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喫緊の課題だと思うこと

 2019年に池袋で起きた、高齢者のドライバーによる交通事故の、被害者のご遺族の男性のインタビューを、先日テレビで目にしました。

 見てから少し時間が経っていて、うろ覚えな部分もあるものの、高齢の母や親戚の大叔父の運転については、他人事ではないと日々私も悩んでいます。

 遺族の男性は、服役中の受刑者と初めて面会をし、『どのようなサービスがあれば、免許を返納していましたか』というような質問をしたところ、『病院へ行く足があれば、免許を返納していただろう』という答えだったそうです(細かいニュアンスは違うかも知れません。お許しを)。

 私の母は中卒で働き始め、16歳で軽自動車の免許を取りました。軽自動車免許がそのまま、普通自動車免許に移行するのを知っていながら、待てずに取りに行ったほどの人です。現在76歳で、病気を抱え、治療のため電車で1時間半ほどかけて手術をした大学病院へ通っています。我が家はふたつの駅が最寄りながら、普通に歩ける人でどちらも徒歩15~20分ほど。足腰が弱ってきた高齢者が、難なく歩ける距離ではありません。

 祖母の妹で、母にとって叔母にあたる人が一昨年亡くなりました。残された夫である大叔父は今年90歳になりますが、いまだちょこちょこ運転しているようです。

 大叔父は、足腰も達者で認知症もありません。年齢相応の物忘れのようなことはたまにはありますが、50代の私や夫が舌を巻くほど矍鑠かくしゃくとしています。大叔母が亡くなった半年後に、胸に大きな大動脈瘤が見つかり、大手術をし、経過観察のための定期受診をしています。

 その母と大叔父が、ふたりとも通院で出かけなければならない今日、激しい雨の予報を見て昨夜の内にタクシーを手配しようとしたところ、予約でいっぱいとのことで断られてしまいました。同じ境遇の方がたくさんいるのでしょう。仕方なく、まず母のルートを考えました。市で運営しているコミュニティバスの停留所は、母でも歩けるくらいの距離にあるため、時刻を調べました。最寄り駅へ向かうのではなく、隣りの始発駅へ行ってもらうことに。座れる可能性も増えます。乗り慣れていないので、先にICカードをタッチすること、終点まで乗ること、駅の西口に着くのでエレベーターもエスカレーターもあることなどを事前に説明し、バス停まで一緒に行き、乗るのを見届けて帰宅。


 ここまでの、タクシーが使えないなら次の手を考えて行動できるかは、個人の問題となってきますが、まず母には難しいです。スマホは持っていますが、お料理のレシピを検索することはできても、市のウェブサイトを開き、コミュニティバスの時刻表をみつけることが、まずできません。

 大叔父の受診は午後で「タクシーをまじこちゃん家に呼んで、僕の家まで来てくれる? それに乗って病院へ行こう」と言われていましたが、まず家までは来てもらえそうにありません。私もコミュニティバスで、最寄りではなく隣りの駅まで行き、恐らく並んでいるであろうタクシーの列に頃合いを見て並び、大叔父の自宅で本人を拾って、そのまま病院へ連れて行ってもらおう、となった時、あのインタビューのことを思い出しました。


 タクシーに限らず、バスの運転手さん、荷物を運ぶドライバーさんも、人手不足が深刻になっています。実際、人手不足によりバスの本数が減らされたり、路線じたいがなくなるところもあると聞きます。大叔父が定期的に受診している総合病院はシャトルバスの運行があります。実にありがたいことです。

 実際、帰りは病院へタクシーを呼ぼうとするも、無料の受話器を使って聞けば「20~30分ほどお待ちいただきます」とのことで、10分後に来る病院のシャトルバスに乗ることに。早く家に帰っていろいろ用を済ませたかった私は、一緒にタクシーに乗って帰ろうと言ってくれる大叔父に、「ごめんね、せっかくだけど遠回りになるから」とコミュニティバスで帰るふりをしました。電車の方が早いので、駅から歩くことに決めていました。

 大叔父は、それならと路線バスで帰って行きました。足元もなんら不安なく達者です。つくづく、目標にしたい90歳です。

 ライドシェアなる試みについての、ネットのアンケートに先日答えましたが、なんとも煮え切らない回答をしてしまい、モヤモヤしました。高齢者に限らず、妊産婦さん、小さい子どもを連れての外出、車いすや何かしらのハンディのある方の外出が、もっともっとラクに楽しめるものにならないでしょうか。

 出かけたい時に出かけられる。身体を大切にいたわり、健康を維持するために病院へ行く。そんな当たり前の生活が、誰でも我慢や気兼ねをせずにできる社会にするために、何をしたら良いか。これから考えて行くきっかけになった、今日のできごとでした。




#創作大賞2024 #エッセイ部門
#タクシー #強い雨 #通院 #介護

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