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院庄林業のブランド力と競争力・下

前回から続く)院庄林業(株)は今年8月、「インノショウフォレストリーくめ工場」の竣工式を行った。同工場は、同社が全額出資した構造用集成材工場である。実は、院庄林業は、かつて化粧貼り造作用集成材(構造用集成材に化粧単板を貼ったもの)の大手メーカーであった。和室用の化粧柱としてかなりの量を販売していたという。しかし、住宅建築が和室主体から洋間主体へ移行し、化粧貼り集成材の需要は激減した。新たに稼働を始めた「インノショウフォレストリーくめ工場」は、造作用集成材が1つの時代を終えたことを象徴しているとも言える。ただし、この新工場は、化粧用集成材から集成管柱への転換にとどまらず、これからの国産材の方向性を探る上でいくつかの示唆を与えている。遠藤教授が豆原社長との「対論」で、この点に迫る。

基軸は「環境」と「国産材」、太陽光活用の新工場

 製材事業部を後にした豆原直行社長と遠藤教授は、隣接する「インノショウフォレストリーくめ工場」へと歩を進めた。

遠藤教授 
 以前、貴社の清水工場(集成材工場)を視察したことがあるが、新工場と合わせるとどれだけの生産量になるのか。

豆原社長
  新工場の総投資額は約22億円。集成材の生産量は来年以降5000㎥/月を計画している。清水工場と合わせて月間2万㎥の生産を目指す。新工場は3mの集成管柱、4mの集成土台をメインにし、清水工場は集成平角生産に特化させたい。

遠藤 
  集成材生産量という点からみると、新工場は驚くほど大規模という印象はない。新工場のコンセプトは何か。

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太陽光発電の説明をする豆原社長(右)

豆原 
  2つある。1つは「環境」。もう1つは「国産材利用」だ。「環境」を象徴しているのは中四国地区で最大規模の太陽光発電システムだ。シャープ製の太陽電池パネルを工場と副工場に4020枚敷き詰めた。670kwの電力供給ができる。

遠藤 
  木質バイオマス発電は考えなかったのか。

豆原 
  当面は外材ラミナのウエイトが高いが、将来的には国産材ラミナを原料としたい。そのために、木屑によるバイオマス活用は木材乾燥エネルギーに回し、発電は太陽光を利用することにした。

将来は地元産スギ、ヒノキで原料の過半を賄う

 豆原社長は、遠藤教授を新工場の中に案内した。欧州産、ロシア産のラミナがラインを流れている。ラミナは天然乾燥した後、人工乾燥される。乾燥処理されたラミナは「養生」させる。ラミナの応力を完全に抜くためだ。前号でも紹介したように、集成材生産工程でも、この「養生」は重視される。その後、ラミナを選別する。撥ね材はFJ(フィンガージョイント)ラミナになる。ラミナはプレスに送られる前に「一旦縁を切る」(前回参照)。品質のレベルアップを目指し、欠陥ラミナを排除するためだ。他の集成材工場には見られない独自の工程だ。

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プレスする前に「一旦縁を切られた」ラミナ。
ここで厳しいチェックが行われる。

遠藤 
  今は外材ラミナがメインだが、国産材を原料にする考えはないのか。

豆原 
  現在は輸入ラミナが3分の2を占めている。一部、ヒノキラミナを使っている。徐々に、地元のヒノキ、スギを増加させ過半までもっていきたい。

遠藤 
  さきほど拝見したラミナ乾燥機はオーストリア製だった。

豆原 
  あの乾燥機の特徴は、含水率の異なったラミナを入れても均一な含水率のラミナに仕上げることができる点だ。

遠藤 
  国産材のうちでも、特にスギは、品種や芯材・辺材で含水率が大きく異なる。これを意識してのことか。

豆原 
  そのとおりだ。

地域内で分業・協業、ラミナ価格は2万5千円/㎥メド

 豆原社長は一通りの説明を終えると、遠藤教授と本社事務所へ戻り、国産材利用に関するビジョンを率直に語り始めた。

豆原 
  以前、岩手県気仙川流域のスギ集成材工場、ラミナ製材工場、プレカット工場、製材工場をみたが、非常に完成度が高く感銘を受けた。あれは、国産材利用の1つのモデルだと思う。

遠藤 
  どういうことか。

豆原 
  今年度からスタートした林野庁の新規事業「新生産システム」(第291号参照)には、ある地域に製材加工の寡占状態を創出しようとする考え方がある。これが外材と競争するための1つの方向であることは認める。しかし、私は、地域の製材工場との分業、協業体制の確立も国産材利用の1つの方向だと思う。気仙がそれを示唆している。

遠藤 
  地域内分業で国産材をラミナに利用するということか。 

豆原 
  当面は、ヒノキを考えている。弊社のヒノキ6m通し柱「乾太郎」(前回参照)で説明しよう。ヒノキA材の特にいいものを「乾太郎」に製材する。その過程で出てくる背板は、野地板やラミナ用に回す。その際、合わせて地域の製材工場からもラミナを購入する。A材は製材用に、B・C材は周辺地域の製材工場と連携しながら集成材のラミナ用に利用する仕組みをつくりたい。

遠藤 
  小規模工場は資金力に乏しいから人工乾燥ができない。グリーン(未乾燥)ラミナを購入して、院庄林業で付加価値をつけるというわけか。そこで聞きたい。例えば、スギグリーンラミナをどの程度の値段で買う計画か。

豆原 
  地域が納得する価格として25,000円〜27,000円/㎥を視野に入れてシミュレーションをしているところだ。

◇    ◇

 欧州産ラミナの価格が全面高の様相となり、輸入コストも上昇している。集成材メーカーにとっては採算割れの危険性が出てくる。否応なく国産材にシフトせざるを得ないが、その方向は1つではない。豆原社長は、地元のヒノキやスギを活かし、さらに地元の製材工場と連携しながら、集成材を生産することを考えている。地域との共存を目指す大手企業の新しい生き方がここに窺える。
『林政ニュース』第305号(2006(平成18)年11月22日発行)より)
次回はこちらから。


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