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自分の認知次第 他人も過去も変えられる ~日経産業新聞 HRマネジメントを考える (2020.01)

日経産業新聞水曜日のリレー連載「HRマネジメントを考える」です。今週、新しいものが掲載されたのですが、またまた前回の奴を引用していなかったので、引用します。認知についてです。私たちキャリアカウンセラーはまさにクライアントの認知に介入する仕事ですね。私たちは主観世界に生きています。自らの主観に悩まされ、苦しんでいます。

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日経産業新聞 HRマネジメントを考える (2020.01)*************************************
自分の認知次第 ~他人も過去も変えられる 
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「他人と過去は変えられないが、自分と未来は変えられる」。交流分析を提唱したカナダ出身の精神科医であり心理学者であるエリック・バーンの言葉で、多くの人が引用しています。確かに過去は過ぎ去ったもの、他人は自分の手の及ばないものと考えると、変えることはできません。
それに対して、自分の行動は自分で決めるのですから、変えられるわけです。自分の未来も自分が決めるのですから、変えられるわけです。何かに悩んでいる人に対して、視点を変えたり、励ましたりするために、しばしば使われる言葉です。
でも過去は変えられるのです。実際、私たちは日常的に無意識にそれを実行しています。皆さん、「昔は良かった」と若い時代に思いをはせることがあるでしょう。良いことも、つらいこともあったはずなのですが、良かったことが強調され、嫌な思い出は薄れて郷愁が残るのです。過去を美化しているわけです。
過去に対する認識は、過去にあったことを今の自分がどう認知しているかによって変わります。極端な話、忘れてしまった過去はすでに「なかった過去」なのです。私たちは世界を主観的にとらえるので、過去に対する認識が変わると、本人にとっては過去が変ったのと同じことになるわけです。もちろん、事実そのものは何ら変わってはいないのですが。
その時は本当に辛かったプロジェクトの経験も振り返れば充実した日々だったと感じることがあります。過去をどう意味づけるかで過去は変えられるのです。これが人間の秘めたる力です。
同じようなストレス環境にあっても、心身のバランスを崩す人と、そうでない人がいます。これはストレス源をどう認知して、それに対処できるかの差です。ストレスに満ちた今の時代、上手にストレスに対処する術を知ることは、生きていくために必要です。認知の力で過去を変えるというのは、このストレスへの対処の方法とつながるところがあります。
このロジックで考えると、過去と同様に他人も変えることができます。これには二つの意味があります。
まず部下に細かく干渉するマイクロマネジメントの上司がいたとします。これを「面倒だ、嫌だ」とだけ認知するのか、面倒だがそれなりに勉強になり、自分のラフな仕事のやり方を見直す機会になる、そもそもずっとこの上司と付き合うわけじゃないと思えば、相手は違った人に見えてきます。自分の認知によって相手は変るのです。
面白いもので認知上の相手が変わると、徐々にリアルの相手も変わってきます。これが二つ目の意味です。上司に対する認知が変ることで、自分自身の行動が変わり、結果的に相手が変わってくるのです。いつまでも「面倒だ、嫌だ」と不満をこぼしていたのでは、この循環は起きません。
私たちは客観的な世界に生きているようにみえて、自分自身の主観世界に生きています。同じ出来事があっても、それをどうとらえるかは本人次第。そうであれば、できる限り自分が生きやすいように捉えることができれば自分が楽になり、周囲も楽になるはずです。
でも、この当たり前のことが難しい。それは、私たちが大なり小なり様々な思いや信念を持っているからです。意地やメンツも邪魔をします。生きづらい信念をどう変えていくのか、私たちにとって必要な力です。

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