5/21 ニュースなスペイン語 Corrupta：腐った女

「汚職まみれの女」でも良いかも。

まぁ、どちらにしても、かなり、物騒な表現だが、これはアルゼンチン大統領ハビエル・ミレイ（Javier Milei）がスペインを訪問した際、極右政党ボックス（Vox）の関係者らと持った会合（mitín）の中で、ペドロ・サンチェス（Pedro Sánchez）首相の妻、ベゴーニャ・ゴメス（Begoña Gómez）を指して放った言葉とされている。

ゴメスについては、3月27日などの小欄でも紹介したように、例のコルド案件（caso Koldo）を巡って、グレーな噂が飛び交っているのが、こうした発言が出てきた背景のひとつだろうけど、それにしても、一国の大統領たる人物が他国の首相の妻に言う言葉としては、あまりにも過激。

サンチェス本人についても、「大変だろう（calaña）」と、明言は避けているものの、この語は、文脈によっては、「軽蔑的（despectivo）」で「否定的（negativo）」なニュアンスも帯びるので、まぁ、何か良からぬことを言いたかったんだろう。

当然、外務大臣（ministro de Asuntos Exteriores）のホセ・マヌエル・アルバレス（José Manuel Albares）は在スペインのアルゼンチン大使（embajador）ロベルト・ボッシュ（Roberto Bosch）を外務省に呼びつけ（convoca）、ミレイに公式な謝罪をするよう求めた。

しかし、大統領府報道官はミレイは謝罪はしないと声明をだしており（el presidente argentino no pedirá disculpas）、むしろ、ここ数週間を振り返れば、謝罪すべきはスペイン政府の方だ（es el Gobierno español el que debe disculparse por las declaraciones de las últimas semanas）と加えた。

つまり、ミレイ側にも言い分があるということなのだが、こちらについては、日を改めて紹介しよう。

アルバレスは、ミレイがスペインを訪問しておきながら、一国の首相とも、国家元首（jefe del Estado）たるフェリペ６世（Felipe VI）とも面会しないのは、異例中の異例（hecho insólito）とした上で、

それでも、アルゼンチンのような大国の要人が要求してきた全ての公式の段取りはとってきたつもりだ（se le pusieron a disposición todos los medios públicos que requiere una figura tan importante de un país tan importante como Argentina）

と述べ、ミレイに対する接遇に問題はなかったとした。

また、アルバレスは、

各国の制度や政府は議論の余地がないほどに尊いものだし、国際関係と国家間の共存の礎になるものだ。他国のトップたる人物がそうした制度を侮辱するためにやってくるのはいかがなものか（Las instituciones, los gobiernos de los países, son indiscutibles, es la base de las relaciones internacionales y de la convivencia entre Estados. Un jefe de Estado extranjero no acude a otro país a insultar a sus instituciones）

と静かに怒りを口にした。

外務省としては、ミレイからの謝罪がなければ、アルゼンチンとの国交の（一時的な）断絶も辞さない構え（no descarta romper relaciones si no hay disculpas）なので、両国の関係者は、どう落としどころを付けるかが注目される。

写真はミレイ（左）とボックス党首サンティアゴ・アバスカル（Santiago Abascal）。

ボックスとの会合に参加したところからも分かるが、ミレイの政治スタンスは極右（ultraderecha）だ。

ちなみに、今回の大使呼び出し（llamar a consultas）は、先日、ブエノスアイレスでの大使呼び出しに続いて、２度目の外交的アクション（segundo gesto diplomático）。

スペイン外務省の（相当の）怒りが垣間見える。

出典https://www.rtve.es/noticias/20240520/argentina-jose-manuel-albares-javier-milei-embajador/16110344.shtml