侍がタイムスリップして斬られ役?!映画館で笑いが起こる映画現る!
私は小さい頃から祖父母と一緒に時代劇を見るのが好きだった。一番好きだった俳優さんは里見浩太朗さんで、水戸黄門や長七郎江戸日記などを祖母とコタツに入りながら見ていたものだ。
特に好きだったのは、年末特番で放送していた『忠臣蔵』で、今思うとものすごい豪華キャストで作られた作品で、忠臣蔵から歴史が好きになったと言ってもいいほどである。セリフを誦じられるほど毎日忠臣蔵を見ているので、母が「また見てるの?」と呆れていた。
今でも大河ドラマは結構見ているけど、今はもうお決まりのセリフやオチがついた時代劇は消滅してしまったように思う。
ある日YouTubeを見ていたら、作家の中山七里先生が「今年一番面白い邦画」として侍タイムスリッパーという作品を激推ししていた。売れっ子作家が面白いと言っているのだから、きっと面白いに違いない。
残念ながら上映している映画館が近くになく、なかなか見ることができなかった。しかし先週の日曜日、ついに近くのシネコンで上映し始め、急いで予約して映画館へ。
なんだろうな、久しぶりに大勢の人が声を出して笑っている映画を見たという感じ。(しかも日本の映画館で!)
そして、本当に本当によく出来た脚本だなと思った。
タイムスリップを題材にした映画やドラマはたくさんあるし、最終的に元の時代に戻っていく話が多い中、この映画では自分がいた時代にはもう戻れないというところがミソ。そのタイムスリッパーが幕末の武士であり、現代で自分ができることといったら、時代劇の斬られ役。
本物の武士なので剣さばきは堂に行ったもので、どんどん斬られ役として頭角を表していくのもとても面白かった。
時代劇では本物の刀を使うことはもちろんないのだけれど、本物の武士だからこそ真剣の重量感をいかに表現するかにこだわっていて、私としてはほほぉー!と感心した。きっと本物の斬られ役の方たちもそういうことを考えながらお仕事をされているのかもしれない。
主役の武士は会津藩、仇の武士は長州藩。それぞれ同じ場所に違う時代にタイムスリップしてくるのだが、幕末では仇同士であったとしても、それぞれ信じた道の先に現代の日本があるわけで。
ショートケーキを生まれて初めて食べて、「日の本はこんなに美味しいものを皆が食べられるようになったのか?!」と主人公が感激している場面は、なんだかジーンとしてしまった。
武士の所作が美しく、武士ってなんかすごいなぁと感じたり、時代劇では毎週バッサバッサと人を斬っていくけど、本物の刀で人を殺めるということはどれほどの苦しみなのかということも考えさせられた(人を殺して平気な人なんて多分いないと思うから。)
何より面白かったのは、主人公の武士がタイムスリップしたきたことを誰も怪しむことなく、スーッと京都の撮影所に溶け込んでいくところ!武士に入り込んでいる役者さんという感じで周囲から見られていて、誰も疑わないところが笑えた。
こちらの記事を読むと、京都の撮影所の協力があってこその映画でもあったようだし、たくさんの人の熱意と時代劇への愛情が伝わってきた。映画の中に誰も悪い人が出てこないし、最後の最後は圧巻のシーンなので興味のある方はぜひ見に行ってほしい。
すごいお金をかけて大スターが出ていても見たいと思わない映画もたくさんある邦画業界で、低予算でもアイディアとそれに賛同する人たちの熱意と工夫でこんなにも面白い映画ができるのだ。
水野晴郎さん的に言えば、
「映画って本当にいいもんですね!」ということ。まさにエンターテイメントな映画だ。
日本アカデミー賞で何かしらの賞がもらえるといいなー、いやむしろあげたい!これが賞をとらなきゃ嘘でしょ?って思う。
いい映画に出逢うと幸せな気持ちになる。
久しぶりにまた映画館で見たいと思わせてくれた邦画だった。