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産業・組織心理学会「第148回 部門別研究会(組織行動部門)ゲーミフィケーションはモチベーションを生み出すか?」聴講記

 こんにちは。ゲーミフィケーション協会にて日々学んでいます、こいふみです。

2023年3月18日(土)に、 産業・組織心理学会 による「第148回部門別研究会(組織行動部門)ゲーミフィケーションはモチベーションを生み出すか?」(Zoomウェビナー形式)に参加しました。

産業・組織心理学会 HP:https://www.jaiop.jp

久保 真人教授(同志社大学政策学部)による司会のもと、話題提供者として次の3名による講演のあと、指定討論者の田中 あゆみ教授(同志社大学心理学部)による3名への質問と、最後に参加者からの質問に回答していくQ&Aがありました。

岸本 好弘 さん(日本ゲーミフィケーション協会 代表理事):
 「ゲーミフィケーションの概要と日本の活用事例
後藤 誠 さん(株式会社ゲーム・フォー・イット 代表取締役):
 「ビジネスにおけるゲーミフィケーションを活用したモチベーション維持の工夫と事例
吉川 肇子 さん(慶應義塾大学商学部 教授):
 「ゲーミフィケーションとモチベーションをつなぐ

「ゲーミフィケーションの概要と日本の活用事例」

岸本さんの講演では、ゲーミフィケーションの定義、日本ゲーミフィケーション協会の定義する「ゲーミフィケーションデザイン6要素」のうち3つの要素(能動的な参加、達成可能な目標設定、賞賛の演出)についてのゲームとゲーミフィケーションへの活用事例を交えた解説、そして日本の仕事・教育における活用事例の紹介と進み、活用されている分野、あまり活用されていない分野についてで締めくくられました。

ゲーミフィケーションデザインの要素について、実例を交えての解説で理解が進みました。
また、今はまだあまり活用されていない仕事・社員教育の分野において今後いかに活用していくか?可能性も沢山あるなと感じ、発想が広がりました。

「ビジネスにおけるゲーミフィケーションを活用したモチベーション維持の工夫と事例」

後藤さんの講演では、「面白さの要素」の解説から始まり、「ゲーミフィケーションについて」こちらは5つの要素(目的、クエスト、報酬、可視化、交流)に分類しての解説、そして次の「ビジネスでの使用実例」へと続いていきました。

実例では「17LIVE」というライブ配信サービスが如何にゲーミフィケーションを上手く活用しているか、そのほか海外の営業や研修に関する各種サービスとそこに見られるゲーミフィケーション要素の解説がありました。
ライブ配信サービスの解説ではゲーミフィケーション活用によって配信者であるライバーだけでなく応援するファン側を如何に熱中させるかの仕組みに感心することが多数ありました。

最後のまとめでは「DX化によって全てがゲーム化していく未来が見えてきた」との事で、これからますますゲーミフィケーション活用の場が広がっていくと思うと楽しみです。

「ゲーミフィケーションとモチベーションをつなぐ」

吉川さんの講演では、「ゲーミフィケーションは内発的動機づけか、外発的動機づけか?」「『ゲーム感覚で楽しく学ぶ』の欺瞞」「認知的評価理論の逆はありうるか?」と、この分野での議論となっている話題が提示され、最後に「組織行動については十分に活用されていないのではないか?」という話があり、さまざまな問題提起の連続でとても興味深く考えさせられました。

・ゲームの楽しさで学習が楽しくなるなら、その逆に学習の楽しくなさでゲームも嫌いにならないのか?
本当に内発的動機付けになっているゲーミフィケーションは何かを評価する時期に来ているのでは?
などの話にはハッとしました。

「ゲーミフィケーションはモチベーションを生み出すか?」と、指定討論者からの質問

3名の話題を受けて、最後に指定討論者としてヒューマン・モティベーションが専門領域の田中教授による3名への質問と、心理学、ゲーミフィケーション、ゲーム、モチベーションについての話がありました。

アメリカの心理学者エドワード・デシとリチャード・ライアンによる「自己決定理論」を軸にモチベーションについてや、教師による生徒の自律性支援の具体例などの話が展開しました。
ゲームで一番満たされるのは「有能感」の達成なのではという話。ゲーミフィケーションの注意点について、「ご褒美」には2つの側面があり、あげかたには気をつける必要があること、そしてゲーミフィケーションではこれが間違っている物があると思われるという話がとても興味深かったです。

岸本さん、後藤さんへの質問として、「長く愛されるゲームの特徴、長期的に行動を持続させるためにゲーミフィケーションができることはあるか?」がありました。

岸本さんより回答として次のような話がありました。
ゲームとゲーミフィケーションは違うものである
・ゲームのゴールは面白いであり、ゲーミフィケーションにとって「面白い」は手段であり、ゴールは自発的にやり始める事である
・ゲームは究極に面白いので、ある時は没頭するけど必ず飽きるものである。
・なのでゲーミフィケーションでゲームの真似をしてしまうと、最終的にやらなくなってしまう

また後藤さんより回答として次のような話がありました。
・一時期ゲーミフィケーションで売れるという話題が流行ったが結果は出なかった
・原因は「欲求が足りていない」。
 魅力のない所にゲーミフィケーション要素を入れても意味はなく、どうして面白いかがデザインできれなければ空振りになる
まず「欲求」ありきで、ゲーミフィケーションという道具をどう上手く使うか
 それをうまくデザインしていくことができなければ習慣化は難しいと思われる

ゲームとゲーミフィケーションの違い、長く行動を持続させるためのデザインの難しさなど、とても興味深いポイントが沢山の回答でした。

吉川さんへの質問として、「組織行動(社会での行動)の中で、ゲーミフィケーションが向いている事は何か?」がありました。

回答として次のような話がありました。
・もっとも向いているのは「訓練
・もう一度やりたいと思わせることが良いゲームの条件。2度目は上手くなっているので有能感が充足されて内発的動機づけに繋がる
・そもそも給料が上がらない、パワハラばかりという環境が悪い所に何を入れてもモチベーションは上がらない
流行っているから入れ込むのではなく、本物の環境をちゃんとした会社に流しこむことでモチベーションアップができると思う
・中途半端なものを入れると全然楽しくない
・そこの見極めをする時期に来ていると思うが、日本では全然進んでいない

そもそもの環境にも及ぶ問題提起や、今あるゲーミフィケーションの評価・見極めの話が印象的でした。

参加者からのQ&A

最後に参加者からのQ&Aがあり、質問に対して3人の中から1〜2人が指名されて回答されました。

主な質問の内容
・どんな研修にもゲーミフィケーションは活用できるのか?
・ゲームの流行る流行らないの違いについて
・昔からある営業が成績をホワイトボードに書いて達成したら花をつけると、ゲーミフィケーションとの違いは何か?
・研修・訓練と実際の仕事の違い、仕事に応用する時の注意点など
・ゲーミフィケーションの「楽しさ」で苦痛やストレスは軽減できるのか?
・ゲーミフィケーションの効果に年齢は関係あるか?

回答とその中での話題
どんな分野にもゲーミフィケーションの使い方やデザインの仕方次第で使える可能性がある
・実際の流行りのゲームの手法はゲーミフィケーションとはまた別の話である
・ゲーミフィケーションとは昔からあったもの
研修で活用する際のポイントは抽象度を上げて作る。ワンテーマ、ワンゲームくらい
仕事に応用する時の注意点は承認欲求を必ず満たしてあげること。行動のトラッキングなどを見える化して、頑張りを認めてあげる
・楽しいとストレスを軽減することは同じだと思う。実例として苦痛に感じる作業には、それが出来たら自分にご褒美をあげるを行っている
・若い人ほどゲーミフィケーションは刺さると思う。デジタルゲームに限定する必要はない。刺さる度合いに違いはある。

ゲーミフィケーションについてさまざまな話題があり、導入や使い方に疑問を持っていた方にはだいぶヒントになる事が得られたのではないかと思います。

回答の中にあった話の中で一番印象的だったのは、次の言葉でした。
究極の話は自分の人生を神ゲーにすること。自分自身で人生をデザインできるようになると良い

自分の中でゲーミフィケーションがデザイン出来るようになると、なんでも能動的に切り開いていく事ができそうです。

まとめ

ゲームとは、その面白さとはの解説から、ゲーミフィケーションの要素、ゲームとの違い、そして多数の活用事例に、この分野における重要な議論と問題提起、具体的な活用や実践における疑問への回答とコツなど、多くのことを学び考えられる貴重な内容が詰まった研究会でした。

来年もまたその後どんな事例が出てきたのか?今回話題にあがったさまざまな疑問の検証など、ぜひとも続きの展開があると良いなと思いました。

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執筆:日本ゲーミフィケーション協会 こいふみ

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