凝り固まった「真面目さ」をほどく
気を抜くと真面目になりすぎるわたしは、外側からシャワーのように「ゆるさ」を浴びる必要があると思う。
「楽しんでいこう」「決まりなんてないんだから」
そんな空気の場所に身を置くと、自分の凝り固まった心さえもほどけ、なんだか身体が軽くなったような気にさえなる。
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冬の平日の昼間。はじめて湘南の海へ行ったときに、衝撃を受けた。
気持ち良さそうに海に浮かぶサーファーの数。砂浜に座って、ぼーっとしている人の数。
「あれ、今日って平日の昼間だよね?」
そう思うほど、わたしの知っている「平日」とは異なる光景がそこにあった。
東京で暮らしていた頃のわたしは、朝8時に起きて、18時ぐらいまで仕事をする毎日を過ごしていた。
フリーランスなのだからこんなに規則正しくなくても良かったのだけど、会社員時代のなごりと、夫が会社員だったこともあって、さながら会社員のような日々だった。
平日は働き、土日に休む。世間の流れにそって。
たまに平日を休みにして街へ繰り出しても、至るところにスーツを来たビジネスパーソンがいて、「今日は平日ですよ?」と言われているような気持ちになった。
わたしはずっと東京で育ってきたので、これが当たり前だと思っていた。
平日は仕事をする日だし、街に出ればスーツの人がわんさかいる。それが当然だ、と。
そんな思い込みが、湘南の風景にズドンと打ち砕かれた気がした。
だいの大人が、平日の昼間から海で遊んでる。しかも、こんなにたくさん。
湘南や鎌倉エリアの海は、どこもそうだった。
江の島のそばの片瀬海岸や鵠沼海岸も、鎌倉にある由比ガ浜も、はたまた逗子海岸や森戸海岸も。
湘南の街を歩いても、スーツを着ている人を見かけたことがない。
サーフボードを載せた自転車で走る人、ビーチサンダルで歩く人。
「平日の昼間も、遊んでいいんだ」
いつからわたしは、曜日や時間の概念に縛られていたのだろう。
どうしてダメだと思ってしまっていたんだろう。
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そんな衝撃を受けたのは、鎌倉方面に住み始めた3年前のことだった。
…便宜上「鎌倉方面」と言ってはいたけれど、実際はギリギリ横浜市内だったし、鎌倉までは電車で10分ほどかかる場所だった。鎌倉駅から海までは歩いて15分ぐらいあるから、家から海まではトータル30分以上かかるので、ちょっと遠かった。
「いつか絶対、この海のそばに住みたい」
わたしの思い込みを壊してくれた場所。真面目すぎるわたしを「ゆるさ」で包んでくれる場所。
そんなことを思っていたのだけれど、今年の3月、夫の仕事の都合で東京の西側に引っ越すことになった。海からは遠のいて、むしろ山に囲まれた場所だ。
引っ越すとき、正直わたしはとても落ち込んでいた。海から遠くなってしまうから。
それでも、住んだら気に入るかもしれないから、と自分をなだめた。
…のだけど、やっぱり数ヶ月経っても、わたしの気持ちは海に惹かれたままだった。
疲れたときに息抜きできるあの優しい青色の景色は、なぜここにはないんだろう。ビーサンを履いてゆっくり歩いている人もいないし。立ち並ぶマンションの隙間から見える空は、あの時よりも澱んで見えてしまう。
そして、東京の山側に越してきてから9カ月後の、今。12月。
もうすぐわたしは、また海の街での暮らしを始める。
気持ち的に限界を迎えそうだったわたしは、夫に「やっぱり海のそばで暮らしたい」と伝えた。大賛成してくれた。彼は通勤が大変になるけれど、「そんなのは大したことじゃない」と。寛大な夫で良かった。
次に住む場所には、大好きなあのカフェも、行ってみたかったパン屋さんも、近くにある。しかも今度は、海まで歩いてすぐの距離。
ということで、念願の海街暮らしはもうすぐそこ。
きっと、今まさに真面目に凝り固まってしまった心は、またすぐにほどけていくのだろうな。
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『じぶんジカン』のロゴも実は海のモチーフだし、きっとわたしも、じぶんジカン(この話はまた別の機会に)も、もっともっとパワーアップする予定。乞うご期待…!
おわり
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