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5/2 ニュースなスペイン語 PP y Vox:国民党とボックス党

メトロスコピア社が27日発表した投票動向調査(encuesta preelectoral)によると、明後日に控えたマドリード州知事選挙で、国民党(PP)が獲得する議席は59と予測されていて、同党の勝利はほぼ確実なものとなった。そしてこのことは同時に、同党からの候補者であり、現職マドリード知事でもあるイサベル・ディアス・アジューソ(Isabel Díaz Ayuso)の再選もほぼ確定したことを意味する。

しかし、安定した議会運営を行うためには、過半数(mayoría absoluta)である69議席を得る必要があり、そのためには、13議席を獲得すると予想されているボックス党(Vox)との共闘が必至だ。

だが、ボックス党は自他ともに認める「極右(ultraderecha)」だ。国民の極右に対するアレルギーも小さくない。

だから、アジューソは絶妙なバランスでボックス党との距離感を計らなくてはならない。

アジューソは「私は安定性を得るために、国民党一党の統治を目指したい(Quiero gobernar sola para tener estabilidad)」と述べている。しかし、選挙の現実(realidad electoral)を見ると、自らの希望(deseos)だけを押し通すのは賢明ではない。そこで、ボックス党の「過激思想(radicalismo)」の原動力にもなっている「移民政策(inmigración)」とは距離を置く一方で、「税金の引き下げ(bajada de impuestos)」とは共闘することを匂わせる。まさにつかず離れずの距離を保っている。

一方、ボックス党は国民党を「青い(=国民党のイメージカラー)風見鶏(veleta azul)」、「飼いならされた右派(derecha domesticada)」、「左の飼い犬(perrito faldero de izquierda)」などと批判し続ける一方で、アジューソにはこうした批判をしない。巧みに回避しているのである。

ボックス党の候補者ロシオ・モナステリオ(Rocio Monasterio)は、アジューソのかつての腹心、副知事イグナシオ・アグアド(Ignacio Aguado)には「アジューソ州政に紛れ込んだ(ペドロ・)サンチェス(首相)のスパイ(infiltrado de Sánchez en el Gobierno de Ayuso)」などと、えげつない批判を惜しまない。しかし、やはり、アジューソには批判の矢は放たない。ただ、モナステリオは釘を刺す:「何も書いてない手形(cheque en blanco)」は渡すつもりはない、と。ボックス党とて、無条件にアジューソに手を貸すわけではない、ということだ。

スペイン社会労働党(PSOE)、マス・マドリード党(Más Madrid)、ポデモス党(Podemos)の左派連合(bloque de izquierda)にとって、しょせん「国民党とボックス党は同じ(PP y Vox son lo mismo)」穴のムジナなように見えるかもしれないが、お互い混じらず、しかし、離れずの距離感が見事だ。もっとも、この微妙な距離感が1年後もしくは2年後、はたまた半年後に決定的な決裂を生むことがないか。

写真はABC(2019.6.1.)。アジューソ(左)とモナステリオ(右)。