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11/15 ニュースなスペイン語 Chapapote:アスファルト

2002年11月13日、スペインのガリシア地方沖を航行中の重油輸送タンカー「プレステージ号(Prestige)」が悪天候のため座礁した(その後、19日に沈没(hundimiento))。

プレステージ号は7万7000トンの重油を積載していて、その内、推計で約6万3000トンが流出したという。そして、流れ出た重油はポルトガルからフランスの約2000キロにわたる沿岸に漂着し、大きな被害をもたらした。

史上最悪の環境汚染事故のひとつとなったこの惨事で、最も甚大な被害を受けたのがガリシア州で、中でも、「ガリシア全体で最も重油が辿り着いた(el lugar con más fuel de toda Galicia)」のがア・コルーニャ(A Coruña)のカルノタ地区(Carnota)だった。

プレステージ号沈没事故から今年で20年が経過する(20 aniversario)ことから、スペイン国営放送(RTVE)のサイトにはいろいろな検証記事やルポが掲載されている。

さて、記事ではガリシア州をはじめとする各地の沿岸に漂着した重油由来の黒い物体を「アスファルト」と表現する。そして、重油まみれの大海を「黒いうねり(marea negra)」と呼ぶらしいが、この黒いうねりとコントラストを成すのが「白いうねり(marea blanca(=写真))」だ。

白いうねり、つまり、白い作業着を身にまとったタール除去ボランティアの数は累計で30万人を超えたという。出身国も様々で、カナダ、スウェーデン、イタリアなど、25ヶ国以上の国からボランティアに駆け付ける。5~35名がひとつのグループになって作業をする。

ボランティアたちは、「人々からのほんのわずかなお布施(pequeñas donaciones de la gente)」で現地での宿代(alquier de la casa)、光熱費や食事代をまかなう。足りなければ自腹(autofinanciarse)。

事故当時、ガリシア州のビーゴ(Vigo)にいたというあるドイツ男性は、タール除去に専念すべく、カルノタ地区に移住してきた。そんな彼のことばが刺さる:

昔も今も、僕らには一切の収入はなく、支出だけだよ。ボランティアに何千ユーロも使ったよ。でも、僕にはそれが重要なんだ。だって、もしお金が入ってくれば、すべてが汚れちゃうだろ(Solo teníamos gastos, ningún ingreso, ni antes ni ahora. He dejado miles de euros en esto. Para mí es importante, porque si entra dinero, se ensucia todo)。

ナゲナシの時間と知識を削り売りしている小生からすると、赤面してしまうくらいのピュアさと使命感。

また、なぜ、ボランティアを続けるのかとの記者からの問には、この男性は次のように答えている:

こんなようなものを見れば、理由はもはや、必要ないよ。おのずと、やるべきことが分かるはずさ(No hace falta motivación cuando ves algo así. Automáticamente, sabes que tienes que hacer)。

今回は漂着したタールを除去するボランティアに焦点を当てたが、プレステージ号を巡っては、まだ、いろいろと書き留めておきたいことがある。機をみて紹介してゆこう。

写真は「白いうねり」の作業風景。

ところで、記事では「アスファルト」を意味する語として、「chapapote」が使われていたが、アカデミアの辞書には「chapopote」という異形も載っている。