家に犬がいる!【僕とパーツの人生紀行】
主は犬を飼っている。ちょっと人間くさいトイ・プードルだ。
実は僕は少し前まで、家に犬がいることを知らなかった。
トラウマによって断片化された「パーツ」たちは、トラウマを受けた時のまま、意識内での時間が止まっているという。
だからこそトラウマの記憶が体と心に残り続け、鮮烈なフラッシュバックが起きるのだ。(本の中ではもっと脳神経科学的なアプローチからも、フラッシュバックの理由について解説されていた)
実際、著者の臨床経験を記すエピソードの中でも、トラウマを抱えたままの幼少期の自分に、引っ越した後の新しい家を紹介してあげるという場面が登場している。
幼少期のパーツは自分がもう結婚して子どもまでいることに驚き、あたたかな新しい家に感動し、「もう大丈夫なんだ」と安心するのだ。
僕たちにもこれと同じことが起きたと言えるだろう。
つまり、僕たちの時間が止まったのは犬を飼いはじめる前なので、「犬を飼っている」ことを知っているのは主と多少のパーツのみで、犬の存在を知らないパーツたちの方が多かったのだ。
主がフラッシュバックに悩まされ、他のパーツたちと「ブレンド化」している時、主はときどき犬の存在を忘れる。
視界には入っても自分の飼い犬とは思えず、少し冷静になってから犬の世話をすることを思い出したりしていた。(ご飯を欠かしたり、虐待をしたわけではないのでそこは誤解しないでほしい)
僕たちは先日、改めて犬を紹介され、ようやく「家に犬がいる」ことを理解できるようになった。
今では本のおかげで非ブレンド化することも覚えたし、自意識のすべての面で「家に犬がいる」ことを知っている。
僕も犬猫の類は好きだ。
犬がいることで、僕が「なにもしたくない」時の過ごし方のレパートリーも増えた。
つまり、漫然と寝転がる・本を読むことに加えて、ぼんやり犬を撫でまわすことだ。犬もまんざらではなさそうに見える。
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