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シケモク亭 灰皿。
2024年11月7日 00:06
木曜日。一週間で最も憂鬱な日。週末まであと一歩だがあと一歩を踏み出す力がどうしても残っていない。 目くるめく毎日が僕を襲い続け、連日の早起きに体はついていくが心が蝕まれていた。半年前から続いている不眠症の影響だった。 僕が生まれたのは小さな田舎の町だ。生活圏はママチャリでの移動で済んでしまうほど小さな町だ。数少ない娯楽はだだっ広い公園とスーパーの二階にある寂れたゲームセンターだけであった。セ
2024年8月10日 01:42
渋谷。栄枯盛衰の街。ジャケットを一枚羽織る季節に俺はその街にいた。時代の中心地であるそこは駅前があまりにも臭すぎる。ビル風一つ吹きやしない。サクラダファミリアよりも終わらなそうな工事の騒音を聞きながら街を小さくみせる大きな石の頭の前で人を待っていた。 「久しぶり。」 三つ揃った小さな頭を並べて二十四時間中継されている交差点を渡った。両脇に身長差を感じながら少し低い位置にあるその頭を見失わない
2024年3月2日 00:16
2023年4月15日、海辺を歩いていた。 工業地帯であるその人口の入江には太平洋から訪れたかの国のタンカーが停まっている。 地球における時間には時差と呼ばれるものがある。習った頃からいまいち感覚として理解できない。地球を割るように引かれた子午線たち。球体である地球に日が当たらない部分ができるのだから各国で時間が違うことは当然だが、実際に子午線をまたいだ時に何か変化があるかといわれるとそんなこ