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6/27 ニュースなスペイン語 Salto masivo:大量柵越

saltoの本来の意味は「飛ぶこと」だ。だから、通常は「ジャンプ」と訳される。ちなみにこの語に、ラテン語で「近接」を表わす接頭辞が付くと、「asalto(襲撃)」になる。「ジャンプして、どこかに近づく」という発想か。昨年1月にアメリカ合衆国の議事堂が襲撃された時、「Asalto al Capitolio」という文字が連日のようにメディアに出ていたのを思い出す。

さて、ある特定の地域、状況において、saltoは「2国間の国境に設置されている柵(valla)を越えること(cruzar)」という意味で解釈される。

先週の金曜日24日、アフリカ大陸南部(Subsahara)からの移民(migrante)約2000人が、モロッコ(Marruecos)側からメリジャ(Melilla)に向けて、柵を違法に乗り越える事態が発生した。

メリジャはセウタ(Ceuta)に並んで、アフリカ大陸に存在するスペインの自治州。だから、今回の大量柵越は、イベリア半島で発生したわけではないが、スペインの外交事案ということになる。

「ここ数年で類を見ない(no se había visto en años)」と評される今回の柵越では、アフリカ系移民が少なくとも23名が死亡(6月27日現在)し、警察隊も含め322名が負傷(herido)した。そして、少なくとも133名が国境を超えて、メリジャ領内に侵入したという。とある人権団体によれば、死者の数はまだ増えるかもしれない。

2000名の移民たちは、24日の早朝6時頃、柵を壊すための大型バサミ(cizallas)などの工具や何らかの酸(ácido)の入った物体を手にして、柵を乗り越え始めたらしい。

モロッコ側の警察隊(agentes policiales)は催涙ガス(gas lacrimógeno)で応戦した。

実は大量柵越の兆候は前日の23日からあったという。数百人のアフリカ系の移民たちがモロッコの国境付近の山々に集結して柵越の準備をしていたらしい。こうした事態を察知したモロッコ当局は柵越計画をとん挫させるべく(frustrar)、掃討作戦(operaciones)を実施したものの、防ぐことはできなかった。なお、その際は死者は出なかったものの、警察隊約200名が負傷し、うち一人が重体(grave)である。

ペドロ・サンチェス首相(Pedro Sánchez)はモロッコ当局の一連の対応や応戦を賛辞(elogia)し、負傷した警察隊にたいしては、団結(solidarizado)を約束した。

ちなみに「団結(solidaridad;solidarizarse)」は国内外問わず、有事の際にスペインが示す応援のキーワードだ。日本の「絆」に近い。

サンチェスはまた、モロッコ政府に対して、「これまで以上の協力(extraordinaria cooperación)」を約束した。

ん~。NATOのサミットが明日と明後日、マドリードで行われるというのに、時期が悪い。警備が手薄だったか。各国の首脳や世界の企業人の心証が悪くならなければ良いが・・・。

サンチェスは今回の柵越を「暴力的な襲撃(violento asalto)」と表現し、陰に「人身取引を行うマフィア(mafias que trafican con seres humanos)」がいるとの見方を示したが、事態を事前に察知しながら、未然に防げなかったモロッコにも少し苦言を呈しても良いのでは・・・。

しかし、まぁ、3月21日と22日の記事でも紹介したように、スペインは西サハラ問題で歴史的転換(giro histórico)に踏み切り、モロッコに肩入れをしたこともあり、モロッコ政府に、あまり強くも出られないかも・・・。

外交はバランス。難しいなぁ。

写真は今回の柵越の様子。小規模な(とは言っても、数十人単位)柵越は頻発しているが、今回ほどの規模は近年では類を見ない。

出典
https://www.rtve.es/noticias/20220625/sanchez-responsabiliza-mafias-del-salto-valla-melilla-fue-ataque-integridad-territorial/2385407.shtml など