wake me up

2022.8.9




電車の中でフォールズを聴いていた。

車窓から、一軒の凹んだ形の屋根、バタフライの屋根が見えた。以前からその家は知っていたけれど、その屋根の形がバタフライだということに気付いたのは今日だった。昨日勉強していたときに眺めていた、あの屋根の形だった。よくある屋根のイメージは、真ん中に一番高さがあり、そこから家の外側に向かって低いように傾斜がついている、ような形だと思う。よくある屋根の絵も、真ん中が山折りになっている板みたいな感じだ。でも、昨日見たイラストのバタフライはその逆で、真ん中が谷折り、つまり家の両サイドが羽を広げた鳥みたいに高くなっている。「こんなの、雨が降ったら家の外側じゃなくて内側に溜まるなんて、合理的じゃないじゃないか」と考えていた。でも今日、その家の両端にある天井近くの窓が見えて、日光を高い位置から家の中に取り込めるのだと気付いた。利点があるから、その形(形式)は名前が付いて存在するんだって思った。


私は、あの物件に住んでみたい。


朝一番の日差しが、上から斜めに差し込んでくるなんて素敵だ。海の近くで。


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今日は早くあがれることになって、夕方に街に出た。十六時ごろ、夏の日差しが少し傾いている頃、街の木や外灯の影が白い壁に映っていて、風に揺れてお洒落だった。ティータイムをしている人達も。そこを颯爽と抜けて、ピアスを探しに出掛けた。

気に入ってたけど飽きてきていたピアスを、片方なくした。ずっと付けていない。耳に穴が空いたままだ。少し良いのを買って、もっと大切にして、なくさないように肌身離さず、みたいにして付けていたい。飽きがきたから少し扱いが雑になってしまって、だから失くしてしまったんだ。わたしが悪いけれど、次こそは大切にしたい。シンプルなピアス。

少し小さなビルに入って、エスカレーターで上に登りたどり着いた、服も植木鉢も食器も置いてある、雑貨店。ピアスもガラスのショーケースに並べられていた。透明なガラスのピアスに、シルバーやゴールドの飾り気のないピアス。どれも小さいのに、大切に育てられたみたいな雰囲気でそこにある。結局買わなかった。

安い数多めのピアスでもいいじゃないか。どうせ失くすんだし、とも考えた。ビルの外に出て、横断歩道を渡りながら。違う用事を済ませるために移動でしばらく歩き、赤信号で止まって、横断歩道の向こう側をぼーっと眺めた後、青信号になって勢いよく歩き出しながら、やっぱりあのピアス買いたい、と思った。シルバーよりゴールドのほうが、私は似合うんだろうけど、あの少し白みがかった柔らかい色のシルバーのピアスがほしいと思った。やさしさと冷たさを知っているような色の。わたしの特別にしたい。でも買う勇気がまだ持てないから、次の誕生日に、もしまだあったらこれにしよう、と思った。




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