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6/9 ニュースなスペイン語 Trato de favor:優遇措置

昨日の続きはまたの機会に…。

国民党(Partido Popular)の総書記(secretario general)テオドロ・エヘア(Teodoro Egea)と、ムルシア州知事のフェルナンド・ロペス・ミラス(Fernando López Miras)が窮地に立たされている。ロペス・ミラスももちろん国民党員だ。

ふたりは、4月、マスクもせず(sin mascarillas)、そして、ソーシャル・ディスタンス(sin distancia de seguridad)も取らず、国民党の党員たちと談笑していたところを写真に撮られ、与党であるスペイン社会労働党(PSOE)から「即刻辞任(dimisión inmediata)」を要求されていた。白昼堂々、テラスで歓談しているところが、日本の政治家センセとはちょっと違うところだ。

「法律と衛生基準を順守していない(saltarse las leyes y las normas sanitaria)」というのが辞任要求の理由だ。

「月面宙返り」の「ムーンサルト」のsaultと同じ語源のsaltarだが、ここでは、「飛び越える」とか「無視する」という意味で用いられている。

この時の騒動はどうやてって収束したか分からないが、まぁ、辞任せずにどうにかふたりはやってきた来た。

エヘアは息を吹き返し、つい7日前、外務大臣(Ministra de Exteriores)のアランチャ・ゴンサレス・ラジャ(Arancha González Laya)に対して、「ひどい外交指揮(nefasta gestión)」をしているとして、辞任を要求している。我が党首「パブロ・カサドが今、外交を指揮していたなら、こんなことは起こらなかっただろうに(Pablo Casado hubiera estado gobernando en este momento, no hubiera pasado esto)」という、文法の教科書に出てきそうな、きれいな反実仮想文を使い、ゴンサレス・ラジャに対して、辞任を迫ったのだった。

そのエヘアが、再び、腹心であるミラスと共に辞任要求を突き付けられた。

事の発端は、 4月18日のムルシア市議会の審議中(el pleno que la Asamblea Regional de Murcia)、とあるカメラが偶然捉えた映像だった。

ロペス・ミラスらしき人物の後頭部とその先に、スマホの画面が見える。議会の間、スマホにのワサップ(日本の「ライン」に相当)に釘付けになっている知事もしょうもない。が、政治生命、もしくはムルシア市議の一刻を争うことなら、まぁ、仕方がないだろうが、もっと問題なのは、その相手と内容だ。相手はエヘアで、どうやら、エヘアの親族(un familiar)のひとりに対して、外科手術(operación quirúrgica)の便宜をロペス・ミラスが図ろうとしている(もしくは、図った)という内容なのだ。ロペス・ミラスがエヘアに対して、手術のアポが取れたことを報告すると、エヘアは「素晴らしい(Cojonudo)」と応じたとされている。

スペイン社会労働党とポデモス党(Podemos)は、これは「優遇措置(trato de favor)」であり、そして、「待機リストを飛び越えるために責任ある職を利用した(Utilizan sus puestos de responsabilidad" para "​saltarse las listas de espera)」と非難した。

しかし、国民党は「文脈から切り離された、プライベートなやり取り(conversación privada descontextualizada)」とし、ふたりを擁護している。国民党としては、マドリードでイサベル・ディアス・アジューソ(Isabel Díaz Ayuso)が知事選で大勝利を収めた勢いで、政権奪取に大きな弾みをつけたいところだが、党内の危機感と結束感がいまいち感じられない。

ふたりに、党として、どのような処分を下すのか。

写真は、テオドロ・エヘア(左)/ロペス・ミラス(の後頭部)とそのスマホ画面。