見出し画像

教員の働き方改革と一体にした授業改善をめざすカリキュラムマネジメントについて(3)

「箕高授業スタイルによる授業改善について」

こんにちは

7週連続、日曜日更新の拙稿に毎回お付き合いいただきありがとうございます。さらに、フォローもいただき感謝です!たいへん励みになります

今回は3回目となります

前回お示しした仮説『カリキュラムマネジメントで、ディプロマポリシーの共有と実践を進めていくことは、観点別学習状況の評価の理念に相応した「授業改善・適正な学習評価」、さらには「教員の働き方改革」に繋がる』ことについて「授業改善」の観点で掘りさげていきます

先ずは、「ディプロマポリシーの共有」がなぜ「授業改善」に繋がるのか、から。

箕高では、教員自らが創意工夫を重ねて授業改善にチャレンジしています。その取組みの中心は、学習指導室(後述)が中心となり推進している、
  ・授業の「めあて」提示
  ・生徒の活動場面(グループワーク等の協調学習など)
  ・「振返り」
を取入れた「箕高授業スタイル」の実践です

これは、○前述の「AARサイクル」による学習プロセス、

○京都大学 准教授 石井 英真 先生の提起

・「メインターゲットに迫るここ一番の部分で、共に深め合う活動を仕掛け授業のヤマ場をつくる。」
「授業後に子どもに生じさせたい変化(子どもの行動・言葉・作品など)を事前に想像することで、具体的な子どもの姿で目標を明確化する」(『授業づくりの深め方 「よい授業」をデザインするための5つのツボ 』より抜粋)

・「「目標と評価の一体化」とは、メインターゲット(授業の中核目標)を絞り込んだうえで、授業後に子どもたちに生じさせたい変化(行動・ことば・作品など)を想像して、具体的な子どもの姿で目標を明確化することを意味しています。」(『学習評価入門』より抜粋)、

○東京大学 大学総合教育研究センター 教授 故 三宅 なほみ 先生の提起
協調学習(グループ学習)では、わからない問題の教え合いや、一緒に考える場面が設定されます。自分で考えたことを言葉に出して確認すること、グループの仲間の意見や考えを聞いて、自分の考えを見直し、それらを組み合わせてより良い考えを創りだすこと、これらの場面が次々に個人の思考内に起こり、理解が深まっていきます。これを「建設的相互作用」と呼びます。(『協調学習とは 対話を通して理解を深めるアクティブラーニング型授業』より抜粋)、

等を踏まえて実践しているものです

教員は、まず授業後の生徒の姿をCompetency–basedでイメージし、「めあて」として始業時に提示、生徒はそれを意識しながら授業を受けます。「めあて」に迫るここ一番の場面で、教員は共に深め合う活動を設定します(この活動において input ⇔ output の往還により既習の学習知が深まります)。終了時には、たとえ数分だけでも構わないので授業・学びの流れを振返り、「めあて」が達成できたかを生徒に問いかけます(「振り返りシート」等の記述は単元末でも十分です)

本時の授業内容を「めあて」として板書される先生も当初おられましたが、評価育成に係る管理職の授業見学のフィードバックである「授業見学評価票」(後述)や授業後の面談等を通じて、本時の授業を受けて、生徒は何ができるようになって、単元末に向けてそれがどう活用されていくのか、生徒が何に気付いて何を理解できるようになり、それを基に何に考えを巡らせられるようになるのか、等を念頭に「授業後の生徒の姿をCompetency–basedでイメージ」することの意義を先生方も考えてくれるようになりました。その積み重ねが、生徒たちの「永続的理解」に繋がっていくと考えています

「ディプロマポリシーの共有」 ディプロマポリシーに基づき、教科教育活動・教科外教育活動の両輪で生徒たちの人間的成長・発達に働きかける、自身の教科・科目で学年の発達段階に応じて卒業時に身に付けて欲しいCompetencies(資質・能力)のどの部分を育てていくのか、そこを学校全体で共有することにより、各単元、それを構成する一時間一時間の授業で単元終了後、授業後に育成をめざしたい生徒の姿をイメージしながら授業創りを研究・開発・実践に取組んだのが、授業の「めあて」・生徒の活動場面(グループワーク等の協調学習など)・「振返り」を取入れた「箕高授業スタイル」の実践なのです。

箕高では、箕高授業スタイルの定着を図りつつ、授業そのものの質の追究も同時に行い、公開研究授業、相互授業見学を実施しています。10月下旬から1ヶ月間を授業公開月間に設定し、学習指導室では、「めあて」提示までの10分間、ともに深め合う活動、振返りの時間帯だけでも授業見学することを提案するなど、実践を拡げる工夫をしています。この取組みは本校のみならず、府立北野高等学校や府立豊中高等学校、箕面市立第一中学校と連携協力し、実施しています。事前に、相互授業見学の各校の窓口となる担当者や首席(主幹教諭)で打合せを行い、各校の行事予定表や時間割を共有します。また、各校の窓口担当者等が授業見学希望を取りまとめ、相互授業見学一覧表を作成し、管理職と共に共有することで、誰が、いつ、どの学校を授業見学で訪問するのかが把握でき、出張依頼文書を作成する事務業務の軽減にもつながりました。授業見学後は、時間的ゆとりがあれば研究協議を実施しますが、時間確保が難しい場合が多いので、「Thank youカード」を提出することで、研究協議の代替としています。こうすることで、互いに業務的負担を感じることなく、多くの気づきや学びがある有意義な交流を続けることができています

私は、先生方の「授業づくり」に管理職も参加したい!と呼びかけを行いました。授業から離れて久しいのですが、「一緒に箕高の授業づくりをしたい」という思いを語り続けてきたこと、20年以上教材研究・開発、授業実践を積み重ね、管理職として数百回の授業見学・評価を行い、先生方が教材研究に充てている時間に専門書・論文により最新の知見を得ている、という一定のエビデンスに基づいていることで、先先方に響くものがあったのかも知れません

私は、教頭先生にも協力願い、評価育成に係る管理職の授業見学評価票に「気付き、提案、教育方法学等教育学の視点からの授業評価」等のコメントを添えて、見学したその日のうちに、校長・教頭のコメントを添えた評価票を左右にならべたB4のプリントをレターケースに入れ、先生方にフィードバックしています。入るのを待ってくれている先生、コメントに付いて更に話を聞きに来てくれる先生がおられます。話を聞きに来られた先生と、授業づくりの意見を交わすなかで新たな発見もあります。この取組みも箕高の授業改善に大きな役割を果たしているのでは、と感じています

生徒たちが、1人1台端末を活用し家庭で自学自習する「自立した学習者」へと育てることが今後の大きな課題です

最後に、学習指導室についてふれておきます。私の校長マネジメントは、東百舌鳥高校・箕高ともに、着任2年目に新設した「学習指導室」を核として取組んだものです。東百舌鳥高校では、国立教育政策研究所「総合的な学習の時間」教育課程研究指定校事業で「学びに向かう探究学習の研究・開発及び評価」を研究主題に取組み、その成果と課題を全国に発信しました。その要点は次々回で述べます

箕高に着任した令和2年度の1学期、令和3年度の国際関係学科改編にともなう新しいグローバル科のミッションは何か、国際教養科から引き継ぐべき財産は何か、箕高はどのような生徒を育ててきたのか、について、教職員の意識・意欲を丁寧に探っていきました。その結果、「学習指導室」を新設する条件が整っていると判断するとともに、まず管理職と首席(主幹教諭)で構成される経営企画会議でビジョンとミッションの共有を行いました。2学期の前半には運営委員会、後半には職員会議に議論を広げ、12月23日には前述の教員研修「箕面高校で学ぶ生徒たちはどのような力を習得するのか〜”グローバル”に着目して〜」を開催し、3学期には新しく委嘱した学習指導室長が中心になって全教職員を対象に箕高の教育に対する思い・期待・課題についてヒアリングを行い、その結果を学年末の職員会議で共有しました

学習指導室では、これまでに「箕高授業スタイルによる授業改善」「観点別学習状況の評価とパフォーマンス課題」について重点的に取組んできました。次回は、「観点別学習状況の評価とパフォーマンス課題」の取組みについてできる限り具体的な取組み内容とその背景・コンセプトが分かるように紹介していきたいと思います

提起している仮説「カリキュラムマネジメントで、ディプロマポリシーの共有と実践を進めていくことは、観点別学習状況の評価の理念に相応した「授業改善・適正な学習評価」、さらには「教員の働き方改革」に繋がる」について、次回以降、さらに論を深めていきます

何かのきっかけで、現場の生徒たちや先生方が幸せになっていくような議論が拡がればと願います

引き続き、どうぞよろしくお願いいたします

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?