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自己肯定感とZ世代

これは、Stand.fmでの2023年3月29日の配信を記事化したものです。

こんにちは。VOICE Lab.のJidakです。
この番組はマーケティングリサーチャーで脚本を書いたりショートストーリーを書いているJidakが、 人・モノ・コトを通じて聞こえてきたVOICE・メッセージをゆるくお伝えする番組です。


Z世代がわからなさすぎる。


今日は本業のマーケティングリサーチからのトピックです。
最近、インタビュアーとしてZ世代にお話をうかがうことが多かったのですが、世代の特徴が現れているエピソードが数多くあり、関係者が驚きの連続だったんですね。
そのエピソードについて、皆さんは「そうだよね」って共感するのか、「やっぱり距離があるな。理解するために、もう一歩踏み込んで考えなきゃいけないな、努力が必要だな」って思うのか、どちらですか、みたいなお話をしていきたいと思います。

Z世代、この表現、お聞きになったことはありますか?
世代によって商品の仕方、マインドセットがそもそも違うので、マーケティング的にこの世代に売り込みたいのであれば、こんな風なコミュニケーション(宣伝方法)、 プロモーションを考えた方がいいねとか、そもそも商品コンセプトっていうのはこういう風に考えなきゃダメだねっていうところで、世代論がそれなりに重要視されてるんですね。
もちろん全員が全員当てはまるわけではないっていうのも重々分かりつつ、 ただマジョリティのところではその世代の空気を絶対に背負っているってところがあるわけです。
その中央値から大きく外れる人を‘ハズレ値’みたいな言い方をしたりします。
ハズレ値のほうを見ることにヒントがあるっていう時も多々あり、そういうプロジェクトもあるはあるのですが、 全体像として捉えるときはやっぱり中央値に近いところを見ために世代論を利用したりということが多いんです。
先日のプロジェクトでは、仕事観・職業意識というところにスコープを絞っており、「Z世代って基本的にこういう考え方だから、なるほど仕事についてもこうなんだ」っていうような、私はある程度納得感は高かったんですね。
ですが、クライアント(依頼元)はZ世代の研究が初だったらしくて、「もう、すべてが目鱗です」みたいに驚いていたんです。
つまり今回、クライアントさんたち(40代-50代手前あたり)にとって、「若者がわからなさすぎる」ってところからスタートしたんですね。

Z世代は10代の前半からとかいろいろな言われ方してますけど、たぶん15、6歳から、あるいは大学生ぐらいからと思った方がいいかもしれませんね。
18歳、大学入学したぐらいから26歳ぐらいまでをZ世代ととらえています。
ただ、その前後2、3年はざっくりブレはあり、28歳ぐらいの人でもZ世代の背景を背負ってる人もいます。
そして、27歳ぐらいから42歳ぐらいまでをミレニアル世代って言い方をします。 だいたい今‘若者’って時には、ミレニアル世代の下寄りからZ世代あたりが想定されていますね。
皆さんはどちらかに位置していますか。
私はですね、古い世代です。‘新人類’って言われた世代、そこに属しています。
その後に団塊ジュニア世代とか就職氷河期みたいに言われてる世代なんかもありましたね。 あと、ミレニアル世代とZ世代が大きく被りつつ、ざっくり‘ゆとり世代’って言う時もあります。


仕事に自己実現を求めない。

さて、本題なんですけども。
一言で言うと、仕事に自己実現を求めないっていうのがZ世代なんですよ。
‘自己実現’っていうのがざっくり抽象的な響きでピンとこない場合は、 「仕事で○○を成し遂げて○○な自分として世にフラッグを立てよう!」みたいなのが自己実現だとお考えください。
世にフラッグを立てようとか、これが私だ、俺だっていう存在を知らしめよう、 一番自分らしい自分を生きるみたいなのがガチッと重なる感覚を得られる、狙っていく方向で「ここだ」って思えるみたいなのも全部含めて、そういうことを‘自己実現って言うんですが、 Z世代は極端に言うと仕事でそれを叶えようとしてないんです。「自分の仕事が生きがいだなんて思うのはどうかしてる。 仕事しかないっていう人がかわいそうでしょうがない。 そんな情けない人生になりたくない。 大事なのはプライベート」だと。
インタビュー終わる度に、クライアントの40代後半とか50代の人たちは、毎回、「はぁ? 今の話がちょっとわからない」と。「仕事で自己実現しないと何をするの? 何を言ってるの彼らは?」って感じなんですよ(笑)。
ミレニアルよりもっと上の世代は、 「大事なのは仕事」って言いかねないですよね。仕事で自分を発揮させるためにプライベートも充実させる。 すべては仕事に循環、返還していくためのプライベートであると。
ミレニアル世代もだいぶZ世代寄りです。 「稼いだお金でプライベートでやりたいことをやる。 やりたいと思っていることにより加速度をつけてあげて楽しめるようにお金を稼ぐ。 仕事はお金を稼ぐ手段でしかない」と。
どうでしょう? 果たして違和感を感じるのか? 謎すぎるのか? または「うん、同意!」なのか…。
もうちょっとこのまま行きますね。


Z世代の特徴とは

ちなみにZ世代の特徴としてまとめられているのを読み上げますね。
まず「デジタルネイティブ」。生まれてきてすぐにネット社会になっていて、スマホが当たり前の世代。
次に、「プライバシー保護の意識が高い」。 これネット世代であるがゆえにってこともあると思うんですけど、 その辺の忖度というか、人との距離感みたいなのもちゃんとわかる世代なんですよね。ここまで踏み込む、または踏み込まないみたいな。
そして、「音楽をオンラインで大量に消費する」。
ブランドではなく本質に価値基準を置く」。
何を持っているとかじゃないみたいなんですよね。 もうちょっと上の世代はブランド消費とか所有欲みたいなところで生きてきてますけども、 サブスクもあるように、持つことにあんまり意義を感じていない。
そして、「オンタイムで仲間とコミュニケーションを取る」。
リモートでのつながりも当たり前。どこにいようが会いたい、繋がりたい人と繋がれる感覚っていうのを、非常に気軽にフラットに持っている。国を越えることもあんまりボーダーみたいなものを感じていない状態。 どこにでもふっと行けるって感覚を持ってる。
起業家精神が旺盛」。
なんか自分でやろうという意欲ですね。ここちょっと語弊があるかもしれませんけれども、 割と自分を‘できる子’である、ベーシックなところを全部抑えている状態っていうふうには思っているのかなと思います。 そして自分が楽しめる方向に伸ばしていこうと考えて、常に情報を取っている感じ。 起業家精神って言葉には含まれていないかもしれませんが、楽しいことで人と繋がれるようになりたいというのと、社会貢献の意識も高いからNPOに参画したり、 アートプロジェクト的なことでクリエイターとして参加したりとかというのも活発です。
ただそこは「楽しむため」であり、「お金を稼ぐ」とはイコールに考えてはいないケースも多いです。だからパラレルワークとして、いくつかの職業を持ち、稼ぐ手段としての安定した仕事を持ちつつ、 振り幅大きく楽しみを深くやっていきたいっていうのがZ世代なんですね。


削られたくない

インタビューの中で具体的に出て来たエピソードとして、大手のゲーム会社に勤めていて、そこの経理をやっているが、現在転職を考えているって子がいたんですね。25歳だったかな。 経理を3年やってきて、一定以上のスキルを持っているんだけど、そのゲーム会社は、時代の動きとともに新しいことを取り入れる動きも早くて、やらなきゃいけない幅も広くて、 ‘経理のスキルに長けた自分’と思っているのに、どんどん技術が進化するわ、やらなきゃいけないことは幅広くなるわで、「ここにいると埋もれちゃうんです」って言うんですね。「他の人たちがすごすぎて、自分が規定演技以上のスキルを発揮しているのに、他の人たちは、さらに異分野のスキルまで入れ込んで発揮するものだから、「ここにいると頭が出ない、光らないんです」と。だから転職を考えようと思っていると。「そんなにすごい人たちがいるから刺激になります、ということではないのですね?」と言うと、「刺激にはなるんですけど、やってられないなってなるんです」ってことなんですよ。

「先輩たちは土日も返上して、残業もしてそれらの技術・スキルを磨いているので、当然なんです、できるのは。自分はそんなふうに削りたくないんです、自分を。それに、自分は一定以上のスキルを持っていて評価されてしかるべきなのに、ここにいると、身を削って本気出して仕事している人たちの間で埋もれてしまって損じゃないですか。効率が悪いんです」って。

だから、「ザ・経理」「ザ・トラディショナル」な会社に移って、今持っている知識だけで「そこにいてくれて助かる」って言われる存在をキープしたいと言ってましたね。

’仕事’と’好きなこと’は分けて考える

その人は、経理についてのスキルアップをしていって、どの会社に移ろうが、自分の価値は減らない、目減りしない状態をキープしたいわけです。
自分の市場価値を高いまま推移させて、どこでも通じる自分になるということを目指しているわけです。
そうなると何がいいか。
安定的に収入が得られるんです。
その安定的にもらえるお金を元に、自分の好きなこと、例えばその人だったらもともと美術の心得のある人だったので、少し余裕ができたらアートを教えるアートバーのようなものを開きたいって言ってました。
「安定的な仕事とやりたいことの2本柱でいけたら最高ですね」って言い方をしてたんです。

それが、25歳の人が描く20年後の未来図なわけです。

安定の仕事のためにしっかりとスキルは積み上げる。
でも自分を削られたくない、傷つきたくない。だから’安定’を重視する。
必要以上の評価を得ようとして動いても、その会社が倒産するかも、あるいは合併吸収に遭って、違うスキルのほうが有利になるかもしれない。
自分以外の要素でどう削られてくるかわからないから、会社に頼らずに安定というところだけで推移していけるように自分の価値を高めて、「ここが確かに安定だ」と思えるところにいたいと話していました。
なんと堅実なことでしょう!
この発想は私にはなかったです。でも、この世代の方たちは自然にこの考え方なんですよね。

自己肯定感は高く、自己効力感は低く

ちなみに、このZ世代の特徴を言い表す端的な表現として、「自己肯定感は高いけど、自己効力感は低い」というものがあります。
どちらも似たような言葉でまぎらわしいですが、「自己肯定感・低x自己効力感・低」というどっちも「低」だと、自分の価値を自分で認めていない状態を指しますが、彼らは自己肯定感は高いんです。
「自己肯定感」とは、「ありのままの自分を尊重する」こと。ぶれない自分がある。自分は自分らしく、今の姿で問題がないと感じられることです。
今回20件ぐらいインタビューしたのですが、ほぼ全員当てはまる感じでした。
自己肯定感が低い場合は、「自分を責める」というか何かが起きた時に自分を点検しようとするんですね。でも自己肯定感が高いと「この環境があまりよくないんだな」と「あ、場所変えよう!」って思えるんですね。ここがZ世代はあてはまるんです。
でも自己効力感は、仕事上では低いというのが特徴なんです。
というか、上げていかない、上げないようにしているというか。
自己効力感というのは「自分にはできると考える力」。
これが高いと「初めての仕事だけどきっとできるだろう、がんばろう」ってなる。低いと「こんな仕事、自分にできるわけがない」っていう見積もりになると。
で、Z世代は「こんな仕事できるわけがない」ではなくて、自己肯定感が高いので、ちょっと微妙なんですが「こんな仕事をやっている場合ではない。こんなに仕事で身を削っていたらもったいない」として、自己効力感を高めに置こうとしていない感じなんですよね。

基本、自分は‘できる子’っていう意識はあるんです。
より安定を得られるためには、もう一つこの資格をとっておこう、より強固にしておこうという感覚はあるのだろうけど、仕事で頑張ろう、会社に貢献しよう、だから残業も厭わず、土日返上で技術を磨こうってことにはならないんです。
「さらにがんばろう!」っていう方向感が、会社のためにということでは発揮されにくい傾向がある。
なぜなら自己肯定感が高く、プライベートこそが大事だから。
プライベート、これは結婚していたら「家族が大事」っていう言い方に集約されます。
「家族が大事だから仕事頑張る」ではなく、「家族が大事なので、仕事はそこそこに」なんです。
自分のポテンシャルは高いので、それを十分使えるぐらいでとどめて、必要以上に使わない、無理をしない、無駄に自分を削りたくないっていう言い方になってます。

自己肯定感の高い人・低い人

自己肯定感が高い人の特徴がネット見てたらまとまっていたものがあってわかりやすかたので、ここで共有したいと思います。
皆さんはどっちかなと、イエスが多めかノーが多めかなと考えながら聞いてもらえたら。
自己肯定感が高い人の特徴10個。

・一言目がありがとうっていう人

・ミスを生かそうとする

・イエスもノーも言える

・7割で十分と考える

・行動を求める

・「どうせなら」で考える

・小さな成功を褒める

・感情をコントロールする

・生きやすいように工夫する

・愛する人を大切にする

これが自己肯定感が高い人の特徴だそうです。
Z世代のインタビューしていて、全員、これ全部当てはまるなって、本当にピッタリ当てはまるなって思いました。

そして逆の自己肯定感が低い人の特徴も書いてあるのでちょっと読み上げます。
こちらもご自分にどの程度当てはまるか考えながらちょっと聞いてくださいね。

・一言目がすみません

・ミスを引きずる

・ノーが言えない

・100%を目指す完璧主義

・才能を求める

・「どうせ」と考える

・大きな成功を欲しがる

・感情に振り回される

・生きづらさを抱える

・愛する人に気づけない

ちょっと最後の方の「生きづらさを抱える」「愛する人に気づけない」は、なんか大きな話っぽくて難しいですけども、これが自己肯定感が高い場合だと生きやすいように工夫したり、ちょっとした工夫をちょいちょいするみたいな小さな成功でいいわけなんですよね。「ちょっとずつ改良して、まあいいじゃんこれで」と思えるのが自己肯定感が高い人。低い人の場合は「なんか生きづらいなー」っていうストレスがあるんだけれども、でも大きな成功を欲しがるので、小さな成功で満足できないっていう悪循環に陥りがちということでしょうか。
「愛する人を大切にする」という項目についてもそうですね。Z世代は何が大事かっていうのをすごいわかってて、「家族です」ってはっきり言うんです。 だけど自己肯定感が低い場合は「自分を大事にしてくれる人に気づけない」とってことになるんでしょうかね。
これすごいわかりやすいなと思って。
リアルの知り合いのことが思い浮かびました。その人のことを自己肯定感が低いとは思ってなかったんですけど、ことごとくあてはまるな、ああ、あれは自己肯定感が低かったからなのかって理解できました。たとえば完璧主義者って「7割で良し」と思えないし、かといって完璧って手が届きにくいから、結局前に行けなくなり、そしてそういう自分を許せなくなるっていうことなんだなって思いました。


効率的であること、無駄がないこと

なので、Z世代は本当にみんな生きやすいというか、上手に生きてるんだなと感じたんですよね。
あと、「効率的である」とか「無駄がない」みたいなのもしょっちゅう口にするんです、Z世代。
いつも点検しながら、ちっちゃくOKを出しながら、コツコツ生きていて、愛する人と楽しい時間を確実にしていく。そういうライフスタイルなんだなと思いました。
これはその世代として、背負っている背景があるから、Z世代の人は自然とそうなりがちだと思うんですけど それ以外の世代の人が彼らと同様に自己肯定感を高く持つためには、日々自分にちっちゃくOKを出していく、みたいなことを意識的にやっていかないといけないわけです。
ナチュラルには、特に40代50代以上は、ナチュラルにはZ世代のような肩の力が抜けた感じではいられないなと。

ちゃんと安定も求めて無難なところを選んでいける能力、これは見習いたいなと思いました。

以上まとまってるようなまとまってないような内容ではありますが、自己肯定感ということと、Z世代を掛け合わせたところで、最近仕事で見えてきた面白かったことをお話させていただきました。
以上、Jidakでした。ではまた。


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