自分が使わない言葉一覧(全紹介)
この世には、死ぬまで乗らないであろう異国の地下鉄のように、このままずっと自分が使わないであろう言葉というものが存在する。
使えるものなら使ってあげたい、というものもあれば、明確に使わない理由があるものもある。
私は、そういう言葉を見つけてはメモするようにしていて、こつこつ続けてきて謎に五、六年経つ。
↑これは二年前に書いた短い日記
使わない言葉は、使わないだけあって、自分の視界の中になかなか入ってこない。入っていても無意識にそこだけ飛ばしていたりする。
そこをどうにか気にするようにすると、〈小学校のグラウンドの砂の中にちっちゃい石英を見つけたとき〉とか、〈知らない町で名前の面白い喫茶店を見つけたとき〉とか、〈友だちの友だちが優しいことが分かったとき〉みたいな微妙な嬉しさを伴ってその語が見えてくる……。
二年前の日記はざっくり概要とスタンスを書いただけだったものの、意外に反応が良くてどうやら未だに読まれているようなので、改めて今メモしているものを紹介して、解説してみようという記事です。
注
○考えを大きく変えるような事件があれば、使うようになるかもしれません。一生ってことではないです。
○ここに挙げている言葉を使っている人を見かけても、「使っている」ということだけで何かを判断したりはしません。''言葉狩り''みたいな行為は嫌いなので。あくまで私が使わないということだけを意味します。
○100ごとに、特に関連の無い写真を差し込んでいます。
1-20
くびったけ、ほの字、秘蔵っ子
幕開け、とどのつまり、舌の根も乾かぬうちに
性に合う、罪深い、男泣き
女心、おやじ、諦めなければ夢は叶う
そんなことってあります?
語彙力、盤石、苦虫を噛み潰したよう
虫が良すぎる、自転車操業、いつもかつも
どこの馬の骨かも分からない
20個ずつ紹介していきます。特に触れたいものについては解説します。
「ほの字」:内容も見た目も可愛くて、発音も「そろりそろり」(チョコプラ長田がよくやる和泉元彌のモノマネ)みたいで、面白い。''めろめろ''みたいなことだけど、あまりにも古くて、レトロ雑貨過ぎるかな と思う。
「男泣き」:男以外も泣くので使いません。男が泣いているんだ! と強調したいときがそもそもない。
「女心」:こういう一般化は好きじゃない。
「諦めなければ夢は叶う」:これを言うのが叶った側の人なのが、また一層グロいというか。私は、叶わないこともあると強く思う。''諦めれば別の夢を持つことができる''とかに言い換えて使うようにしている。
「どこの馬の骨かも分からない」:分かったらどうなるんだ……?
21-40
憤懣やる方ない、骨の髄まで、草分け
けんもほろろ、のべつまくなし
近々(きんきん)で、ピカイチ、いなせ
せきらら、夫婦水入らず、虻蜂取らず
痛み分け、気付け薬、痛い目をみる
元の木阿弥、年の瀬、喧嘩両成敗
これ大優勝してるんよ
あの、ちょっといいですか。(ツイート等の宣伝での口調)
土手っ腹
改めて見返して、''自分が使わな''すぎて感動します。
「草分け」:これは、自分の理解語彙にあって、使用語彙にないパターン。嫌とかではなくて、パッと手札から出せない感じ。これを思い出せなくて、下手に''パイオニア''とか''先駆者''とか言ってしまって、テイストが変わることがしばしば。類語としては''先駆け''が一番フラットな気がする。
「けんもほろろ」:上に同じく。語源も知っているが、''雉の鳴き声''をまず想像できない人の方が多いことを考えると、この語を当然のように会話の俎上に出すのは不親切だと思う。これを言い替えて「とりつくしまもない」と言うのも、ギリ分かりづらい気がして、なかなか表現が難しい。
「痛い目を見る」:未来のことについてしか言わない言葉で、しかも他者についてばかり言う気がする。(ex.あいつはいつか〜、そんなことしてるときっと〜)脅しみたいで好きじゃない。この''目''の使い方があまり納得できてなくて、''憂き目''、''日の目を浴びる''とかも使わない。
「これ大優勝してるんよ」:もう最近あんまり見なくなりましたね。''優勝''をこの用法で死んでも使いたくないというのが一つと、ファッション方言「してるんよ」が嫌いなのが一つ。これは確かツイートを見かけて、宝石を見つけたみたいに喜んでメモした記憶がある。
41-60
根(こん)詰める、〜のいろは
手弁当、両手に花、二の脚をふむ
命あっての物種、まことしやかに
出鼻をくじかれる、手前味噌ですが〜
元気印、抜きん出て、言質を取る
おべんちゃら、面映ゆい
(涙が)ちょちょぎれる
指折りの、片手落ち、かまとと
たられば
「両手に花」:これを使わない理由を説明するのは難しいんですが、簡単に言うと、「ふだん自分が誰かに''花''と言ったときに、Flowerの花を想像してもらうため」です。慣用句とはそもそも、単語をイメージとしてずらして使用するものなので、単語そのものがもつものを一旦減じてしまいます。
本当に、両手に花束を持っていたとしても、それを「両手に花」と表すと、〈特に一人の男性が二人の美しい女性を手に入れること〉の気配が迫ってきてしまう。それは嫌だ、ということです。花は花であってほしい。詩とか創作の場では暗喩もどんどん使いますが、実際に人と話しているときには、基本比喩するとしても直喩でやりたくて、こういう暗喩っぽい慣用句は積極的に避けています。前項「手弁当」も同じ理由。
「元気印」:''ほの字''と同じ雰囲気。
「ちょちょぎれる」:ギャグで言うときはある。
「指折りの」:痛い。
「片手落ち」:ちょっと違うけど痛そう。
「かまとと」:どうぶつの森のキャラクター「とたけけ」みたい。''天然''とか、''不思議ちゃん''とかもあんまり使いたくない言葉です。''ぶりっ子''もあんまり。悪口ワードでしかない感じが。
61-80
ASAP、鎬(しのぎ)を削る、矯めつ眇めつ
憖っか(なまじっか)
暇人、俺について来い、馬車馬
いぶし銀、ぼーっと生きてんじゃねぇよ
竹を割ったような性格、感情が迷子
ダントツ、しっちゃかめっちゃか
話にならない、肝心かなめ
すったもんだ、やれ○○だの○○だの
小娘、ハウツー
充電(何か良いものを摂取して)
「ASAP」:日本語で言った方が早い。英語圏ならまだしも。as soon as possibleの略だが、いまいち浸透しそうでしきってない単語。''なる早''とかの方がむしろ聞くなあという感じ。あと''エーエスエーピー''って言う人もいれば、''アサップ''って言う人もいて、ばらばら。ワザップ(ゲームの裏技紹介サイト)みたい。
「矯めつ眇めつ」:ためつすがめつ。やっぱり、聞き手に負担をかける単語は、かなり出す場所を選ぶと思う。難しめな私小説とかなら出てくる可能性がある。でも最近の「読者」って、小説とかに自分の知らない単語が出てきても調べない傾向にある気がする(偏見)。だから、他に言いようがない限りは、あまりにも難しい表現はする必要性が低いのかな、と思う。
「ぼーっと生きてんじゃねえよ」:某番組より。最悪。これは間違いなく最悪な言葉だと思います。ぼーっと生きてていいし別に。知識のひとつふたつ知らないくらいで、「生」自体をひっくるめて蔑む姿勢は、人の人生に対するリスペクトに欠けている。もちろん、言ってる側はそんなつもりで言ってないんだろうけど、どうも引っかかる。逆に「きびきび生きている」ことに対する批判って(冗談でも)あんまり耳にしない。
「感情が迷子」:これは、むしろ、迷子センターの方が感情だと思うからです。解釈が違うから使わない。あと、感情を''子ども''と思ったことがないので、その擬人化は僕には馴染まないかなと思います。
「充電」:推しの声をラジオで聞いて充電、みたいな用法。これを使うには、一回自分のことを電化製品と思わなくてはいけなくて、それがなかなか上手くいかない。''回復''とかならふつうに使えるけど。でも''回復''と違うところは、電力は消費されて次第に無くなっていくというニュアンス。そこは細かく言い得ているとは思う。
81-100
身も蓋もない、多幸感、〜の土俵
ポジ/ネガ、最大公約数的、肝入りの
てんでばらばら、総スカン
オレでなきゃ見逃しちゃうね
プチブル、合目的的、アジ(アジテーション)
ノンポリ、生起する、意趣返し
コインの裏表、逆照射、レンジ(射程)
論難、桁違い
この辺は、意味は知っているけど、個人的には使わないゾーンが多い。
「ポジ/ネガ」:ポジティブ/ネガティブって言います。
「総スカン」:''一億総白痴化''、''一億総活躍社会''、の''総''に似ていて、これがすごく適当に見えて、あまり使わない(その二例については''一億''とかいうスローガンのための雑な言い方が嫌さを加速させている)。好かん、をスカンとカナにするのも、「〜を食う」で使うのも、言いたいことがボケる表現。
「オレでなきゃ見逃しちゃうね」:元ネタは漫画HUNTER × HUNTER。セリフの前に「おそろしく速い手刀」が入る。名言として引用するのはいいけど、HUNTER × HUNTERを遠く離れて、ふつうにこういうスラングを使用するのが私は苦手。もしこういうのを使うなら、使った直後に毎回(小声でもいいから)HUNTER × HUNTERのやつで、ってごにょごにょ言ってほしい。
「プチブル」・「アジ」・「ノンポリ」:ポジ/ネガもですが、こういう批評用のちくっと言葉の略語は、使っててゾワッとするので可能であれば使いたくないです。
「桁違い」:これをメモに書き入れたときはそれなりの理由があったはずだけど、今はそこまで悪い印象は無い。ただ、何故か使う頻度は低い。''桁''を意識することが少ないから、なのかも。類語の''超弩級''とかもあんまり使わない。’’抜きんでて’’は、ちょっと面白くて使うことがある。
101-120
てんてこまい、(とんだ)食わせ物
破竹の勢い、十二分に、豚箱
一に〜二に〜三四がなくて五に〜
絆、ちんたらちんたら、毎日毎日
タッパ、○○息してるか〜?
骨の髄までしゃぶる、自分の首を絞めることになる
一丁前に、基本のき
キメる(薬を真似して、良いものを摂取して)
潮時、やらかした、現代病
老婆心
古い言葉、は入る可能性が高い。古びるにはそれ相応の理由が既にあるから。
「十二分に」:中学のときのテニス部の顧問が、''十分に''のところを必ず''十二分に''と言っていて、それがトラウマで、という個人的理由が大きい。じゅうにぶんに、''ロードマップ''とか''トートバッグ''みたいなリズム感で、可愛げはある。
「豚箱」:絶対言いません。
「絆」:これも言いません。仲の良さ、を言いたいときは、''仲良し''って言います。''東北の絆''とか、''親子の絆''みたいな言い方で発生する、粘着質な気持ち悪さ(仲の良さ以外も無理やり包含させるやり口)を感じて、すごく慎重な使用を要する語だと思う。
「毎日毎日」:嫌味とか愚痴を言うときの入りによく重ねて使われる。ふつうに「毎日」って言います。
「○○息してるか〜?」:スラングというものにはそもそも、〈嘲笑性〉みたいなのがぴっとりくっついている気がしていて、その最たる例。悪意しかない使い方で使われる言葉が不憫でならない。
「キメる」:ドラッグの摂取でキマっていく行為自体、ちょっとダサいと心の中で思っていて、まあそれはいいとして、それを''シャバい''(シャバ、も使わない言葉だ……)私たちが使用するのが輪をかけてダサいと思う。料理研究家みたいな人が、''究極''とか''悪魔の''とかをくっつけて、「マジで飛ぶぞ」とか「キマる」とか言ってるのを見ると、いやいやいや……と思う(''飛ぶぞ''に関しては、『相席食堂』の長州力も文脈にあり、なかなか厄介)。同様に''チルする''みたいな言葉も、ちょっと……と思う。(最近は見なくなったけど、数年前は凄かった。Lo-fiとかVaporwave的な、音楽ジャンルとしてのチルに移行しかけているか。)
121-140
お代官様、役人、○○神話
地主、垢抜けた、交代劇
食指が動く、とうとう化けの皮が剥がれた
〜の一途を辿る、雁首揃えて
一丁目一番地、ご用命、天王山
群像劇、〜のワケ、矢面に立たせる
金目当て、〜するハメに
全員野球、大詰め
岸田総理の発言から一気に4つくらいメモが進んだ記憶がある。政治の言葉もまた言外の含みが多すぎて、私にとっては控えたい言葉が多い。
「垢抜けた」:こういう、変化を示す表現は、変化前後を一瞬想像してしまう癖がある。垢抜ける前は、垢が''溜まっている''ってこと? という。せめて、自分自身の過去と較べる言い方ならまだしも、他人に対して「垢抜けたね〜」は、''抜ける前は……''がうっすらあるような。それにしても''垢''をあんまり日常会話で登場させたくない気も。
「一丁目一番地」:一回遊びで、偽サイトに嘘つきまくって登録してみようと思って、一丁目一番地で登録したことがある。似たような、地名が別の意味をさすシリーズだと、''霞が関''も使わない。
「金目当て」:本当に金目当てだとしても、''金目当て''とは言わない。''金目当て''という言葉自体が、この言葉が倒そうとする相手にそっくりに見える。ぎとぎとしている。
「全員野球」:この一語で、(比喩とはいえ)全員を一旦''野球をしていることにする''パワー、能力バトルみたいで面白い。
141-160
おっかなびっくり、真綿で首を絞める
能書き、テレビ屋、鳴り物入り
馬車馬、挿げ替える、オアダイ
かなぐり捨てる、虎の巻
乱痴気騒ぎ、トンチキ、身につまされる
根を詰める、お花畑、言ってられない
ウルトラC、雇われ人、一家言
みっともない
100を超えたあたりでもう、私のリスト化の要件は掴める気はする。
「おっかなびっくり」:''おっかな''が分からない。(調べたら分かるかもしれないが、相手に伝わらない、という意味)
「馬車馬」:フリースタイルラップバトルでR-指定が「馬車馬働き スズメの涙♪」と歌っていたのを鮮明に覚えている。声が空から聞こえてくる。
「かなぐり捨てる」:''かなぐり''が分からない。金栗四三みたい。
「乱痴気騒ぎ」:''痴''が嫌だ。なんか、乱と痴と気が重なるのってここだけだと思うけど、''貪瞋癡''とか''守破離''とか''序破急''みたいに、1個ずつが合体したみたいで、そこはかっこいいと思う。
161-180
情けない、みみっちい、盗人猛々しい
べき論、馬鹿も休み休み言え、カンフル剤
売国奴、紅一点、頭打ち、後の祭り
そら(それは、そりゃあ、をつづめた言い方)
○○さんよ、血税、しょっぴく
無能、反社、腰抜け
○○なぞ(〜なんて、の意味)
しこたま、顔負け
こういうのは、そういうニュースのコメント欄から無限に掘り出せるが、そこを見に行くのは結構気力がいる。
「売国奴」:ひどい言葉ですね。言葉の構造は簡潔。
「べき論」:''論''の方の使い方が気になる。
「紅一点」:さすがに時代遅れというか。(時代、の問題でもない)
「血税」:税、腹立つなあと思うことはあるけど、''血''は感じたことがない。仮に私たちが血を流して働いていたとしても、税は血に濡れていない。「税は血に濡れない」ことこそが、税の腹立つポイントなわけであって。
181-200
オブラートに包むと、度肝を抜かれる
大したもんだ、おたく、大の大人
税金泥棒、お灸を据える、雲隠れ
家内、メシ、至れり尽くせり
御三方、買って出る、精が出ますね
グロッキー、シカトをこく、ムキになる
けちょんけちょん、羽目を外す
(名)よろしく
「度肝を抜かれる」:度肝を体内に感じたことがない。
「大の大人」:ダイの大冒険みたい。''小の大人''がいたらみてみたい。
「家内」:言わずもがな。類語''奥さん''。''嫁''も、家にいる女なので、なかなか呼びづらい。
「メシ」:ご飯。
「買って出る」:若いうちの苦労は買ってでも、みたいな。''買う''という金銭の交換が、微妙に言いたいことと似つかない気がして、積極的には使わない言葉。
「(名)よろしく」:ex.「ミュージカル俳優よろしく、彼は踊りながら歌った」みたいな用法。ギャグで使うことはある。「みたいに」で代用できるというのが大きな要因。
「羽目を外す」:(酒を飲んだりして)はめを外す人のことが好きではないから、それを表現することも控えたいという理由。性的なイメージへの連想も避けたい。
201-220
こてんぱんに、かくなる上は、お易い御用
達者でな、急ピッチで、おっとり刀
ええいままよ、いけしゃあしゃあと
隠し玉、申し子、乗りかかった船
しみったれ、てんやわんや
間に合ってる、血も涙もない
差し金、往生際、ちょこざい
〜まがい、人様
時代小説とか、落語とか見れば、この系統は蒐集できる可能性が高い。自分から見つけに行く、のはまたちょっと違う。
「おっとり刀」:最初この言葉に出会ったとき、優しいとか温和の「おっとり」+刀で、なんて特殊な単語なんだと思って惹かれたが、漢字で書くと「押っ取り刀」で、〈普段鞘にしまうはずの刀をしまう暇もないくらい急いでいる状況〉という意味で、自分の初見の印象の真逆で驚いてから使用語彙には入らなくなった。いつも結局どっちの意味なんだっけと思って思考が滞ってしまう。
「ええいままよ」:おもしろすぎる。
「申し子」:申し子は、正確には、〈神仏に祈願して生まれた子ども〉という意味が第一義で、それの誤用として、''霊力がある''とか、''特殊な社会背景の下で生まれた''とかが付与されている。まず私は神仏に信仰心がないので、第一義での使用はない。誤用の方も随分怪しいので使わない。誰かを''特別な出生''にするための表現は、かなりグレーだなと思う。類語に''神童''。
「猪口才」:生意気、小賢しい、という意味。ふつうに、''生意気''に言い替える。「ちょこざい」という響きが、ちょっとおふざけ感があるため、「このちょこざいめが」をいつか使ってみてもいいな、とは思っている。
221-240
票田、惚れた腫れた、のっぴきならない
よもや、よもやよもや
自分で蒔いた種、ならず者
みそっかす、連中、資金繰り
受け売り、しゃかりき、風雷坊
デタラメ、合格点、あけすけ
蜘蛛の子を散らすように
噴飯もの、既得権益
甘い汁(を吸う)
「惚れた腫れた」:宇多田ヒカル「荒野の狼」(『Fantôme』)歌詞の冒頭「惚れた腫れた/騒いで楽しそうなやつら/そうだそうだ/お互いを肯定する輩」。痺れるくらい刺してる歌詞。ここで宇多田ヒカルが使ってるのは、僕が使わないことの理由と同じだと思う。
「よもや/よもやよもや」:よもや、は、「まさか」に置き換えて使っている。よもやよもやは、『鬼滅の刃』から始まった言い方。鬼滅を読んでいないので、(先述した自分のポリシーに基づいて、原典から離れすぎたスラングの使用は好きじゃないので)私には使えない。
「しゃかりき」:じゃがりこみたい。あと釈迦が一瞬だぶるので、口頭でもし言うとすれば、釈迦を感じさせないくらいのスピードで、シャカリキ と言いたい。
「蜘蛛の子を散らすように」:一度、本当に蜘蛛の子を散らしたことがあって、それ以来想像もしたくないので、いくら比喩でも使わない。
241-260
下馬評、真っ平御免、連中
馬鹿の一つ覚え、無用の長物、美酒
同好の士、勘繰る、土をつける
高楊枝、馬鹿話、いぶし銀
生殺与奪、金の卵を産む鶏
片腹痛い、即刻、不承不承
へったくれ(もない)、鉄槌
からっきし
「無用の長物(ちょうぶつ)」:使わない理由とは関係ないが、夏に見る冬物の服は、無用の長物だな〜と思う。なんか改めて調べたら、''世界三代無用の長物''があるらしく、ギザのピラミッド・万里の長城・戦艦大和らしい。誰がそんなもの勝手に決めたんだ……。その三つの遺構は比較的そこまで邪魔じゃないんじゃないか?
「美酒」:酒のことが嫌いなので、酒に関する言葉は軒並み使用しません(お酒飲めません)。勝利の美酒、という言い方も、うげ〜 と思います。
「金の卵を産む鶏」:マンションの家賃収入とかのことをこう呼ぶのが、いやらしくて好きではない。このいやな例えをするためだけにもってこられる鶏がかわいそう。そういう語の使い方をする人は、自分が''鶏に卵を産ませている''という視点が欠けている。
「へったくれ」:ひったくりみたい。''飲んだくれ''の''くれ''も同じく、なんか発声すると同時に毎回志村けんが想像されるのは何故なんだろう。
261-280
売り言葉に買い言葉、囲みますか?(飲みにさそう)
白飯(しろめし)、トカゲの尻尾切り
北は北海道-南は沖縄まで、おかんむり
五体投地、二度美味しい、お縄
がしかし(が、しかし)、大ポカ
割を食う、うるさ型、天下の〜
大馬鹿者、しわ寄せ、技術畑
吸い上げる(弱い者からお金等)
白日のもとに晒す、バックボーン
昔にメモしたものでも、未だにちゃんと使ってなくてウケる。
「売り言葉に買い言葉」:長い。長い慣用句を使うというのは会話上では結構キーになると思っている。私的には、ドラゴンボールとかバトル漫画の必殺技名の詠唱に似ていると思っていて、「かめはめ波」くらいの短さなら(使用時はたっぷり溜めているけど)まだ敵に襲われる前に攻撃できるが、「エクスペクト・パトローナム」(ハリーポッター)くらいになれば、「エクスペクト/」のところで邪魔できる気がする。邪魔はしなくとも、相手が言い終わるまで待たなくてはいけないと思う隙が生じてしまう。
だから、「売り言葉に、」でもう相手には99%伝わっているのに、「買い言葉じゃないけど〜」と続けなければならないのは、発言者にとっては早口を要するし、聞き手側は1秒くらい''待ち''が入る。このロス。だから、「売り言葉に」だけで終わらせるみたいなことが生じる。「船頭多くして、」とか、「二兎を追う者は、」みたいな省略を要する。
実は言葉を売ったり買ったりする詩的な表現だから使いたいものの、喧嘩をする(した)時ばかり使われるから、使い難い。
「北は北海道、南は沖縄まで」:YouTuber感。麻雀の点数申告(ex.4000''は''4300オール)といい、この口上の「は」は、私が使わなさそうな「は」だなと毎回思う。ハキハキしているから。私はハキハキしていないから、あまり使わない。
「技術畑」:蒟蒻畑みたい。畑じゃないのに と毎回新鮮に思ってしまう。
281-300
お熱、霞を食う、やることなすこと(全部-)
完膚なきまでに、親の顔が見て見たい
温室育ち、ツケを払う、否(いな)
百姓、身から出た錆、泣き落とし
愚かな〜、天下を取る、すっこんでろよ
ばーか、棺桶入るまで、まずいですよ!
旗色、お気持ち
とやかく言われる筋合いは無い
「お熱」:短歌では使おうと思ってます。〜にお熱だ、の言い方。
「親の顔が見てみたい」:親の顔を見て何になる?
「すっこんでろよ」:マンガとかではよく、すっこんでろ! と聞くが、現実ではあまり聞かない。「引っ込んでろ」ならまだ分かる。この''す''がどこから来たのか。
「ばーか」:幼いときは使ったかもしれないが、もう''ば''と''か''の間に伸ばし棒を入れることは無い。
「お気持ち」:特に政治関係での嫌味ワード。気持ちに、美化語「お」をつけただけなのに、こんなに嫌な言い方になるのを見ていると、言葉って本当に使いようなんだなと思います。
301-320
脳筋、脳死プレイ(頭を使わないでする半自動的なゲームプレイの意味)
工作(ある目的のための計画的な働きかけ、の意味)
意識高い系、かんしゃく玉
盲目(比喩的な用法)、関係各所
先が知れてる、胃袋を掴む/掴まれる
大本営、〜じゃないのかよ、賃上げ
銭ゲバ、哲学徒、大台に乗る
徹頭徹尾、さんざっぱら、おでまし
ザル(適当で抜け目が多いこと)
極めつけ
自分のざっくりとした把握だと220くらいだったのに、よくよく数えたら300を超えていた。
「脳死プレイ」「盲目」:本当にそうである人が実際に存在しているって言うことがネックで、たとえ比喩でもちょっとよろしくないなと思うので、意識して使わないようにしています。類語''めくら''。''〜に目がない''(虜になるという意味で)はギリギリセーフかと思っていますが、使うといつも若干心残りがあります。
「胃袋を掴む/掴まれる」:比喩がエグい。パートナーが唸るくらい美味しい料理をいっぱい作れることを、「胃袋」を「掴む」という、生々しすぎる豪快な比喩。ぐちゃっ、てなる内臓が一回よぎるので、あまり不用意に聞きたくないフレーズ。でも確かに、これを言い換えようと思ったら、倍以上の文字量は要するから、難しい。
「〜じゃないのかよ」:標準語過ぎるかな〜という。使わない言葉、は、方言がそのままそうだと思う。場所を移動すれば、使っていた言葉も、使わない言葉になってしまう。言葉は、土地によっても使用が変わる。
321-340
マネロン(マネーロンダリングの略)
〜しやしねえか?、石を投げなさい
タコ詰め、すし詰め、スティグマ
才気煥発、放言、マインドセット
度外視、おしまいになる、守られ
ごった煮、ぐうの音
おおともさ(よ)、(人間万事)塞翁が馬
石を投げる(比喩)、ガジェット
合点承知之助、斬奸状
「マネロン」:この使用を見かけたときは笑ってしまった。マネーロンダリングを略して使うほど使用頻度が高くないから、資金洗浄を略そうと思った人がいることがまず面白かった。そういう界隈ってあるんだ〜という。職業ごとの専門語も、当然使わない言葉ですね。たとえば僕は医者ではないしなる予定もないので、手術道具はすべて使わない語です。
「おしまいになる」:cf.「おしまいになられる」。こういう語の改造はどの界隈の人たちが推し進めているのか分からない。ただ、「わかりみが深い」「かなしみ」みたいな、動詞/形容詞の名詞化の流れの延長にあるんだろうことだけは分かる。「もう終わりだ……」みたいな表現が既にあるのに、新しく作られたのは、「終わり」にはない「おしまい」の可愛さとか絶望があるんだろうなと推測する。僕にはちょっと、軽すぎて、使いづらい。
「おおともさ(よ)」:意味が分かっているようで分かっていない、度量の広そうな相槌。これは、〈これを言うことで、自分の性格が変わってしまうかもしれない〉という危険ワードとして、使わないようにしている。他人から見えている自分を操作したいときには、こういう語を活用するといい。
341-360
諸悪の根源、旗振り役、お望み通り
ホント(「本当」のカナ表記)
大杉(多すぎ、のスラング)
漏れ(俺、のスラング)
もうね、ほんとに……(引用rt話し始め)
あのさ、これ……(引用rt話し始め)
巨大感情、万死に値する、お縄につく
お墨付き、塩顔、塩対応
ガチ恋、待って(全人類に対して)、
根掘り葉掘り、血は争えない、ノウハウ、ザハ案
Twitterとか、インスタのリールとか、YouTubeのショートみたいな、短い間に相手を引き込む過大な誘惑ワードの有害性を考える。それと、推し活における布教のワードの類似についても考えている。
「漏れ」:ただのスラングのくせにハイコンテクストなもの(由来を説明しだすと時間がかかる、たとえば2chスレ由来のもの)は、基本使わない。語に引っかかられたときの説明に時間がかかる言葉は、(特に新規の他者との)コミュニケーション上使うべきではない、というのが私の考えるところ。固有名詞はさておき、こういう基礎の語彙の変形はもっとややこしい。もちろんこれを使うことで、同種の(同じ言葉を使うような)人たちをおびき寄せることが出来るので、仲間を探したいときにはその使い方でもいいのかもしれない。もし仮にそういうものを使うとしても、もう既に仲のいい、かなりクローズドな場所でしか、私は使わない。
「あのさ、これ……」:引用rtの場合。引用rtって本人(引用元)にも通知が行くし、赤の他人にぐいっと近寄る行為だと感じているので、「あのさ、」が一言目なのは、馴れ馴れしくてシンプルに怖い。既に友だちならいいけど。そして、この「あのさ、」の対象が引用元ではなく、引用者のフォロワーだった場合(大抵がそう)、こいつ何者……? と思う。まずは引用元に対して一言言ってから、自分のフォロワーに対してなんじゃないか。一言言うのが面倒なら、RTしてから「>RT あのさ、」って個別にツイートすればいいだけの話で。SNSはかなり個々でスタンスがばらばらで、そういう所で生まれる気苦労は多い。
「待って、」:ex.(アイドルのかっこいい写真を添付して)「待って、」。そんなにかっこよすぎたら私死んじゃう、だからその魅力をふりまくのを待って(一旦止めて) みたいな使い方だと捉えているがこれで合っているだろうか……。数年前から急に流行りだしたフレーズ。言葉上では、相手にお願いする内容だが、実際に待ってもらうことは企図していないので、「ああ」「うわあ」みたいな感嘆と役割はもはや同じ。これも、先述した''両手に花''を使わない理由と同じように、''待つ''、''待って''の正常な効果を自分の中で保つために、こういう用法では私は使わない。
だって実際には、待ってもらわなくていいわけで、''もっとしてほしい''、が言外にある。それなら、本当に、「待って」という言葉が犠牲になっている気がする。私なら、「もっとして」とか「かっこよすぎる」みたいに、直截思っていることをそのまま言う。
361-380
政治劇、本腰、料簡、しょんない
良(よ)、関の山、峠(比喩)
当たるも八卦当たらぬも八卦
おだぶつ、全米、一族郎党
所帯持ち、平身低頭、三拝九拝
浪花、上げ膳据え膳
万年、そつがない、からっきし(からきし)
向こうっ気
「政治劇」:政治が劇であっては困る。だから、劇のように捉えようとするこの表現は私からは出ない。
「良(よ)」:''漏れ''と同じシステムで、つかわない。こっちは説明は簡単だが、わりと対象をなめてる時にしか「よ」とは言えない気がするので、使い所はない。
「峠」:ex.(病が酷くて)今晩が峠です。 これは単に使う機会が少ないので使っていないだけで、使おうとする心境は分かる。
「所帯持ち」:''地主''とか、''大黒柱''とか、そういうグループの単語。
「一族郎党」:レッドブル韻 da house2022準決勝 Fuma no KTR vs 呂布カルマ戦で、呂布が途中で「一族郎党/肉親まで全員」と言う。
https://youtu.be/2cmne4UFdgQ?si=5tIY27mG6JfvwfmE
(この試合のFuma no KTRはずっと勢いがあってよかった。藤KooSだった時代から、ディスよりまず音楽を楽しむことをずっと言ってて、「ディスがないとバトルにならないならさっさとここから下がっていいよ」に結実したのが、当時見ていて感動した。平和が一番)
ドラマ「SPEC」においても、瀬文と当麻がお互いの名前の珍しさについて言及し合うシーン(「林実」回)で、当麻が「瀬文なんて(名字)一族郎党合わせても5人もいないでしょ」、みたいな風に言う。
この''一族郎党''に関しては、使わないのに、使われているシーンはいっぱい思い出せる不思議な言葉。
381-400
したり顔、膝を打つ、紋切り型
聖人君子、代物、毫も気にせず
ぶん殴る、傲岸不遜、おべっか(おべんちゃら)
おちょくる、(魂/心を)掴んで揺さぶる
矢先、御託、鼻の下を伸ばす
たけのこ族、転勤族、ビフォアフ
堪能する、一丁前、意外や意外
400もあると、ちっちゃい辞典みたいで良い。
「膝を打つ」:面白かったり、思いついたりしたときに言う。''膝を叩く''ともいう。座ってるときになら使ってもいいかもしれない。
「おべっか(おべんちゃら)」:面白すぎる。「フレンズ」のレベッカみたい。ポケモンみたいに、「おべっか」の進化が「おべんちゃら」だと勝手に思っている。
「(魂/心を)掴んで揺さぶる」:''胃袋を掴む''と拒否感は同じで、でもよく見ると、魂と心は目に見えないので、胃袋ほどのリアリティは無い。「心を掴んで離さない」は使えるけど、「掴んで揺さぶる」となると、行き過ぎたなーと思う。
「ビフォアフ」:ビフォーアフターを略している人を見かけて、感動してメモした。「ー」と「ター」のみ略せている。ビフォアフと「遺書書く」で韻が踏める。
「意外や意外」:面白すぎる。''あれやこれ''とかの「や」か。
401-420
無一文、道楽、怖気、死んでも死にきれない
目の黒いうちに、本丸、世迷言
顔を立てる、顔に泥を塗る、万歳三唱
万感の思い、〜するもよし〜するもよし
肌感、屋台骨、ギャフン、
(敵に)塩を送る、取り越し苦労、お役所仕事
ご冗談を、君ら
「目の黒いうちに」:最初に聞いたときは、黒じゃなくなるってどういうことだ? 死ぬってことか? と思っていた(実際、意味は「死ぬまえに」で合っている)が、よくよく考えれば白内障とか老人環とか、黒目の部分が白くなる病気もあるなあと最近になって思い至る。おそらくは、死後の角膜の混濁→白濁(1日くらい経てば完全に白くなるらしい)のことを言っている。ちょっと面白い表現。
「万歳三唱」:「万歳三唱令」は偽書だったと今は判明しているが……。そんなはっきり万歳三唱って言ったことない。言われることはあっても。同様に''一本締め''とか''三三七拍子''を飲み会とかで言うこともない。言われることはある。なんでそんなことするんだろうと、正直思っている。
「肌感」:→肌感覚。
「敵に塩を送る」:世界史が好きなので、どうしても塩金交易のことを思い出してしまう(ex.マリ王国)。元は上杉謙信が武田信玄に塩をあげた(的なのに救ってあげた)のが由来らしい。
「お役所仕事」:役所も大変ですからね。きっと。公務員下げ系の言葉は、何も生まないと思う。
「君ら」:この二人称は使わない。使うときが来ないことを祈る。
421-440
酸鼻、腸煮えくり返る、子煩悩
おいた(お痛)、どう出る?、産物
〜信者、パー券、どんちゃん騒ぎ、
ステゴロ、酒を酌み交わす、屋上屋を架す
〜どころの騒ぎじゃない、抜け感、
反撃の狼煙、さあどうするよ、尊い
リスケ、どちゃくそ、そんじょそこら
「子煩悩」:燕子花(かきつばた)みたいに、三文字で新しい読み方をする言葉のようにも見える。''煩悩''からまず使わない。
「どう出る?」「さあどうするよ」:私が目撃したときは、東京都知事選立候補者のツイートを引用して、「さあ、○○(その候補者とは別の候補者の名前を出して)、どう出る?」だった。劇みたいな言い回し。煽り文句、自分に馴染みが無い。似たようなものとして、お酒のCMに出てくる人たちがお酒を飲んだ直後、手に持つジョッキを眺めながら「こうきたか」とか「やるじゃん」とか言うのも、同じく使用しない。
「リスケ」:リスカみたい、という一点において使わない単語です。リスケジュール、って言うか、日程調整、って言います。
「そんじょそこら」:今回この記事を書くにあたって初めて調べたが、「そんじょ」は、「其定」の音変化とされているらしい。無いと思っていたものに由来があると、ちょっとびっくりする。
終わりに
以上440語・句になる。メモは続けていくつもりなので、これからもずっと増えていく。
これらをメモし始めてから、私の体に起こったことを紹介しておくと、私がメモするべき面白い・使わない単語が、すぐに見つけられるようになった。小説を読んでいても光って見える(比喩)し、聞いていてもそこだけ違和感を伴って感じられる(星座の名前と構成をいくつか覚えた途端、その星座だけくっきり見えてくるみたいな感覚)。
これがもう5年以上続いているため、もはや、「自分が使わなそうな言葉を積極的に使って会話する」ことも可能になってきた。今後これを得意技としてもいい。
――たとえば今の''得意技''という単語だけで、「マル秘」「虎の巻」「一子相伝」「伝家の宝刀」「奥の手」「切り札」「隠し玉」「リーサル・ウェポン」とかがバーッと頭に浮かぶようになった。要らない能力。
だから、「使わない言葉」に限らず、もし自分が気付きたいものがあるときは、それを見かけるたびにメモしていれば、サーチ能力は自然に上がっていくんだと思う。目が良くなる。
○
使わない単語を書いていくほど、自分がどういう理由でどんな言葉を望んで使おうとしているかが見えてきて、意外にすっきりする。自問自答にぴったり。
そして、どんな言葉を使いたいかは、そのまま、どんなふうに生きていきたいか・どんな人間で居たいか、に繋がっている。
二年前の日記にも書いたが、「私」「僕」「俺」等の一人称の選択から、既に語の選択・人生の選択は始まっている。ちびまる子ちゃんの主人公さくらももこが「あたしゃ」と言っているのは想像できるが、「うち」とか「ももこ」と言っているのは想像できない。姉・さきこは、「わたし」と言っている印象がある。まる子の性格上「あたしゃ」を選択したともいえるし、「あたしゃ」を使っているから、まる子の性格がそちらへ強化されていったとも言える。
代名詞だけではなく、これがすべての単語において発生する。
「あたしゃ」「あんた」を使い、「ほの字」を使い、語尾「よ」を使う、「あたしゃあんたにほの字だよ」と表現する人間①と、「私は」「お前」を使い、「好き」を選び、「~だ」の断定をよくする、「私はお前のことが好きだ!」と表現する人間②が、同じ人間であるとは到底考えられない。劇とかで演じていない限りは、それが両立することはなかなか無い。
言葉はその人を装飾し、演出するということを、心に留めておきたい。
これを利用して、自分が意識しない限り使わないような単語を使って、自分像を変えることは、比較的容易だと思う。キャラ変(''キャラチェン''、って言う人もいれば、''イメチェン''という人もいる)。自分が進みたい方向へ合わせて語の使用を変えていくということは、もっと気軽になされていいだろうなと思う。
ただ、
という藍染惣右介の名言もあるとおり、自分自身・自分らしさから離れすぎた言葉になると、違った印象を与えることにもなるので、適度な距離を計りつつ、自分に合った言葉を選択する必要がある。自分と言葉を等しく気にしながら発話していくことが大事……。
(☆詩歌では特に、少ない言葉で景や内容を伝えないといけないため、同じ内容でもどの語や言い回しを選択するかが非常に重要になる。立ち上がる像が全然変わってくる。内容だけではなくて選択された語の性格から読みを進めていくのも手だと思う。私は、作るときにその観点で語の推敲を行うことが多い。)
じゃあ、最後に、さっきの藍染の名言に関する面白い記事のリンクを貼っておきます。
>「あまりキツい物言いをするなよ。まるで小物だぞ。」
弱そう。語のテンポがあまりにも悪い。「物言い」「小物」と私が使わなそうな言葉が二つも入っていてドキドキする。何をかっこいいと思うかが人によって違い、同じ内容でも使われる言葉がこんなに変わることのいい証左だと思う。回答者の、
>「時には洒落た言い回しよりシンプルで簡単な言葉のほうがいい時もありますからね」
が、簡潔で良い。
○
言葉は、まだまだ、面白い…………。
(終わり)