見出し画像

経済に関するメモ(20) 【保険法(傷害疾病定額保険)】

本メモは経済の基礎的な内容に関するメモです。


4. 傷害疾病定額保険

4-1. 傷害保険
❶急激性の認められる範囲
…時間的な間隔があれば予知と回避が可能で傷害か疾病かの区別の困難を回避できる
→予防や回避が不可能であったか否かという面から急激性を判断
→アルコールの過度の摂取・嘔吐・死亡となった場合、急激性は認められるか?

❷診療行為中の医療過誤と偶然性及び免責条項との関係
…医療過誤を理由とする場合、これまでは偶然性を否定
→診療行為は被保険者の同意の下で偶然性を満たさず傷害事故には当たらない
→生保保険では疾病の診断・治療を目的としたものは除外する規定がある
損害保険では医療処置を免責とする条項がある
→患者の承諾をうけ実施した医療処置や合併症などは疾病に起因した傷害で免責
→医師の行為のみ特別扱いする理由はなく過失が認定されれば免責は認められないのでは
→裁判例の判断・蓄積が待たれる

❸偶然性の主張・立証責任
支払事由は「権利根拠規定」に関する事実の証明として請求側に立証責任
免責事由は「権利障害規定」に関するものとして保険者側に立証責任
→それぞれの「故意」との関係とは?
→傷害発生の偶然性の立証責任は請求側にあるのでは?
→消費者契約法に違反し無効ではないのか?
→今後この点で争われる可能性が高く注視する必要がある

❹外来性の要件としての「被保険者の身体の外部からの作用による事故」の意義
…吐物誤嚥により植物状態になる
→吐物誤嚥による窒息事故が該当
→上告審は外部からの作用を認める→対象物の範囲は検討する必要
生保では除外規定としているが障害状態があれば除外規定に該当するかが重要
損保では支払わない事由として規定を設けている→増加するのではないか
→病院や施設職員の対応は外部からの作用といえるかどうか
→職員の不作為があれば外来性は認められると判断した判例がある
→外部からの作用は吐物誤嚥による窒素事故そのものではないのか?
→急激性を考慮し「疾病による通常の経過とはいえない事故の発生」が判断基準になるか?
→被保険者に高齢者が増加する中で急激性と外来性の判断の検討が必要となる

❺外来性に関する主張・立証責任
…外部からの作用による事故か否か、発生が疾病によるか否かを外来性の枠組みで判断
→外部からの作用による事故か否かのみが注視されるべきで原因は疾病免責の可否を決定
する場合のみ考慮されるべき
→疾病免責を主張する保険者に立証責任を負わせるべきという抗弁説が主張される
→請求側は外部からの作用による事故と傷害の因果関係を立証すれば足りるとの判例

・風呂溺事故
…件数が多い
→請求側に外部からの作用による事故であることの主張立証が困難という問題、疾病免責を置いている損保では主張立証をどの程度行えばよいのか
→疾病の既往歴や素因だけでなく特定の疾病による特定の症状にために発生したことまで疾病免責を置いていない生保の傷害保険では除外規定をおいていない風呂溺事故
→置いていなければ保険金を支払うべきとした人身傷害補償特約を反映させるか?
❻事故による障害を直接の原因とする死亡の意義
…因果関係の存在は保険金請求権の具体化のための要件
→特に事故と死亡の間で認められる場合、直接の結果性を充足したと解釈
→死亡の原因として傷害のほかに疾病などの原因が併存する場合、傷害がほかの複数の原因と概ね同程度に死亡に影響を与えたと認められれば足りるとした判例がある

・自損事故により車外に避難する際にひかれて死亡
(ⅰ)運行に起因する事故がある
(ⅱ)車外に避難せざるを得ない
(ⅲ)避難行動が自然
(ⅳ)同事故と死亡の直接の原因となる障害が時間的・場所的に近接
という要件を満たせば事故と死亡に因果関係があるとした判例がある


4-2. 疾病保険
❶疾病保険の意義
疾病保険の分類はおおよそ次のようなものがある
(ⅰ)疾病により入院・治療を受けたことを給付事由とするもの
(ⅱ)疾病により一定の身体状態になったことを給付事由とするもの
(ⅲ)疾病により就業不能となったことを給付事由とするもの
(ⅳ)疾病により要介護状態となったことを給付事由とするもの
(ⅴ)特定の疾病に罹患したことを給付事由とするもの
(ⅵ)疾病による死亡を給付事由とするもの

❷がん保険の意義
…がん保険や三代疾病保険などでは被保険者が保険期間中にそれらに罹患し医師によって病理組織学的所見により診断確定されたときに保険金が支払われる
→対象は厚生省の統計に記載された基本分類コードに規定されるもの

❸がん保険における保険金の支払要件
…責任開始時後初めてがんに罹患し医師の病理組織学的所見により診断確定されたとき
→実務では身体の異常について自覚があるとき、異常を知り得るような症状が発現していたときなどの臨床医学的な意味での発病と解して運用している
→責任開始時前に罹患し診断確定されたがんは保険給付の対象から除外される

❹がん保険における待ち期間と90日不担保条項
…保険者の責任開始についての定め
→逆選択を防ぐため、疑いを持ちながら診断前に加入することを告知義務違反で排除することは困難
(ⅰ)責任開始日は保険期間の始期の属する日を含めて3ヶ月を経過した日の翌日
→保険者の責任開始時期を90日遅らせる
(ⅱ)責任開始日を含めて90日以内にがんと診断確定されれば保険金を支払わない
→不担保条項

❺契約成立前発病不担保条項とその趣旨
・告知義務制度(事前的)
…締結時に危険測定上重要な事項についての告知を求めて危険選択することで予定事故発生率を維持し当事者間の衡平を図る

・契約成立前発病不担保制度(事後的)
…締結後に危険選択を行うことにより告知義務制度によって果たせない危険の選択を補完
→免責条項ではないので立証責任は保険金請求者が負う

❻契約成立前発病不担保条項の適用要件
…適用要件は責任開始前に存在した疾病と責任開始後に高度障害状態等の原因となった疾病の間に同一性が認められること
→条件的因果関係があれば足りるとした
→不担保条項の適用範囲が広がりすぎて契約者の期待を損なう
→責任開始前の疾病が高度障害状態等の主な原因であることが必要であるとする

❼契約成立前発病不担保条項の問題点と改善の方向性
…責任開始前の発病が客観的に認められれば契約者等の主観的態様を問わない
→告知義務を履行しても保険給付を受け取れず期待が大きく損なわれる
→責任開始期から一定期間(通常は 2 年)を経過した後の疾病については責任開始前に罹患したものであっても保険給付を受けることができる
また生命保険は以下を不担保を主張しない
(ⅰ)受療歴、症状、検査異常がなく
(ⅱ)被保険者の身体に生じた異常について自覚がない
保険募集時に発病を保険者が知っていた場合には保険金を支払う義務を負う


4-3. 生命保険の高度障害条項
❶死亡保険金との優先関係
…高度障害保険金の受取人は被保険者のみ、被保険者の生活保障を図るため
支払ったときは支払事由が生じた時に遡って契約は消滅、高度障害状態になっていたものの請求せずに死亡した場合はどうか?
→死亡保険金の支払を優先

❷支払事由としての高度障害状態
(ⅰ)両目の視力を全く永久に失ったもの
(ⅱ)言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの
(ⅲ)中枢神経系・精神または臓器に著しい障害を残し終身介護を要するもの
(ⅳ)両腕とも手関節以上で失ったかまたは両腕の用を全く永久に失ったもの
(ⅴ)両脚とも足関節以上で失ったかまたは両脚の用を全く永久に失ったもの
(ⅵ)片腕を手関節以上で失い、片脚を足関節以上で失ったか用を全く永久に失ったもの
(ⅶ)片腕の用を全く永久に失い、片脚を足関節以上で失ったもの
→大数の法則により保険金総額と保険料が均衡を保つように設計・運用されるため
→生命保険契約の条項としてはじめから組み入れられていて、
高度障害給付に対応する分をほかの保険料と区別することなく一つの保険料とし、予定高度障害率の維持は不可欠の要請であるため範囲は限定せざるを得ない

❸信義則違反の効果
…高度障害保険金の支払を受けると契約が終了するため保険に入り続けるべきというアドバイスによって保険金請求を拒否
→支払要件を満たさない疾病
→信義則に反するとして保険金請求を認めた
→信義則違反を仮定しても高度障害保険金請求を認めることが正当化されるわけではなく、損害賠償請求の問題として処理されるべき

❹高度障害状態の該当時期
…要介護状態が治療の結果改善せずに残り終身永続することを意味
→請求権が発生するのは死亡と同等の稼働能力喪失が生じ継続する場合とするのが合理的、労災保険等と性質が異なるにせよ後遺障害の認定基準によることが不合理とはいえない
→定期保険特約の保険期間満了の時点において該当するかどうか

❺免責事由としての故意
(ⅰ)保険契約者の故意
(ⅱ)被保険者の故意
(ⅲ)被保険者の犯罪行為
(ⅳ)戦争その他の変乱

❻故意免責と自殺企図行為
…自殺を企てて一命をとりとめた場合に高度障害状態となる故意はどうか?
→自殺可能な自傷行為をしたのであれば未遂で高度障害状態になる可能性が高い
→故意免責を認めてよい、信義則に反するため全期間免責

❼故意免責に対する精神障害の影響
…精神障害中の動作により死亡した場合は自殺に含まれない、高度障害状態にも妥当
→労働基準局長通達では「精神障害の者が自殺を図った場合、正常の認識・行動が著しく阻害され、自殺を思いとどまる抑制力が著しく阻害された状態での自殺と推定し業務起因性が認められる」とした
→労災保険法では故意は業務外であるため保険金を支払うことは信義誠実の原則に反する

❽消滅時効の起算点
…被保険者が重篤な疾病になることが支払事由となった場合、
心神喪失となりながら禁治産宣告を受けないまま3年の経過によって時効となるのは酷
→禁治産宣告を受け後見人が権利を行使し得るようになって6ヶ月は時効が成立しない


傷害疾病定額保険の成立

4-4. 第66条(告知義務)
❶他の保険契約の告知義務
…生命保険会社の傷害疾病保険、一般に生命保険と同様の内容
→損害保険会社の傷害保険、引受拒絶の有無や他保険契約の有無などの道徳的危険事実
→一般の告知義務とは異なる性質と捉え保険危険事実に関する告知義務とは区別した規定を置き告知義務違反が危険の測定に関係のないものであれば解除の規定を適用しない
→他の保険契約の有無に関する告知義務違反については適用されないとされた
→保険法ではこのような特別な規定はなくなり短期間に集中して多数の保険契約が締結された場合、重大事由による解除の適用が争われる


4-5. 第67条(被保険者の同意)
❶被保険者同意を要しない場合
…傷害疾病定額保険については被保険者の生存中の事故に備えて締結されるのが通常、被保険者が保険金受取人となる場合モラルリスクや賭博保険の恐れが少ないことを踏まえて被保険者の同意は不要
→給付事由が傷害疾病による死亡のみである場合は必要
→保険法では被保険者が契約者以外の傷害疾病定額保険契約については被保険者の同意がある場合を除き要件を課すことなく契約者に解除してほしいと請求できる


4-6. 第68条(遡及保険)
❶本条各項の規定の趣旨と公序性、保険料の返還
…本条1項の趣旨は保険制度を悪用して少額の保険料で多額の保険金を受けることを防止
→公序性が認められ性質上は強行規定である2項の規定では特約で契約者に不利なものは無効
→片面的強行規定
→1項の規定により契約が無効となった場合、保険者は保険料を返還する義務を負わない
2項の規定により契約が無効となった場合、保険者は保険料を返還する義務を負う


4-7. 第69条(傷害疾病定額保険契約の締結時の書面交付)
❶傷害疾病定額保険契約の書面記載事項としての給付事由
…論点は40条と同様
→傷害疾病定額保険契約特有の論点とは?
→当事者以外の者を被保険者とする場合、同意がなければ契約は無効
給付事由の定め方は多様であり傷害疾病自体が給付事由とはならない
→給付事由と傷害疾病を別に観念することができ両者を区別して法を構築

❷傷害疾病定額保険契約が公序良俗違反により無効となる場合
…保険契約の累積により保険金額合計が著しく高額となる、損害保険について公序良俗違反とされる場合と類似する事情がある場合
→保険金取得目的で締結されたものとし公序良俗違反として無効とされることがある
→詐欺により保険契約を締結した場合、保険契約を無効とし保険料は払い戻さない
→付随的契約である入院給付金を不正に取得しようと契約を締結し不必要な入院をする
→公序良俗違反かどうかを検討するまでもなく詐欺無効約款に基づき契約は無効


4-8. 第70条(強行規定)
❶66 条の片面的強行規定性
…本条の論点は7条と同様
→傷害疾病定額保険契約の告知義務に関する本条の論点は41条と同様
→被保険者について責任開始期以後に発生した傷害疾病による契約前の給付に告知義務の規定が及ぶか否か?
→保険者の客観的な保障範囲を画する規定として有効
→誠実に契約に臨む契約者の期待が告知義務規定によれば相当に保護されている
→期待を裏切る形の契約前発病不担保条項の適用は信義則の観点から抑制的に考えるべき


傷害疾病定額保険の効力

4-9. 第71条(第三者のためにする傷害疾病定額保険契約)


4-10. 第72条(保険金受取人の変更)


4-11. 第73条(遺言による保険金受取人の変更)


4-12. 第74条(保険金受取人の変更についての被保険者の同意)


4-13. 第75条(保険金受取人の死亡)
❶保険金受取人の相続人が複数いた場合の権利取得割合
…本条では明示はないが保険法制定前では権利割合は相続分の割合とした判例がある
→相続人という指定には相続分の割合により保険金を取得させる趣旨も含まれるとした
→実務では法定相続人を死亡保険金受取人とした場合、法定相続分の割合で支払う
→死亡保険金受取人が先に死亡しその法定相続人を受取人とする場合、均等に支払う


4-14. 第76条(保険給付請求権の譲渡等についての被保険者の同意)


4-15. 第77条(危険の減少)
❶危険が著しく減少したときの意義
…保険料の変更をもたらす危険減少を意味する、詳しくは48 条❶

❷危険減少の織り込み済みの問題と保険契約者の権利行使
…契約締結時に危険減少を予測して保険料が設定されている場合は減額できない、詳しくは 48 条❷

❸保険料減額請求権の性質と減額時期
…保険料減額請求権は形成権であり契約者が保険者に対して減額請求権を行使すればその時点において保険料が減額されるという解釈も48条とは異ならない
→損害保険、傷害保険普通約款では職業や職務の変更の事実がある場合、保険料率を変更が必要であれば日割り計算した保険料を返還する旨が規定されている
→保険契約者に有利に変更されている

❹就業中の危険保障対象外特約等、実質的な危険減少の規律の解釈
…テストライダーやプロレスラーなど危険な職業に従事する者の傷害保険を引き受けるにあたり特別保険料の徴収という形をとらず免責特約を利用することができる
→その被保険者が安全な職業に転職した場合、危険の著しい減少が実質的に調整される
→特定部位不担保法という代替手段で危険の減少でも片面的強行規定の趣旨が及びうる


4-16. 第78条(強行規定)
❶71条の片面的強行規定性
…第三者のためにする傷害疾病定額保険契約における保険金請求権の発生について受取人の意思表示を必要とする特約は受取人に不利な特約として無効である
→保険金請求権は条件付きではあるが受取人は指定された時点で当然に取得
→権利発生時期を指定時より後の時点とする特約も受取人に不利な特約として無効

❷77条の片面的強行規定性
…危険が著しく減少したときでも保険料の減額請求権を認めない特約、減額請求の範囲を保険法よりも制限する特約は契約者に不利な特約として無効
77条論点❹


傷害疾病定額保険の保険給付

4-17. 第79条(給付事由発生の通知)
❶本条特有の事項
…契約で定めた一定額が支払われる、生保
→傷害疾病定額保険契約は保険事故が発生するか否か及びその結果が不確定、損保
→本条特有の事項が存在
(ⅰ)通知事項は給付事由が発生したこと
…傷害や疾病に起因する入院・死亡・高度障害状態は期間満了後にも給付事由となる
(ⅱ)通知義務者は保険契約者、被保険者、保険金受取人
…通知を行い得る場合があるため→相続人も含めるべきという指摘もある
→14条、35条、本条のバランスを図るという理由のみで指摘するには疑問が生じる

❷通知義務違反の効果をめぐる保険約款の有効性
…傷害疾病定額保険契約では傷害や疾病によって生じた結果により保険給付内容が異なる
→迅速な調査の必要性と保険者に損害が生じる可能性
→保険者が損害を被ったことを証明したときは債務不履行に基づく損害賠償義務が発生
→契約者の利益保護の観点から違反の効果として免責とするには問題があるとも思われる


4-18. 第80条(保険者の免責)
❶故意の対象事実をめぐる解釈問題
…傷害と死亡では被害の重大性において質的な違いがあり損害賠償責任の範囲に差異
→傷害の故意しかなかったのに予期しなかった死亡について免責が及ぶことはない
→故意の対象となる事実を事故ではなく損害とみているのではないか?
→因果関係の有無で判断されるべきではないのか?
→自殺を図って高度障害状態となった場合、故意について肯定的

❷保険契約者による免責事由と保険金受取人による免責事由との関係
…給付事由を発生させた受取人以外受取人がいれば免責の対象外
→その受取人が契約者を兼ねていれば免責の効果は及ぶ
(ⅰ)契約者は受取人をいつでも変更でき受取人の地位は契約者との間で劣後関係
(ⅱ)契約者の意思表示の瑕疵による効力否定などと他の制度との整合性が必要

❸傷害保険契約の偶然性の立証責任
…保険法では解釈に委ねることとするが最高裁の判決の立場が維持されるとする見解では傷害保険の保険事故の偶然性を保険金請求者側に課す約款条項を設けても消費者契約法違反とはならない

❹精神的衝動による障害を傷害から除く免責条項の意義
…傷、日射・精神障害は①突発的でない②外部からの作用でないとして含めない
→事故による精神的ショックは肉体的疾病を引き起こす場合には身体傷害と認められる
→因果関係が必要
(ⅰ)影響は属性によるため客観的に把握することが困難
(ⅱ)一律の保険料計算でてん補対象から除外するもの
→一定の合理性と契約自由の原則に基づき給付範囲を決めれるため契約者が不利ではない

❺酒気帯び免責条項をめぐる解釈問題
…保険者免責とするのが一般的、要件は保険者ごとに異なる
(ⅰ)酒気帯びの影響により正常な運転ができない恐れのある状態を免責対象とする
(ⅱ)道路交通法の処罰対象となる酒気帯び運転を免責対象とする
(ⅲ)道路交通法に定める酒気帯び運転やこれに相当する状態での運転を免責対象とする

❻麻薬等運転免責の範囲
…麻薬・大麻・アヘン・覚醒剤・シンナー等に影響された状態での運転事故は免責とする

❼約款上の犯罪行為の免責条項の有効性
…決闘・その他の犯罪・死刑による死亡は免責事由とされていた
→安心して犯罪行為に走ることを防止する、保険の倫理性や公序良俗違反となる
→保険法では個々の契約の定めに委ねれば足りるため削除された


4-19. 第81条(保険給付の履行期)
❶保険金請求者破産後の保険金請求権の行使
…保険金請求権発生後に保険金請求者が破産した場合、保険金請求権は破産財団に帰属
→保険金請求権者が破産した後の保険金請求権発生はどうか?
→契約が破産前に成立していれば保険金請求権者は事故発生を停止条件とする保険金請求権を有するとして将来の請求権に該当し破産財団に属するという見解が有力
→事故発生前の保険金請求権は財産的価値が小さいため債権者が責任財産として期待すべきでなく破産財団に属さないという見解もある


4-20. 第82条(強行規定)


傷害疾病定額保険の終了

4-21. 第83条(保険契約者による解除)


4-22. 第84条(告知義務違反による解除)


4-23. 第85条(危険増加による解除)


4-24. 第86条(重大事由による解除)


4-25. 第87条(被保険者による解除請求)
❶契約解除ができる場合
…保険金受取人が被保険者である場合は被保険者に同意なく有効に契約締結ができる
→被保険者は理由を問わず契約者に対し契約解除の意思表示を行うことを請求できる
→被保険者から請求があった場合、契約者は被保険者の同意があったとして争う
→同意の不存在について争いがない場合、契約者は解除の意思表示をしなければならない
→被保険者が契約者に対して解除請求をした時点で契約が消滅するという解釈の可能性

❷一部解除請求の可否
…傷害疾病定額保険契約では生存給付と死亡給付等複数の保険給付が存在
→保険会社において一部の解除の取り扱いが実務的に可能という前提で認める見解もある


4-26. 第88条(解除の効力)
❶重大事由解除の場合において保険者免責の遡及する時期
…保険法では告知義務等と同じく解除の効力は将来効を有する
→解除に伴い重大事由の発生時以後に発生した保険事故については免責となる

・1 号解除事由
…疾病保険の被保険者が給付事由に該当しないが給付金を目的に入院

・2号解除事由
…被保険者が疾病で死亡したが災害死亡であると偽装

・3号解除事由
…疑わしい入院を繰り返し入院を対象とする保険が著しく累積


4-27. 第89条(契約当事者以外の者による解除の効力等)
❶特約たる傷害疾病定額保険契約の保険金受取人による介入権の行使
…主契約について解除権を行使したときに特約の受取人が介入権を行使できるか?
(ⅰ)主契約が生存保険
…解除の効力は即時に発生→介入権行使の余地なし

(ⅱ)主契約が死亡保険
…介入権を行使しない限り特約も消滅、解除権者も解約返戻金を受け取れればよい
→解約返戻金相当額を支払って介入権を行使できる
→実務では特約のみを解除する場合を想定
→主契約まで介入権を行使することを認めたわけではない


4-28. 第90条


4-29. 第91条
❶当該保険給付を行うことにより傷害疾病定額保険契約が終了することとなるときの意義
…傷害疾病定額保険契約では給付事由が発生しても被保険者が生存する限り終了しない
→契約が継続する場合、解除権者は解約返戻金の受け取れ利益に配慮する必要はない
→保険給付を行うことにより契約が終了しない場合でも給付事由の発生により解除権者に不利益が生じる場合は本条1項が適用される


4-30. 第92条(保険料積立の払戻し)


4-31. 第93条(保険料の返還の制限)


4-32. 第94条(強行規定)


5. 雑則

5-1. 第95条(消滅時効)
❶保険金支払義務の履行期と保険金請求権の消滅時効の起算時との関係
・猶予期間経過時説
…猶予期間経過時までは保険金請求権者が履行を請求しても保険者に強制できない
(ⅰ)猶予期間経過時から権利行使ができることとなり時効時間が起算される
(ⅱ)請求がなければ a)事故発生時 b)請求可能な時から猶予期間経過時が起算点となる
(ⅲ)請求があってもなくても起算点を共通とすべきで事故発生時から猶予期間経過時まで

・保険事故発生時説
…保険事故が発生すれば請求をすることはできる
→保険事故発生日の翌日
→判例は猶予期間経過時説を維持している

❷行使困難な事情がある場合の保険金請求権の消滅時効期間の起算点
…法的可能性説と現実的期待可能性説との対立と未確認のままの時間経過が交錯
→請求権発生を請求権者が知らない、確認できないまま時間が経過することがあり得る

・行方不明から遺体発見
支払事由発生時から権利行使が現実に期待できないような事情がある場合は、期待できるようになった時以降において消滅時効が進行するとした
→遺体が発見されるまでの間は消滅時効は進行しない
→現実的期待可能性説に傾いてみえるが法的可能性説の例外を認めるわけではない

❸消滅時効期間の起算時についての特約の可否
…約款で起算点を定めていることの法的意味とは?
→権利行使することに困難な事情があれば時効の完成を遅らせ請求権者の利益を保護
→起算点を約款のように一律で定め起算点を早くしている特約の効力が判例により有効とされるとは考え難い

❹本条に明示されていない保険契約者等の有する権利についての消滅時効期間
…関係者が契約に基づき有する権利は様々である(配当請求権など)
→本条の適用がないということであれば商法の 5 年の消滅時効期間が適用されるだろう
→保険料返還請求権との親近性により類推適用すべきと考えられる


5-2. 第96条(保険者の破産)
❶保険会社の破綻処理制度の選択
・保険業法による破産処理
…一般債権者の債権を削減できず公平性を欠く
→更生特例法の制定で会社更生手続きにより行われるのが原則で別の会社に契約を移転
→損害保険会社では契約者が別の会社と再契約することが容易
→契約が急激に減少して企業価値が低下し別の会社への移転が困難
→損害保険会社の保険契約者保護機構では破綻後3ヶ月内に発生した事故は債権額の100%まで補償しその後の援助を80%と低くして再加入を促進している


おわりに

ここまでご覧いただき、ありがとうございます。
修正すべき点やご意見などあればXでお声をいただければと思います。
修正の際は、番号を指定して、フォーマットをなんとなく合わせていただけると助かります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?