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6/25 ニュースなスペイン語 180 eutanasias:180件の尊厳死

昨年3月19日の続報。この日、スペインの下院(Congreso de Diputados)で、尊厳死法(Ley de la eutanasia)が可決した。政府はこの可決日から約3ヶ月後の6月あたりを目指し、諸々の調整を進めてゆく――。

過去の記事にはこんなことを書いた。

そして、計画どおり、昨年6月25日、尊厳死法が施行(entró en vigor)され、1周年を迎えた昨日、厚生大臣(Ministra de Sanidad)カロリナ・ダリアス(Carolina Darias)は次のように述べた。

我々が尊厳死のお手伝いができたのは180名の方々です(Son 180 personas a las que hemos ayudado a morir de manera digna)

180名の内、22名が臓器のドナー登録(donación de órganos)をし、68件の臓器移植(trasplantes)が実施されたという。

ダリアスは次のようにも述べた。

尊厳死のための権利の行使は、現在、適切に行われています(se está desarrollando la ejecución de este derecho adecuadamente)。

そう、スペインでは尊厳死は権利なのである。

まだ、正式な、そして、詳細な公式データが公表されていないが、現時点の専門家たちの総括(balance)も概ね良好(positivo)で、この1年間で尊厳死が「あたり前(normalizarse)」になりつつあるという。

ただし、スペイン国内での浸透の度合いは異なるようだ(con diferentes velocidad)。バスク州とカタルーニャ州は尊厳死にはかなり前向きであるのに対して、アンダルシア州は随分遅れているという。

思えは、尊厳死法に断固反対していたのが国民党(PP)とボックス党(Vox)だった。その両党を支持する人たちが多いアンダルシア州で、尊厳死への許容度が低いのも、決して偶然ではない。

現行法では、尊厳死の要件として、

①高齢者であること(mayores de edad)
②重篤で、かつ、治る見込みがない病を患っていること(padecer una enfermedad grave e incurable)
③絶え間なく、耐え難い、肉体的・精神的苦痛を伴うこと(con un sufrimiento físico o psíquico constante e intolerable)

と定められている。

カタルーニャ州では申請から尊厳死のための施術にかかる日数は平均で(de media)約40数日。これはスペイン国内では最短のようだ。しかし、申請者(solicitante)が高齢であることから、申請手続き(trámite;tramitación)の途中で息絶えるケースも少なくないらしい。

最も重要なことは速く広まることではなく、確実に定着すること(Lo más importante no era ir rápido sino ir seguros)――。ある関係者は言う。

ある患者の声が刺さる。

私の人生は私のものだ。家族のものでもなければ、法律や裁判官のものでもない。誰のものでもない。だから、私は最期まで、自分の人生を自分のものとしておきたい(Mi vida me pertenece a mí. Ni a mi familia ni a las leyes ni a los jueces ni a nadie. Y quiero disponer de ella hasta el final)。

だからこそ、自分が選んだ(cuando elija)その日に、人生に「さようなら(decir adiós)」を言いたいし、自分が大好きな人たちに囲まれて(rodeado)、自宅で逝きたい。

尊厳死は今後、スペインでは増えてゆくとの予測だ。日本でもいずれ尊厳死の法整備がスタートするだろう。どのような問題があるかを、先発のスペインの事例を見ながら、肝に命じておこう。

写真は尊厳死賛成派のプラカード。「静かに逝くことは権利だ(Morir en paz es un detecho)」とある。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20220624/eutanasia-primer-ano-aplicacion-ley-espana/2385328.shtml など