣り)」から作られた語で、いろいろな仕掛けでカード情報などを抜き取る詐欺。

ベルメッホによると、今回の詐欺の掛け子は「我々の教義独自の言葉遣い(el lenguaje propio de nuestra identidad religiosa) 」で、「聖カミロの内容(contenidos de San Camilo)」を口にしていたらしい。

もちろん、そんなものは「ネットから取ってきたもの(tomados de Internet)」なのだが。

写真はテレビのインタビューを受け、詐欺の注意喚起しているベルメッホ本人。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20230224/estafa-llamada-lider-camilos-espana/2427436.shtmlなど