丸田洋渡
作品以外の文章
自作品
掌編
主に過去のネットプリントで発表した、数の多い連作等の作品を、置いておく場所です。期間を逃した方などぜひご覧ください。
鑑賞をさせていただいたもの
お世話になっております。丸田洋渡です。 今までの私の俳句と短歌の活動のまとめ記事になります。随時更新します。 (原稿等依頼は yotto819@gmail.com へご連絡お願いします。) ○受賞等、主なもののみ記載しています。 ○対象の作品から特に気に入っているものを併記しています。 ○実績にかかわらず、個人的に、自分の作品の流れを考えた上で重要だと思う作品も並べています。(行頭に記号:☆) 2014 高校一年時から俳句創作開始。 2015 2016 .
この日記は架空です。 ○ 自分でも知らない自分のおもしろさを、会う度に引き出してくれるのが嬉しかった。あなたに会うたびに、まるで自分がむかしから面白かったかのような錯覚を起こす。おもしろいあなたのおもしろさを私がただ反射しているだけであることに気づいていてもなお、その錯覚は気持ちがよかった。 今日も私はあなたのもとへと移動しているが、それは新しい自分に会いに行くということでもあった。私はすこし緊張しながら道を歩いていた。何に緊張しているのかは分からない。 そこに呼
新作短歌50首連作。 心酔式 丸田洋渡 客船は港にさよならを言った 港は何も返さなかった 【船の上】 待っててね 観光地と受付の人 待っててね 落としに行くからね 脳内は夜のダーツで今は目が映画で首から下が温泉 甲板に風の軋みを聞いているオペラの深い光を抜けて 仕事で 空を見ている 遊びで 空を見にきたボーイズ・グループ 聞くまでは眼を球体と思えずに戦争の時代のフェンシング 炭酸がぬける 蓋を開けたあとに ちからぬける 光る才能を前に 厚い部屋(
わさびをよく育てている地方の道の駅に、わさびソフトが売られていた。食券システムで、店員はそこにいなくて、〈用があったら押してください〉のベルを押せば来るくらいの過疎度。 わさびソフト、想像するにはマスカット色で、ちょっと日和ってわさび風で、たいして辛くもないものなんだろうという想像をする。私は辛いものが好きなので、わさびを名乗っておいて辛くないものが出てきたら残念な気持ちになる。食券は〈山葵〉、〈山葵&バニラ〉の2種類。 もし、わさびが名のみの薄さだった場合、〈山葵〉を
↑この記事の後編になります。自分の人格形成とか人生の方向付けに大きく関わっている好きな楽曲のプレイリストについて、思い出とその曲の良いところを書いていこうという内容です。選んだ基準や並びのざっくりとした流れについては前編をご覧ください。 プレイリストはこれです。前編を公開したあと早速、優しい方々からおすすめの曲を紹介していただけて、とてもうれしい気持ちで文章を書いています。知らない音楽がこの世には異常に多い。 ○思い出⑪Talk/beabadoobee 連想ゲーム
新旧の音楽を聞きまくってまだ知らない好きな曲に出会いたい! という思いが芽生えて、突如Spotify Premiumに加入して、その勢いのまま懐かしみながらプレイリストを組みました。一曲ずつに思い出がありますが、その中でいくつかについて触れながら、どういうところが好きかを書き留めておこうという記事です。 もし、この曲群を見て、ピンとくる方がいらっしゃったら、おすすめの楽曲等教えていただければ幸いです。 ○説明の前の説明 このリストを組むときの基準について説明します。
この世には、死ぬまで乗らないであろう異国の地下鉄のように、このままずっと自分が使わないであろう言葉というものが存在する。 使えるものなら使ってあげたい、というものもあれば、明確に使わない理由があるものもある。 私は、そういう言葉を見つけてはメモするようにしていて、こつこつ続けてきて謎に五、六年経つ。 ↑これは二年前に書いた短い日記 使わない言葉は、使わないだけあって、自分の視界の中になかなか入ってこない。入っていても無意識にそこだけ飛ばしていたりする。 そこを
短歌20首連作 ──────── 毒と苺 丸田洋渡 さくら色の車が追い越していった(あんず色の直線踏みながら) はじまる恋/すすむ映画館の解体/恋の解体ののちの跡地 食欲が健康を凌駕する夜みんなの想定を超えていく 銀を傷つけてつくった落書きの気持ちが分かるまで触りたい 説明がつきそうだから止めておく恋愛の毒性・苺性 イヤホンをつけてねむって音楽はねむれるわたくしを筒抜けた ○ ひそやかな光の投網ひとりだけ目覚めて朝の廊下へ出て行く 苺ジュースが苺で
短歌入り短編。 矯正 丸田洋渡 骨盤矯正の人が、ひとしきりやってくれたあとで、短歌も治せますが と言った。聞き間違えたと思ってぽかんとしていると、口を過剰に大きく動かして「短歌も、治せますよ」と親切に繰り返した。 じゃあ、お願いします と興味本位で応えると、俯せにさせられて、また骨盤の矯正をするかのように、私の体を指で強く押しはじめた。すると自然に、私の喉は詠いはじめた。 ◇ 俯せに君ねむりをり初夏のつめたき床に右頬つけて やわらかき月のひかり
短歌の100首連作です。2024年2月11日にネットプリントとして発行したものと同じ内容です。 チッ またか……「光による救済はもう二度と行いませんので!」ガチャ PYRMD/CRYSTL 丸田洋渡
思ったことや思い出したことを、書きたい分量つぎつぎに書いているので、読者へのサービスが存在しないことだけは先に書いておきます。 見せることを前提としながら、読まれることは前提としていないので、読まずに、眺めるくらいが良いと思います。 5月1日 中学一年のころ、国語の先生によく思われたくて、「『破戒』の、ですか?」って言ったことを思い出した。あのことを今も後悔している。島崎藤村の名前が一瞬出たときに、いかにも知っているというふうに口にして、そのあと「読んだの?」って驚かれ
見えない人 丸田洋渡 手を挙げると、それに気付いたタクシーが目の前に停まり、自動で後部座席のドアが開いた。車から漏れでている生ぬるい暖気を感じながら、お願いします~と言って乗り込み、行先について伝えようと思ったら、運転手が何かずっとぶつぶつ喋っている。無線で会社の別車両と会話しているのかと五秒くらい様子を見たが、どうやら社員同士のそれではない。彼は助手席の方を向いて、大声で「そりゃ災難だ」と大笑いしている。笑いすぎて息が持たない、みたいなふりまでしながら。 呆然
蓚酸が体液を酸性化してしまうので、たけのこを毎日食べたい とかだと、アルカリ性のわかめと一緒に煮たりして、中性にするのがよい。 一年前くらいに、室井綽・岡村はた『竹とささ その生態と利用』(保育社、昭和46年)を読んだときの、自分が書いていたメモ。たけのこを毎日食べたい場合のすすめが載っていて、確かにそういう人もいるかもな、と適当に思った後、自分もそういう人になる可能性は0ではないのだから と思ってメモした記憶がある。 このように、そのときどきでメモしたことが、何の
ある賞に応募して落選した50首連作より、抄出して再構成したものです。完全版はまたどこかで形にする予定です。 ○ Unlucky 丸田洋渡 遠雷がもっと遠くへ逃げていく嘘つきがいる新生児室 捻挫した子どもを囲む子どもたち柏葉あじさいの陰の奥に 行かないでその木陰には平成のバスガイドが三人もいるから ○ 夏の雲は自動的に流れて行ったすみれ色の果物籠の上 野薊が揺れる 未来で訪れるはずだった蝶がさっき死んだ 将棋将棋アイス将棋将棋将棋アイス なのに
日記にしようとしてメモしていたものを、昇華しなかったとき、そのメモは日記にならなかったもの、すなわち「日記ならず」になる(未成年、と同じ言い方で、未成日記と呼んでもいいが、語呂が悪い)。 ただの書き残しなら破棄すればいいものの、「日記にしようとして」書き残したものは、未来に何かになる気配を残していて、冬の花芽を剪り落とすようで気が引ける。いつか成就しそうな呪いの人形みたいで、ただ捨てるだけではない、何らかの儀式を要するような気がする。 だから、今からその儀式のような
川柳30句。 歓声 丸田洋渡 海沿いの水族館のいやいや期 雷は剣をあやして哺乳瓶 新月の新生児室なればこそ 新しい手が生えてくるから撮って うつくしい濡衣を着せられている 骸骨は琴のおけいこがあるから 都市伝説が透明になる ろわろわと白い卵が冷蔵庫 ふりかかる奇跡が大好きで病院 詩で詩を拭う戦いになる 死と気心がしれているから たかが顕現ごときで呼ぶな 悲しみと砂糖と塩と喜びと パーティーにふさわしくない喉仏 廃マジシャン法改正案(十)