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6/12 ニュースなスペイン語 Solastalgia:ソラスタルジア

英語のsolace「慰め」とnostalgy「郷愁、懐かしむこと」が合わさった語。

語の構成上は、従って、「慰めになっていたものを思い出し、懐かしんだり、悲しんだりすること」という意味になる。

もう少し、具体的に言うと、

火災、自然災害、環境破壊などで自分がかつて慣れ親しんだ場所がなくなることで、気持ちが落ち込むこと

を指す。

誰にでも、多かれ少なかれある感情だ。それにしても、あの感覚に名前があったんだなぁ(ちなみに、今日現在、noteのハッシュタグ「ソラスタルジア」はゼロだ。今後、増えていくか……!?)。

オーストラリアの研究者グレン・アルブレヒト(Glenn Albrecht)が2005年に初めてこの語を使い始めたというから、概念や術語としては、決して新参者というわけではない。

今、スペインのムルシア州のメノル湖(Mar Menor)周辺の住民のあいだで、このソラスタルジアに苦しむ人々が増えているらしい。

去年の8月28日の記事でも紹介したが、今、このメノル湖では環境被害が著しい。死んだ魚が岸に大量に打ち上げられ、水中も10センチ先すらも見えない濁り様。ニンゲンがこの被害の原因になっていることは言うまでもない。

藻やプランクトンなどでドロドロの様子を「緑のスープ(sopa verde)」と表現する。緑のスープ状態は、少なくとも、2016年から続く。

メノル湖畔に暮らす男性、イサック(Issac)にとって、そこは、「事故で、通常の仕事に戻れなかった時、逃げ場になってくれた(Le sirvió de refugio también cuando tuvo un accidente y no pudo volver a su trabajo habitual)」という。

ところで、このソラスタルジアとよく似た概念で、「エコ不安(ecoansiedad)」というのがあるが、これとは違うらしい。

エコ不安は、何か良からぬことが起き、自らの存在が脅かされてしまうという恐怖(temor a que algo malo pueda ocurrir y pueda poner en riesgo la propia supervivencia)によって引き起こされる。

一方、ソラスタルジアでは、生存そのものが脅かされるような恐怖とは違い、自分の居場所が無くなることに、心の痛み(dolor)や寂しさ(tristeza)を感じること、なので、やはり、エコ不安とは違う。

エコ不安は恐怖、ソラスタルジアは悲しみ――。

写真はイメージ。なお、ある専門家は「私たちは、私たちが住んでいる場所、そのものなんです(Somos los lugares que habitamos)」という。だから、お気に入りの場所が無くなると、「時に、自分たちのアイデンティティを失ったとすら感じるのです(A veces perdemos incluso nuestra propia identidad)」。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20220611/solastalgia-tristeza-medioambiente/2357521.shtml