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021 人事部員の安易なアドバイスには要注意

人事部には様々な相談が日々舞い込んできますが、相談対応のスタンスをきちんと持つことが大事です。よい相談対応をするためには、①安易なアドバイスはしない、②安易な同調はしない、この2つはまずは大切です。今回は前者の「安易なアドバイスはしない」について説明したいと思います。

まず、人事部員としてそれらしいアドバイスをするというのは、する側にとっては結構、気持ちがいいものです。そして、働いた感を得られます。つまり、安易なアドバイスとは、実は相手のためではなく、無意志のうちに自分を満足させるためにしがちなのです。本当に相手のことを真摯に考えたら、そうそう簡単にはアドバイスなどできません。相談者の捉え方は真っ当だろうか、どこかに認知の歪みはないだろうか、語られていない重要な話はないだろうか、別の当事者は真逆のことを言ったりしないだろうか、などなど。真摯に相手に向かえば、どれだけ話を聞いても、そう簡単には?は消えないはずです。表面的に語られたことを素直に真に受けてアドバイスをすることはなかなか危険なことなのです。

もう1つ、アドバイスという行為は無責任にできるのも問題です。アドバイスは言うのも勝手、従うか従わないかも勝手です。双方に責任が生じません。なので、安易にできてしまうのですが、本当に相手に変わってもらいたいと思ったら、アドバイスではなく「指導」のレベルで関わってはどうでしょうか。指導には双方に責任が伴います。ちょっと指導までは…と思うなら、なぜ指導は躊躇してアドバイスは安易にできるのか、自分の心としっかりと対話をするのがよいでしょう。

もし自分が結構、安易にアドバイスをするときがあるなと感じたは、人事部の立ち位置をもう一度、あらためて整理してみてはどうでしょうか。社員にあれこれと言う1つ上の立場的にいなければならないと無意識に感じていたりする危険があります。私達の基本的な立ち位置は「支援」です。ベンチの横に座って同じ景色をみている関係性です。本当に支援的な気持ちになれば、安易なアドバイスはできなくなるはずです。

さらに安易なアドバイスがいけない理由を2つほど。この2つの理由が実は最も大きいので。何よりも、安易なアドバイスは相手の自律的な心を失わせます。これは本当にまずいです。安易なアドバイスをした相手が、またアドバイスを求めてやってくることについて、安易にアドバイスをしがちな人は自己効力感をもって歡迎してしまいがちです。しかし、私たちがやるべきことは、アドバイスを求めずに自律して自分で考え自分で解決できる社員です。そのプロセスでアドバイスを求めにくるのはもちろん良いですが、相手をアドバイス漬けにして、自分は有能感を得て、相手の成長機会を奪うということになりかねないのです。

もう1つ強い意識しないとまずいのは、アドバイスを求めてくる上司との関係性です。特に上司との関係の問題や上司への文句をいってくるタイプの相談の場合、ほんとうに丁寧に言葉を選んでいかないと、上司批判に同調・賛同することになりかねません。相談者の頭の中には「人事の人も自分の気持ちを理解してくれた。やはり悪いのは上司の方だ」ということだけが残ります。これはものすごく上司のプレゼンスを下げる行為です。人事部に今、最も求められていることの1つは現場の管理職支援です。これと真っ向から逆行することになりかねないのです。

人事部長、引継ぎシリーズNo.21


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