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「勝手にゲーミフィケーション大賞2023」特別賞の「いばらき女将カード」開発秘話~地方から尖った企画を生み出す秘密とは~

こんにちは。「リアル世界を神ゲーに。」する日本ゲーミフィケーション協会代表賢者Lv98のきっしーです。
 
今回は「勝手にゲーミフィケーション2023」で特別賞を獲得した「いばらき女将(おかみ)カード」の裏側に迫るインタビューを行いました。今年度のゲーミフィケーション大賞・特別賞受賞作品の多くがデジタルの中、唯一アナログとして選ばれた、この尖ったサービスに注目してその誕生秘話をお聞きしてきました。
女将ポップコーン
https://www.ibarakiguide.jp/dc/special/dc_okami_popcorn.html

茨城県水戸市の茨城県庁を訪問

「どんな方が、この尖ったサービスを生み出したのか?」「地方でこの尖ったサービスを完成させるにはどんな苦労があったのか?」聞きたいことがいっぱいで、ワクワクしながら茨城県庁を訪問しました。

インタビューに応じてくださった 左から、茨城県デスティネーションキャンペーン推進室長の菊池克実さん(50)と小林直人さん(38)。

役割としては、「いばらき女将カード」の発案が菊池さん、商品化までの実行隊長が小林さんという枠割です。質問には、実行隊長の小林さんが代表してお答えいただきました。

― 特別賞受賞のコメントをお願いします。
 
小林さん:受賞者の「いばらき女将の会」さんに代わり、お礼申し上げます。
2023年10月~12月開催の茨城デスティネーションキャンペーン(DC)の企画の一つとして、「いばらき女将カード付マイクポップコーン」(200円)を発売し、約43,000袋を完売しました。SNS等でも大いに話題になり、実際に女将ポップコーンを購入するために茨城県を訪れた方も大勢いらっしゃいました。また女将カードをきっかけに宿泊施設を利用された方もいらっしゃいました。ありがとうございました。
 
※デスティネーションキャンペーン(DC)…JR6社(JR北海道、JR東日本、JR東海、JR西日本、JR四国、JR九州)と指定された自治体、地元の観光事業者などが共同で実施する国内最大級の観光キャンペーンのこと。主に3年間実施される。

― そもそも、ゲーミフィケーションとの関りは?
 
小林さん:残念ながら今回の受賞のご連絡を頂くまでは、ゲーミフィケーションについては知りませんでした。が、今回の「いばらき女将カード」の発案・制作に関して、インパクトのあるパワーワードを使い、お客さまに面白がって行動してもらうところは、ゲーミフィケーション的な発想と相通じるものだと思っています。

― サービス開発のきっかけは?
 
小林さん:「いばらき女将カード」の発案者は、上司の室長・菊池です。茨城の女将さんという「人」を観光資源とした、プロ野球チップスをつくれないかという、インパクトのあるぶっ飛んだ企画でしたので、初めて聞いたときは衝撃を受けました。
また、茨城県にはすばらしい景色や食があります。でもそれをウリとするなら他の都道府県にも同様にすばらしいものがあるし、有名な観光地のようなメジャーどころには到底かなわない。
さらに企画が立ち上がった2022年4月ごろは、まだまだコロナ渦でデジタルやバーチャルな企画も多かった。ならば逆を行って、ウチはあえて人(女将)を前面に押し出した、アナログな「いばらき女将カード」という尖った企画で行こうと。茨城県で観光業を営んでいる方々は、仕事に誇りを持っていて熱い方が多く、また茨城弁でお客様を優しく出迎える温かさもあり、人と人のコミュニケーションも茨城県の観光の魅力の一つです。
 
きっしー:すばらしく尖った企画ですが、この後の実際の制作・販売までが大変そうですね。
 
小林さん:第1段として「茨城プレDC」の企画として2022年10月~12月に、各旅館やホテルなどの宿泊施設で女将カードを無料配布しました。なので、2023年に発売した「いばらき女将カード付マイクポップコーン」は第2弾ということになります。
  
― 開発で苦労したことは?
 
小林さん:尖った企画だけに、最初は、一緒に作り上げる団体さん、企業さんへの企画プレゼンが大変でした。県庁の名前で話は聞いてくるのはありがたかったですが、「本気なんですか?」とか言われました。笑 でも、熱意を持って説明すると、「それほど本気なら、一緒にやりましょう!」と言って下さいました。
 
きっしー:今までにない新しいこと、面白いことを伝えるには、熱意が大事なんですね。
 
小林さん:販売店探しも苦労しました。第1段は、旅館ホテルでの無料配布だったのですが、第2段「いばらき女将カード付ポップコーン」は実際に販売するので、ホテル・旅館の売店のみならず、道の駅、駅の売店や小売店などを回って置いていただけるようにお願いして回りました。茨城県内でしか手に入らない仕組みとすることで、観光動機、観光消費を創出するよう貫きました。初経験なので大変でしたが、今思い出すと良い経験でした。
 

女将ポップコーン(200円)
ついている女将カードは28種類

 ― 制作で工夫したことは?

小林さん:室長の菊池の方針で、目指すゴールのカード販売までを、1年目は無料配布、2年目で販売と、2ステップを踏んだことです。1段をプロトタイプとすることで、2段ではより完成度を上げて商品化することができました。「いばらき女将カード」のデザインも、2段ではバトルカード風に大幅に変えてあります。女将の2つの必殺技(特技)とパラメータを見比べるのが楽しくて、自然な形で女将さんの人柄を知ることができ、また欲しくなるデザインにしました。
例えば、写真左側カードは、地域観光9820、女傑9850。右側カードは、社交性9950、子供好き9800など。
 
購入イメージも固めました。例えば茨城県に観光に来た方が、職場のお土産に女将ポップコーン200円×10コ(たった2000円)を買って帰る。職場で茨城観光の話をした後に、「こんな面白いお土産を見つけてきた」と同僚に配る。28種類のカード(1枚だけはレアカード)が入っていて、バトル風に出来るらしい、みんなで開けてみようと、ひと時茨城の話題で、盛り上がってくれる。
手にいれた「女将カード」がきっかけで、次の観光に茨城を選んでくれたり、もしもカードの女将の宿に泊まってくれたら、大成功です。
 
きっしー:ゲーミフィケーションのゴールは楽しいだけではなく、「行動変容」なのです。
 
小林さん:あと、茨城県産にこだわりました。カード制作会社もポップコーン会社も茨城の会社です。
 
― お客さまの反響は如何でしょうか?

 小林さん:ありがたい話で、茨城県でしか買えない女将ポップコーンが、DCキャンペーン期間が終了する前に、43,000袋すべて完売しました。SNSでもバズっていました。
 
きっしー:私も探したけれど、売切れで買えませんでした。
 
小林さん:また実際のホテルや旅館で、女将さんがサインを頼まれることもあったようで、もしも女将カードがきっかけで、茨城に来ていただいたのであれば、これほどうれしいことはありません。
また、私事ながら、菊池と共に、テレビ番組の再現ドラマにも登場させて頂きました。

【Mr. サンデー】茨城「女将カード」“魅力なし”からの起死回生【リアルストーリー
https://www.youtube.com/watch?v=WpFqc6_b2pA
 
 ― 今後予定しているゲーミフィケーション要素の入ったサービスはありますか?
 
小林さん:もちろんあります。今年の10月~12月に茨城アフターDCを開催しますので、新たな形で茨城の観光を楽しんでいただけるような、「想像超え いばらき」の企画も計画中ですので、ご期待ください。
 
※「想像超え いばらき」は、茨城DCのキャッチコピー。

賞状と共に、記念撮影

私のまとめ:「ゲーミフィケーションを取り入れたサービスを地方から生み出すには?

1.尖ったアイデアと、それを熱意をもって周りに説いて回る行動力。アイデアマンと、実行隊長のペアが必要。

2.まずプロト版を作る。その好評や反省を生かして、ブラッシュアップして完成版にする。

3.逆境の先のゴールには、周りの人たちのモチベーションをも上がる力があると信じる。持久力。

4.新しいこと、面白いことを率先する一番偉い人がいる(今回なら、茨城県知事)。

インタビューを終わって、県庁といえば真面目そうな人たちと勝手に思っていましたが、こんな面白い人たちもいて、茨城県に親近感を感じました。サンプルで頂いた女将カードの宿をチェックしながら、茨城旅行のアイデアを考えています。
 

制作チームの話を聞いて、「いばらき女将カード」を、我々のゲーミフィケーション6要素で再度分析してみました。
 
①  能動的な参加(楽しそう、やってみたい):女将のカードがポップコーンについているインパクトは楽しそう。全部で28種類も。あえて茨城県に行かないと買えない。欲しいと思わせる
 
②  達成可能な目標(それならできそう):一袋たったの200円。買うと、もれなくカードがついてくる
 
③  称賛の演出(ほめられる):お土産に買ってくると、他の人が面白がってくれる。レアカードには、特典もある
 
④即時フィードバック&ソーシャル要素(すぐに反応がある、仲間がいる):袋を開けるとすぐに女将カードが見れる。仲間とカードを見せ合うと楽しめる
 
➄成長の可視化(だんだんできるようになる):カードが段々集まっていくのが目に見える。コレクターなら28種類のコンプを目指す。
 
⑥独自性の歓迎(工夫してよい):あえてバトルカード風なので、自分たちで決めたオリジナルルールでバトルしてよい。もちろんしなくても良い
※思いついたアイデア。スマホでカードの宿を検索して、宿代が高い方が勝ち。アクセスが逆に悪い方が勝ち(秘湯の宿ルール)など。
 
(おわり)
 
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執筆:日本ゲーミフィケーション協会 代表賢者 きっしー(岸本 好弘)


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