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同じ趣味を持つ人が僕たちの世界にいなかった

「自分の好きなんものが世の中に知られてないみたいな前提で話すのやめたほうがいいよ」

友人から投げかけられた言葉は僕たちの耳に痛かったが、しかし、大事なことを言ってくれていると思った。


僕たちは他者と趣味を共有するのが苦手だ。

相手も同じコンテンツを好きと知るや、僕たちの感じた魅力をまくしたてて引かせてしまったり、相手はそれについて知らない体でおずおずと話題を出したりしてしまう。

話題に対する距離感を上手くはかることができず、近すぎるか遠すぎるところに身を置いてしまいがちだ。


きっと過去の経験に由来しているのだと思う。


僕たちの好きなものは、なぜか往々にして世界どストライクより少し上か下のコンテンツで、年齢によって分けられがちな学校の中では話題を共有できる人を見つけられなかった。

セーラームーン、犬夜叉、FF10、キングダムハーツ、ハム太郎、プリキュア(初代から5くらいまで)

クラスの中では誰も知らなかったり、「ちょっと遊んだゲームだけどよく覚えてない」くらいの反応だったり「そんなの幼稚園の子が見るアニメだよ、ダサい」と馬鹿にされたりした。

唯一、ハリーポッターの呪文「エクスペクト・パトローナム」が一時期クラスで流行したが、僕が麻痺の呪文か何かを返すと「???」という顔をされて以来、やはりうまく関わることができなかった。中学生の頃は一人で殺生丸の二次創作を書いていた(夢小説ではない)。

高校生になってTwitterを始めると、ようやくファンの人の界隈があることを知った。犬夜叉も、ハリポタも、FFもキングダムハーツも……なんにでもファンの人がいて、ファン同士の知り合いがいて、絵や文章を上げあっては交流している。

僕はそれらの人たちをフォローした……が、積極的に関わりに行ったことはどこの界隈にも、あまりない。
もう関わり方が分からなくなって久しく、他人と趣味を共有したいと思うと「しらっ」とした気分になってしまうようになっていたからだ。


そもそも世の中にいるのは自分と、無数の他者。
人間の数だけ視点と価値観の違いがあるわけで、同じテンションでコンテンツを楽しめる人なんてどこにも存在していないのではないか……? 限りなくツボが近い人を見つけたとしても、どこまでも視点の共有ができる人間など存在しないのではないか……。
などと穿った考え方をしてしまったりもする。


とはいえ最近、この遠近極端な距離感では困るな、と思う場面も増えてきた。
冒頭に挙げた友人の助言は半年以上前にもらったものだが、僕の課題を見抜いて出た言葉なのだろうと思う。付き合いの長い友人とは有り難いものだ。

言われた当初、その場では自衛の癖が出て言い訳がましいことを口にしてしまった(申し訳なかった)。

だが今後距離感の問題が発生するたびに、距離感をはかるのが苦手だということをいちいち人に説明していくのか? 

それはあまり現実的ではないし、共有の感覚が発生しづらくて寂しいものだとも思う。


他の人は共通のコンテンツが好きな人を見つけた時、どうやって距離を縮めているのだろう? これからなんとかして習得していきたいなと思っている。




文責:直也

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