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休むならオムライスのように。

カプセルトイと僕ら

ガチャポンとつかず離れずの関係で生きてきた。

毎回おもしろそうな新作をチェックするわけではないが、通りすがって「おもしろそうだな」「ほしいな」と思ったら時々回す。

最近はショッピングモールの中に、ガチャポンが集まったテナントが入っているのも楽しくていい。

小学生の頃行った秋葉原のガチャガチャの森的なところで、「欲しいな」と思ったキャプテンハーロックのフィギュアが1発で当たったのもうれしかった。

日本全体に蔓延する不況という病のあおりか、最近のガチャポンは価格が上昇しがちだと感じる。
確かに景品の質は上がっているが、同時に値段も高い。

ガチャポンはいつしか、僕たちの間で「時たま、本当に時たま回したくなる贅沢な遊び」になっていた。

「おやすみレストラン」

そんな僕たちが久々に出会ってしまった魅力的な景品。
それこそが「おやすみレストラン」である。

くまたちの絶妙にかわいらしい顔の造形から、帰宅後に観た元ネタのアニメ動画まで、子ども心と蒐集欲をくすぐる「かわいい!」の権化だと思う。

目に留めたのは亜麻なのに、いつの間にか直まで「欲しい!」と思うようになっていた。オムライスがいいな。


そういうわけでちょうど財布に400円入っていた日、満を持して硬貨を投入。

取り出し口に現れた、存外小さいカプセルの中には、うれしいことに欲しかったオムライスくまが眠っていた。

嬉々として連れて帰り、机の見えやすいところに飾った。
実際に手にしてみるとその小ささ、かわいさはもちろん、ケチャップ部分の手触りが大変好みでとてもうれしい。

オムライスくまは休み方のお手本

オムライスくまを眺めるうちに気づいたことがある。

このくまは僕たちにとって手本となるような眠り方をしているのだ。

布団を耳まで被ってあたたまり、安心しきったようにぐっすり眠っている。

「感覚過敏による疲労から回復するために、五感を遮断して寝ましょう」と書いていたのは、確か武田友紀先生と借金玉さんだったと記憶している。

過敏な五感を休ませるために、アイマスク、耳栓等を用意し、お気に入りの手触りの良い毛布に全身くるまる勢いで寝ろ――。
ニュアンスになるが、そんな感じのことが書かれていた。

オムライスくまはまさにそれを体現していると思う。

耳を覆って聴覚を休ませているし、おそらく手触りの良いだろうたまごの毛布にほとんど全身くるまっている。
これは僕たちにとって理想的な休息スタイルの手本だ。


僕たちは自分の疲労や休息の必要性を過小評価してしまう癖がある。

もう動けなくなるまで頑張り続けてしまったり、「五感を遮断して休むなんて、自分たちには大袈裟すぎる」と思えて実践に踏み切れなかったり。

本当は大袈裟なくらいやる必要があると経験的に知っているし、武田先生も書いておられるのだけれど。


オムライスくまが机の上で理想的な休み方を見せつづけてくれているお陰で、僕たちの中で心理的ハードルが下がってきた。

「僕たちもこれくらい包まれて休んで、良いんじゃないか」
「あんまり大袈裟じゃないんじゃないか(見慣れてきたし)」

と思えるようになったのだ。


さらには
「なんか疲れて来たな、休むか……。オムライスくまも休んでるし」
のように、これまでより早い段階(回復しやすい段階)で休む口実にもなってくれている。

「休み」のタイムキーパー

「休む」という視覚的な手本があること。
フィギュアなので1日中おやすみスタイルでいること。
5感を守るようなスタイルで休んでいること。

これらの点において、オムライスくまが僕たちの家に来てくれて本当によかった。

僕たちは視覚優位なようで、目で見て理解できる手本が視界に入ることは重要だし、
頑張っている他人と比べて「まだ疲れるには早いかな、あの人はまだ頑張っているのに」と思う必要もない。
疲れて感覚がより鋭くなっている時は、全力で5感を守って休みに行っていいと知らせてくれる。


作業に集中できている時、まだまだ頑張れる時は、なぜか視界にオムライスくまは入らない。

オムライスくまが気になりはじめるのは、集中力が切れて来た時や無自覚に疲れている時。
つまり休むべき時だ。

かわいさに惹かれて出した400円が、僕たちを少し健康で建設的な行動に向かいやすくしてくれている。

机の端で眠るオムライスに励まされながら、自分たちのペースで頑張っていくことを覚えられそうだと思った。



直也

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