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つみきとパフォーマンスのコラボレーション企画 「風見鶏」 荻野雅之さんにインタビュー!「その1」

今回はJapan Entertainment TOKYOがお届けする、つみきとパフォーマンスのコラボレーション企画「風見鶏」の中の催しのひとつ「つみき遊び」にてつみき指導をしていただく、荻野雅之さんに制作の惡澤からインタビューをさせていただきました。

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惡澤:
「風見鶏」という公演は第一部、第二部、と分けられています。第一部がつみき遊び、第二部がパフォーマンスとして、パフォーマーたちが第一部で組み立てたつみきの中でパフォーマンスする。独立した演目ではあるけれども、繋げて見るとより楽しめる、という企画になります。
その中で荻野さんは第一部、つみき遊びの方で指導をしていただきます。荻野さんがどういう方か、皆様にお伝えできればと思います。簡単に自己紹介をお願いします。

荻野さん:
生まれは北海道で・・・高校卒業まで北海道にいました。
ニセコ町という雪の深いところで、12月から4月まで雪のある生活で育ちました。冬の雪の世界の、自然の面白さが今のものづくりに影響を与えていると考えています。
大学は東京です。法政大学の応用経済学科というところで勉強をしていまして、学生運動の激しい時代に入学しました。その後ベトナム戦争も起こり、沖縄が米軍の軍用物資の支援基地になっていたりして、「果たしてこのままでいいんだろうか?」と考える。そんな青春時代を過ごしていました。
その後、訳あってインドに4年くらいいて・・・(笑)。これは仕事でです。駐在員として暮らしていました。
そしてインドから帰り、横浜の会社に勤めました。当時、長女は小学校一年生で、長女も横浜の小学校に入ることになりました。ところが、そこが自然が全くない環境で・・・、うちの奥さんが、この環境でうちの子供に、いい教育が行われるんだろうか?と考えた。
横浜から引っ越して、もっといい学習環境のところを探そうということで、その頃からモンテッソーリ教育とか、・・・うちの奥さんが、教育本を真剣に読んでました。つみきという幼児教育も絡んだ活動に至るのは、そこが根本かもしれません。

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惡澤:
美術大学を出て、美術家になって・・・というキャリアでは無かったんですね。

荻野さん:
全然。ただ、私のお袋の実家のおじいちゃんが、宮大工の棟梁だったんですよ。うちの家系は誰も彼の後を継いでいない。けれども、ものづくりに関しては、隔世遺伝的に私が出た訳ですね。

惡澤:
おじいさんのお仕事を、子供の時から間近で見ていたりしたのでしょうか?

荻野さん:
見ていないですね。見ていないけど、子供の時から宮大工の棟梁だったというのは聞いていて・・・私も大人になってこういう仕事をしてから、宮大工がどれだけ大変か気づきました。寺社仏閣を新しく作るんじゃなくて、歴史を踏襲しながら次の時代にふさわしく作り直す、ということ・・・伝統の技を踏襲しながらも、次に続く新しい発想も求められている仕事のような気がします。
私にも、ものづくりの血筋、血潮・・・遺伝子はあったんだろうなぁ。人が喜ぶものを作る、自分が作っていて飽きない、という原則論は、今の時代の私も持っています。また、子供達につみきを渡す時に、新しいものづくりの世界に手渡す、という考え方もしています。

惡澤:
宮大工のDNAが、荻野さんにも入っているということですね。

荻野さん:
いえ、私が勝手に思ってるんですけどね。昔は自信過剰で・・・まあ、作り手というのは大体自信過剰じゃないといけないんですが。私もつみきと出会うまで、そういうタイプでした。

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惡澤:
会社勤めの期間を経験した後で、つみきを作り始めたということですよね。

荻野さん:
先ほどもお伝えしたように、都会の学校を出て違う学校を探そうということになり、長野県に子供を入れたいと思えた学校を見つけました。その時わたしも一緒に長野へ行くため、会社を辞めて、就職のため、家具の制作を勉強できる学校に入りました。椅子やテーブルを作るという作業をゼロから教わり、その後、家具を作る仕事を始めました。ちなみに娘の学校は面白い総合教育の学校でね、北アルプスが目の前で・・・ヤギを飼うんですよ。ヤギの冬場の餌をどう確保するか、という授業もあったりした。算数とか国語の授業だけじゃなかったんですね。実体験を伴った算数の原理をそこで勉強できたりして、そこに親も大いに参加できた。そこで子供達に考えてもらう仕組みの大切さを会得したのが、今のつみき遊びに繋がっていると思います。

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惡澤:
つみきとはどのように巡り会ったのでしょうか。

荻野さん:
山梨の清里に、ポール・ラッシュ祭というイベントがあります。これは清里では有名な、全国規模の収穫祭のイベントで、2日間で大体3万人くらい来ます。そこで色々な催しや、イベントのブースを参加者が作れるわけです。今から25年前、長女が中学生くらい、長男が小学6年生のときかな。家族でそこに行こうとしていたら、1週間前にうちの子供達から、 そこには大人が楽しめる道具立てはあるのに、子供が集まる道具がない、と言われました。 親父が、子供が楽しく時間を過ごせるものを作って出展できるなら、ポール・ラッシュ祭に行ってもいい、できなければ行かない、と言われました。それまで私は、子供のおもちゃは全然作っていなかった。家具ばっかり作っていたんです。
その時私らの仕事場には、木工機械があって、材木がある。でも材木は家具材なので、とても高いのね。でもたまたまあった素材があって、それがヒノキの間伐材。お金はもうもらって納品しているので、残った材料は自由に使ってよかったわけですね。

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子供につまり「おもちゃみたいなものを作れ」と言われたその夜は、ちょっとカチンときながら仕事場に戻りました。

惡澤:
ということは、その時は気持ちとしては嫌々だったんでしょうか?

荻野さん:
嫌々だったです。やっぱりプライドがありましたからね。「おもちゃなんて」という気持ちはありました。でもイベントには家族と一緒に行く、というのが私にとって大切なことなので、これをクリアしなければいけない。何かないかな、と考えて思ったのは、ヒノキの間伐材の材料があること、そして、この材料を生かしてすぐ思いついたのが、「つみき」だったんですね。家具の発注のお礼として、何セットか木片をプレゼントしていたことはあったんです。オブジェとしての木片、ですね。当時、それを使った遊び方も多少は考案していたのですが、その頃はせいぜい作っても50個とか。でも家族が「ポール・ラッシュ祭に行ってもいいよ」というところまでいくには、ちょっと数を作らなければいかんな、と言って、内緒で1週間工房に詰めて、できた数が2500個。スーパーに行って、空の段ボールを2-3箱もらってきて、それをぎゅうぎゅうに詰めて、工房から家に行って、家族に見せました。とりあえず、できたから行こうぜ、と。子供は仕方ない、親父も少しは前進したんだろう、と言って翌日会場に行って、板のテーブルを2-3台作って、その上に雑然と2500個のつみきを置きました。わたしはこれで役目は終わった、と思ったんです。家族は来たし。
そしてポール・ラッシュ祭が始まって、お客さんが来ました。そしたらなんと、うちのつみきのテーブルを、小学生が見つけるわけですよ。割と早めにテーブルが埋まりまして、・・・テーブルの周りに子供が隙間なく並ぶ。で、ひとり抜けるじゃない?そしたら次々にまた子供がやってくる。そんな状況が2日間。そしておまけに、親御さんやおじいちゃんたちがデジタルカメラを持っている。一生懸命こどもがつみきを積んでいる姿を撮ろうとするんですね。もう意外中の意外でした。
また、いつもこの話をするんだけど、名古屋の小学校5年の少年が、つみきをしに2日間来てくれていたんです。聞いたんですよ。「なぜあなたは2日間もつみき遊びに来たの?」って。そしたら、「崩れるから面白い」って。会場は風は吹くし、テーブルもガタガタ。周りにもこどもがたむろっている。
その子はブロックのおもちゃが好きなんですよ。ブロックは崩れないようにできている。はめ込むものです。あれは造形の発展する読みを必要としている。でも、うちのつみき遊びはかみ合うところがない。一生懸命積んでも、風や揺れに儚くも崩れてしまう。
だけど子供たちは誰一人として怒らない。普通だったら熱くなるでしょ?だけどそれがなかった。子供たちは崩れても大丈夫だ、と悟ってくれたんですね。それが大発見だった。

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(インタビュー「その2」へ続く!)

https://note.com/je_tokyo/n/na1606fb5b795


つみきとパフォーマンスのコラボレーション企画「風見鶏」
果たせなかった想い、伝えられなかった想い、あの時こうしていたらという後悔や、過去の歴史の出来事から想像で作り出した架空のif。
元々は「風に向かって雄々しく立つ」という意味を持っていたけれど、昨今では、くるくると方向や立場を変える人の例えや日和見主義者などの意味を含む「風見鶏」をイメージし、過去と向き合い、今をふまえつつ、未来への想いを描くパフォーマンス作品。
「ディバイジング」による創作です。


*パフォーマンスの各回に先んじて「つみき遊びイベント」を実施します。皆様と共に組み立てた「つみき」をセットの一部として、公演中に用います。
つみき指導:「木楽舎つみ木研究所」荻野雅之(おぎのまさゆき)


【公演詳細】
場所
パルテノン多摩市民ギャラリー
〒206-0033 東京都多摩市落合2丁目35番地
日程 
2022年10月14日(金)~16日(日)
全席自由


*つみき遊びイベントとパフォーマンスの間の休憩では、舞台転換のため、すべてのお客様に客席外に一度ご退出いただきます。
つみき遊びからパフォーマンスまで、連続でのご観覧をされるお客様は、休憩後優先的にお席にご案内するお時間を設けます。


***


10月14日(金)

つみき遊びイベント: 18時~19時30分
パフォーマンス: 20時~21時
10月15日(土)

つみき遊びイベント: 11時~12時30分
パフォーマンス: 13時~14時

つみき遊びイベント: 17時~18時30分
パフォーマンス: 19時~20時
10月16日(日)

つみき遊びイベント: 11時~12時30分
パフォーマンス: 13時~14時

つみき遊びイベント: 16時~17時30分
パフォーマンス: 18時~19時


チケット料金
*学生は中学生、高校生、大学生、大学院生、専門学校生等を指します。


公演&つみきチケット
大人 ¥4500/ 学生 ¥3500/ 小学生 ¥2000
つみき単発チケット
大人 ¥2000/ 学生 ¥1500/ 小学生 ¥1000
公演単発チケット
大人 ¥3500/ 学生 ¥2500/ 小学生 ¥1500


*当日券は各値段から+¥500分のお値段で販売いたします。
*0歳〜2歳までのお子様について、保護者の方の膝上鑑賞は無料です。お座席が必要なお子様は小学生以下の料金でご案内いたします。


出演者名義チケット
http://confetti-web.com/tsumiki-cast/
一般チケット
http://confetti-web.com/tsumiki/


演出 櫻井麻樹
出演
木原萌花
大迫健司
土屋詩織
樋笠理子
松永佳子
演奏 Hitomi*
つみき指導 荻野雅之


衣装 kuuki
舞台美術 森聖一郎
舞台監督 野口清和
照明 岡村尚隆 (リザ・プロジェクト)
宣伝美術 Minako Akutsu
制作 惡澤仁美
主催 一般社団法人ジャパンエンターテイメント東京
企画 千夜二夜
文化庁「ARTS for the future! 2」補助対象事業


*受付開始は開演の45分前、開場は開演の30分前です。
*開演時間を過ぎてのご来場は、ご希望の座席へのご案内ができかねますのでご注意ください。
*新型コロナウイルス感染症対策のため、マスク着用、手指消毒、検温にご協力をお願いします。

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