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5/17 ニュースなスペイン語 Entradas irregulares:非正規入国

正当な手続きを経ずにEU圏内に入ってくる移民(migrantes)に対して、「非正規な」という形容詞を使う。

以前は「不法な(ilegal)」という形容詞も使われることもあった(し、今も、不法移民(migrantes ilegales)という表現はある)。

しかし、移民らには、何か重大な違法行為を犯しているという認識は、多分、ない。

自国の厳しい現状から一刻も早く逃げ出したい一心で、危険を冒し、そして、少しでもマシな未来を夢見て、EU諸国に助けを求めて入る。

そんな彼らを本来の手続きを踏んでいないという意味で「非正規」と呼ぶことができても、犯罪者の如く「違法」と呼ぶのには抵抗がある。

それはさておき。

今年の1月から4月までの間で、EU
圏内には8万700件の非正規な入国があったという。

この数値は、2016年、シリアからの難民が大量に押し寄せた移民危機(la crisis migratoria de los refugiados sirios)以降、最大。

全体数は、去年の同じ時期と比べ30%の増加、そして、地中海の真中(Mediterráneo Central)を突っ切って、イタリアに入国した人は、292%と大幅に増えた。

去年と一昨年は小欄でも小型船(patera;cayuco)に乗った移民がカナリア諸島に漂着した、というニュースを何回か取り上げたが(2021年10月18日、22年5月10日、etc.)、今年に入って、あまり、漂着報道を見ないなと思っていた。

案の定、地中海の西側(Mediterráneo Occidental)を通って、スペインに入ってくる非正規移民は減り、その数は2876人だったという(まぁ、それでも、日本人の感覚では、十分、多いんだけど)。

移民たちの出身国にも変化があり、シリアからの人々は全体の17%を占めていて、依然として最大( la más presente)グループとは言え、ここ数ヶ月は減少しているらしい。

その代わりに存在感(presencia)を増してきているのがギニア(昨年度同時期と比べ8倍増)やコートジボワール(Costa de Marfil(同4倍))。

彼らが乗る船は、貧困にあえぐ人々をヨーロッパに送る闇組織(las mafias que se dedican al tráfico de personas)が、出港の数時間前に急ごしらえしたもの(Estas se montan pocas horas antes de su salida)。

写真は非正規移民たちを乗せた船(embarcación)。

闇組織の人間は、移民を乗せたら、もうおしまい。無事、陸に辿りつけるか否かは、運任せ。

ちなみに、移民の出身国の筆頭のコートジボワールはフランス語が元になっている。

和名は「象牙海岸」。

フランス語では「Côte d'Ivoire」と綴るが、「ivoire」が「象牙」。クリーム色っぽい白を意味する「象牙色・アイボリー(ivory)」と同語源。

これらは共に「象牙」を意味するラテン語「ebur」が元となった語。

一方、スペイン語でコートジボワールは「Costa de Marfil」と言うが、この「marfil」は「象の骨」を意味するアラビア語語源。

スペイン語も素直に「象牙」をラテン語から引き継げば良かったんだろうけど、アラビア語との付き合いが長かったスペイン語には、時々、こういう気まぐれが起こる。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20230515/entradas-irregulares-migrantes-ue-nivel-mas-alto/2446032.shtml