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10/21 ニュースなスペイン語 Chip cerebral:脳チップ

ベルナルデータ(Bernardeta)、57歳。16歳から全盲(ciega)の女性だ。彼女がこの度、ある実験(ensayo)に協力した。

その実験とは、小さな装置(un pequño implante)を脳に埋め込むことで、視力を一時的(temporal)に回復(recuperación)させるという試みだ。

実験は成功し、ベルナー彼女の愛称ーは形(forma)と文字(letra)を認識する(percibir)ことができた。

この装置を開発したのが、バレンシア州のアリカンテに拠点を置くミゲル・エルナンデス大学(Universidad Miguel Hernández)だ。脳神経と機械の融合を図る分野をスペイン語では「neuroingeniería」と言う。「神経工学」とでも訳せるか。今回のプロジェクトリーダーであるエドゥアルド・フェルナンデス・ホベル(Eduardo Fernández Jover)は「我々は直接、脳に刺激を与えることに成功した(Podemos estimular directamente el cerebro)」と語った。

脳に埋め込まれたチップとはどんなものなのか。小指の爪よりちょっと小さく(algo menos que la uña del dedo meñique)、様々な電極(electrodos)が、ぎっちり詰まっている(muy juntos)らしい。厚み(grosor)は「髪の毛一本分(un cabello)」よりも薄く、しかも、「簡単な外科手術(cirugía sencilla)」で埋め込みが完了するという。

今回の方法だと、角膜(la retina)が損傷していても、人工角膜を通常のメガネに付ける(retina artificial dentro de unas gafas convencionales)ことで、視力の回復が見込めるという。

素人目には、かなりの成功のように見えるが、プロジェクトリーダーのフェルナンデスは、しかし、決して気を緩めることはない。

今回の実験の結果は大変、将来希望が持てる(prometedoras)ものだったが、少しずつだが、前進してゆかなければならない。そして、誤った期待を失くしてゆかなければならない(creo que hay que avanzar poco a poco y no crear falsas expectativas)

一方、被験者のベルナは次のように語っている。

チップを取られた瞬間、私はまた、見えなくなることも知っていたし、また、今まで通りになることも知っていた(Sabía que en el momento que me quitaran el chip, yo no iba a volver a ver. Me iba a quedar igual)ー。

ベルナルデタ自身は生物学者(bióloga)で、「科学が進歩するためには、何かをやり、何かを犠牲にする人がいなければならない(la ciencia pueda avanzar tiene que haber alguien que esté dispuesto a hacer algo o sacrificar algo)」との信念の下、治験に名乗りを上げたという。

ベルナは、今回の治験に参加するにあたって、周りから、何の利益(beneficio)があるのか、と聞かれたそうだ。

利益?何もないわ。あるのは、ただ、日々に感じる満足感。新しいものが生まれるたびに、私たちがその一歩を投じたんだ、という満足感よ。この満足感が何より(Beneficio ninguno, solamente la satisfacción que a mí me produce día a día, cada vez que sale una cosa nueva, que damos un paso adelante. Esa satisfacción es lo más)。

スペイン人を特徴づけることばに、「generosidad」とか「altruismo」がある。前者は「気前の良さ」、後者は「利他主義」などと訳される。気前が良い、と言っても、何も金払いが良いというわけではない。もっと、崇高な気前の良さだ。自分に益が無くても、他人が満足すれば良いー。

ベルナはその意味で、最もスペイン人らしいスペイン人のひとりだ。

写真は脳チップ。