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孫悟空の輪っか

昭和時代のTVドラマ『西遊記』
あれよりも優れたキャスティングがあるだろうか。
猿・豚・河童、役者が演じているなんて、ましてや特殊メイクなんて幼い子どもの私には思いも寄らない。
ああいう種類の人がいるのだと信じて疑わなかった。

気高く心美しい三蔵法師を演じた夏目雅子さんは、もはや伝説!
このドラマ、きっと多くの人にとっても印象深いに違いない。以後、“三蔵法師を演じるのはその時代の美人といわれる女優さん”…という暗黙のルールができているくらいだから。



検索すると、放送は1978年〜の大河ドラマの裏番組の枠。えっっ、そんなに古いの!?と驚いた。
ということは、私が見ていたのは夕方の時間帯の再放送だったのだ。


「昔は良かった」なんて口にするのは若くない証拠といわれそうだけれど、『西遊記』の面白さは、ただのノスタルジーだけではないと思う。
先に書いた絶妙なキャスティングはもちろん、主題歌の「Monkey Magic」も、エンディングの「ガンダーラ」も、当時はまだ身近ではなかった異国感が漂う名曲だった。


特に物語を見終わってからの「ガンダーラ」は、どんな夢も叶う国のことを歌っているのに、どういうわけか哀しいような気分を誘う。感傷的な旅などしたこともない子どもだというのに。
今聴いてみても、旅の途中の出会いと別れを感じさせ、せつないような気分になる。

とにかく、幼い私はすっかりエキゾチックムードに魅せられてしまい、知らない国への旅の空想ばかりしていた。
『西遊記』と『兼高かおる世界の旅』、そして今年番組終了した『世界ふしぎ発見!』、これらの番組にどれだけ影響を受けただろう…!



心の奥深くに刷り込まれてしまった『西遊記』は、今もひょっこり表層に顔を出すことがある。

いでよ!筋斗雲!?

意識していなくとも、自由な手の動きにまかせて作ったものがまるであの雲のよう…
インプットなくしてアウトプットはあり得ないのだな、ということがよくわかる。


あの金の輪っかの名前は…


ところで、孫悟空が悪さをすると三蔵法師がそれを戒めるために経を唱えて頭の輪っかがぎりぎりと締まる、おなじみのシーン。
あの輪っかの名を、緊箍児(きんこじ)という。


2010年か それより少し前頃、このような金製の輪がパキスタン北西部の遺跡で発掘されたという。
かつてガンダーラと呼ばれていた地域での発見ということもあり、まさに孫悟空の輪っか!

実は、この画像はたまたまフォルダに保存していたもので、ソースを貼り付けようとしたところまったく検索に上がってこなくなっていた。
↓このようなブログ記事があったが、その引用元もすでにネットから削除されている。


この輪っか、頭につけるには小さすぎるということで、避妊具ではないかとの説があるらしい。

煩悩に負けてしまうと、ぎりぎりと締めつけられて痛い!
(男性ならではの痛み!)
たしかに「禁欲」ということならば、サイズ感と使用目的が合っていて、わからないでもない。
指輪のように一周繋がった輪でなく、一部を開けてフリーサイズにしてあるのも、大事な部位が千切れてしまわないように…との理由だろうか。


そうだとしても、唐草模様のようにくるりと巻いたデザインにわざわざ作られているところや、素材も貴重な金(どの程度の純度かは不明)であることに、実用品以上の役割があったのではないかと想像している。
身体のどの部分につけたのかはさておき、古代の他の装身具と同様に、神々の世界と繋がるための道具だったのかもしれない。


唐草リング、自作品。


緊箍児は、天界の神の一人が投げ落として孫悟空の頭にはまったものだが、もともとは観世音菩薩が魔物を封印するための道具のひとつだったという。


あの金の輪も、何らかの特別な意味をこめて作られたのだろう。
子どもの頃と同じように、いや、大人になったからこそわかることも増えて、私の空想は今も終わらない。




※この記事は過去にShort Noteに投稿したものに加筆修正したものです。

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