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1/17 ニュースなスペイン語 Pseudoterapia:ニセ治療

pseudo-は「ニセ」を表わす接頭辞で、ギリシア語語源だ。発音は「p」は発音せず「セウド」。従って、seudo-のようにpを書かないこともある。

スペインで、コロナやそのほかの病気をめぐって、先祖代々の知恵(teoría ancestral)や新しい仮説(hipótesis novedosa)といった「十分な科学的なデータ(datos científicos suficientes)」を持たない治療法が横行している(proliferación)しているらしい。そして、裁判沙汰にもなっているという。

ホメオパシー(homeopatía)、オゾン治療(ozonoterapia)、MMS(Solución de Mineral Milagrosa)、煎じ薬(pócima)ーー。「信者(seguidor fiel)」にしてみれば、どれも、自分の身を助けてくれるありがたいモノのようだが、まぁ、その魔法の及ばない者にとっては、見るからに怪しいモノばかりだ。実態がよく分からないモノもある。

以下、簡単に説明してゆくが、これは、ニセ治療。くれぐれも、だまされないように。

1.オメオパシー
偽薬(placebo)による心理的な効果を利用する。アロパシー(alopatía)の対極をなす考え方。アロパシーは、熱が出たらそれを下げるための薬を処方する、痛みがあるならそれを取り去るための薬を飲んだり、貼ったりする、という立場。西洋医学の考え方。つまり、病理に対して、それとは反対の効果をもたらす薬を投与するため、「逆症療法」と訳される。

一方、オメオパシーは「同毒療法」とも訳されるように、体に害を及ぼすかもしれない物質(平たく言えば「毒」)を、危害がでないくらいまでに希釈して、それを投与するという立場。かつては水銀や毒グモが処方されたこともあったとか・・・。

まぁ、「毒をもって毒を制す」という考え。ところで、ワクチンって、この発想なのかな?ワクチンは治療ではないけど、無毒のウイルスを体に入れて、抗体を作らせるわけだから、まぁ、使い方さえ間違わなければ、毒も有益ということなのか。いや、無毒の毒は毒じゃないのか・・・。

2.オゾン治療
血液クレンジングとも言う。医療用オゾンなるモノを、一度、体から抜いた血に混ぜ、これをさらに再輸血することで、疲労感が取れるとか、何とか・・・。

スペインではコロナの入院患者の家族が、患者が「オゾンによる代替治療を受けさせるよう(facilitasen un tratamiento alternativo con ozon)」に裁判所に訴え出ていたところ、裁判所はオゾン治療を認める判決を出した。最終的にこの患者は無事退院することができた。患者の家族は「オゾン治療のおかげ(Gracias al ozono)」と述べ、医療関係者は「オゾン治療にもかかわらず、患者はコロナを克服した(el enfermo superó la enfermedad a pesar del tratamiento con ozono)」と述べたという。

まぁ、偶然にせよ、そうでないにせよ、退院できたんだったら、いいんじゃないかしらん。

3.MMS
「ミラクル・ミネラル・ソリューション」のスペイン語を略したもの。なんやら謎めいた名称だが、一言で言えば漂白剤(lejía)に使用される二酸化塩素のことである。漂白剤を水に薄めた(diluida en agua)溶液を、治療と称して飲むよう勧められ、結局、これを飲み「腹痛、むかつき、嘔吐(dolores de estómago, irritación y vómitos)」を余儀なくされた女性が、訴訟を起こしたという。漂白剤なんか売るものではない、と。????。裁判所はこの訴えを退けたという。訴える相手が違うんじゃない?

4.煎じ薬
まさか、スペインにも「尊師(gurú)」がいたとは・・・。日本にもかつていた。このスペインの尊師は、心臓病(dolencia cardíaca)を患う女性に対して、煎じ薬を飲ませていたという。女性は最終的には亡くなったという。煎じ薬と女性の死の因果関係は分からず、現在、係争中だ。

上で紹介した話はいずれもニセ治療によって被害を受けた側からの記事で、ニセ治療を最高峰と信じている専門家や患者(というか信者)たちからの意見も聞かないと、公正な判断はできないが、まぁ、手を出さないに越したことはないだろう。だからと言って、科学や医学がいつも正しいとは限らないことは分かる。こうした心理を巧みに利用するのが、「pseudoterapeuta」つまり、ニセ治療の専門家(?)たちだ。

写真は石(piedra)。ニセ治療には石を使うものもあるという。いやはや・・・。ちなみに、「霊気」はスペイン語でも「reiki」という。翻訳できないところに、何か、不思議な力を感じるのか!?霊気に基づいた治療もあるらしい。