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「頼むから静かにしてくれ」の読書感想文

レイモンド・カーバー著、村上春樹訳「頼むから静かにしてくれ」を読みました。
非日常的なイベントや事件は起こるわけでもないのに登場人物たちの会話や行動からはそれぞれが抱える不安、すぐそばにいる人物に上手く自分の気持ち伝えられないもどかしさが頭の中に浮かびます。
失業中で落ち込んでいる男の話が多い中で最も好きなのは学校をサボって魚釣り出かける男の子の「サマー・スティール・ヘッド(夏ニジマス)❲原題:Nobody Said Anything❳」。
大人の世界に強い憧れを持ちながら、子供っぽい魚釣りに熱中する。大人と子供が混ざった感じがそんな事もあるよなと思いました。
失業中でお金は無いのにバーで酒を飲んだり、大人らしくない行動をする登場人物に感情移入をしてみたり。説明を省略した文章の生ぬるい文章の楽しみ方を凝縮したような小説でした。
村上春樹さんの翻訳を上手なのかなとも思います。原文を確認していないので確実ではありません。しかし、原文から日本語の中で意味の近い言葉を当てはめようとしても長い文章だと言葉同士がおかしな化学反応を起こして上手くいかないことがあります。原作者は基本的に日本語に翻訳されることを考慮して作品を描きません。
エミリ・ブロンテ著「嵐が丘」ではヒースクリフがロックウェルを自分の館に招き入れる冒頭の場面で出版社によってヒースクリフのセリフが全部違うなこともありました。
非常に読みやすく、それぞれの言葉がひとつの塊として頭の中に吸い込まれていく、不思議な感覚です。村上春樹さんの凄さなのかなと思います。


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