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快楽物質(ドーパミン)とゲーム・ゲーミフィケーションの関係

 仕事がら、ゲームがなぜ人を惹きつけ夢中にさせるのかをずーっと考えています。

最近読んだ、脳科学者 中野信子さんの「脳内麻薬」は、とても面白く多くの学びがあったので、お話しします。


快楽物質(ドーパミン)は、「頑張っている自分へのご褒美」

 ゲームにハマる、SNSにハマる。
社会的には、ちょっとマイナスなイメージを持たれることです。

半年先の入学試験目指して勉強する、1年先のプロジェクト成功のために仕事を頑張る。
社会的には、とてもプラスなイメージを持たれることです。

しかしなんと、イメージではマイナスとプラス、まったく逆の様に思われていることが、脳科学的には同じだそうです。どちらもその時、脳内で快楽物質(ドーパミン)が放出されることにより、ヒトは快楽を感じる。


遥か昔にさかのぼります。

類人猿から、ホモサピエンスへの進化の時、「ものを考える脳」(大脳新皮質)の発達がヒトの繁栄につながりました。

その過程で、ヒトが目的を達成するために、脳が用意した「頑張っている自分へのご褒美」が快楽=ドーパミンの放出だったのです。原始時代にはまだ給料や昇進という報酬はありませんでした、その時代から、ヒトが頑張ったのは、快楽=ドーパミンの放出というごほうびによるものでした。

今でも、ヒトが半年先の入学試験のために勉強する、1年先のプロジェクトの成功のために頑張れるのは、脳がドーパミンを使って定期的に快楽が与えているからなのです。

考えてみてください、犬や猫は半年先の成功のために、頑張るでしょうか? 頑張らないですよね。犬を例に挙げると、すぐにもらえるクッキーのために、お手や、お座りを憶えますが、半年先のクッキーのためにしないです。そんな先のことは考えられない。

だけど、ヒトは半年先のことを考えながら頑張れるのです。それは、今日はいっぱい勉強した、難しい問題が解けた などの瞬間に出るドーパミンのお陰なのです。

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快楽物質(ドーパミン)の出る量が適正でないとトラブルが起こる!

 が、がんばりに対して適量なご褒美が出ている内はやる気を高めるのですが、一つ間違うと頑張らずにご褒美だけを求めるようになります。
さらに、このご褒美は、生理的欲求(食欲や性欲さえ)を打ち負かすほど強力なのです。皆さんの中に、食べることも寝ることも忘れて、夢中にゲームをやり続けた経験のある方は分かるかもしれません。私もドラクエとかメダルオブオナーとか思い出します。

ゲームへのハマりは依存症をも生みます。なぜなら、ゲームは、熱中を生むように設計された人工の趣味だからです。クリエイターは、プレイヤーのドーパミンが分泌されるようにゲームを設計するのです。

ヒトがなぜスマホゲームのガチャ(運要素)にはまるのかにも、脳科学的な理由があります。ヒトの脳の発達により脳のメモリー(海馬)が大きくなり、実際に当たった時に加えて、期待の快感を得るのです。好ましい体験は脳のメモリー(海馬)に蓄えられ、次の同じような状況が来たときにより強いドーパミン放出が起こる様になる。これはジャンブルの射幸心を煽ると同じです。
 良い悪いではなく、ヒトの脳の仕組みなので、どうしようもないことなのです。なので、悪いゲームを作ってはいけないと、元ゲーム開発者の私は思います。

 例えば、ゲームの悪い要素が、過度のガチャ(運要素)。運要素自体が悪いわけではなく、カイヨワの遊びの4要素にも、運(アレア)は含まれています。頑張りによりゲームが進行していく、その中のスパイスとして運要素が入っている内は善いゲームなのですが、それが逆転して頑張りによりも運要素が重視されたら、それは善いゲームではありません。


ゲーミフィケーションには、良いゲーム要素のみを用いる!

 ゲーミフィケーションで活用するゲーム要素は、善いものだけに限定する必要があります。なぜならゲーミフィケーションは、ヒトが善い行動を起こせるように後押しするものだからです。
 それらが、ゲーミフィケーション6要素の、能動的な参加、称賛演出、即時フィードバック、独自性の尊重、成長の可視化、達成可能な目標設定です。一つ補足すると、称賛演出は、うまく出来たことを褒めることにより、プレイヤ―を次のステージへ促すためのもので、誉められたので満足して歩みを止めさせるものではありません。

 ゲームはエンターテインメントなので、善い悪いを区別せずに、ドーパミンが出る仕掛けを入れていますが、ゲーム要素をゲーミフィケーションとして、人々のやる気付けに使うのであれば、善い要素のみを入れる必要があります。すなわち頑張ったことが正しく評価されてドーパミンが出るシステムです。ガチャの様に運での進行や、過度の称賛による演出は、逆にヒトのやる気を妨げてしまいますので注意が必要なのです。(終わり)

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#jgamifa #gamification #ゲーミフィケーション
#日本ゲーミフィケーション協会 #ドーパミン #快楽物質 #脳科学
執筆:岸本 好弘(日本ゲーミフィケーション協会 代表賢者Lv98)
https://jgamifa.jp/

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