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白米の量と糖尿病に関するエビデンス

これまで多くのシステマティックレビュー(SR)を紹介してきましたが、今回は大規模コホート研究を紹介します。

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Bhavadharini B, Mohan V, Dehghan M, Rangarajan S, Swaminathan S, Rosengren A, et al. 2020. White rice intake and incident diabetes: A study of 132,373 participants in 21 countries. Diabetes Care 43:2643-2650.

目的
白米摂取と糖尿病発症との関連性に関するこれまでの前向き研究は、矛盾した結果を示しているが、単一の国で、主にアジアで実施されたものである。
我々は,多国間のProspective Urban Rural Epidemiology(PURE)研究において,白米と糖尿病のリスクとの関連を報告する。


研究デザインと方法
21か国の35~70歳の132,373人のデータを分析した。白米(炊飯)の摂取量は、1日1合150gの炊飯を基準に、150g未満、150~300g未満、300~450g未満、450g以上に分類された(注:それぞれ茶わん1杯未満、1~2杯、2~3杯、3杯以上に相当する)。ハザード比(HR)は,多変量Coxハザードモデルを用いて算出した。


結果
平均9.5年の追跡期間中に,ベースラインで糖尿病を発症していなかった6,129人が新たに糖尿病を発症した。コホート全体では,白米の摂取量が多い(150g/日未満の群と比較した450g/日以上の群)と,糖尿病のリスクが高くなった(HR 1.20,95%CI 1.02-1.40,P for trend 0.003)。
しかし、最もリスクが高かったのは南アジアであり(HR 1.61;95%CI 1.13-2.30;P for trend 0.02)、次いで世界の他の地域(東南アジア、中東、南米、北米、欧州、アフリカ)であった(HR 1. 41;95%CI 1.08-1.86;P for trend 0.01)、一方、中国では有意な関連は見られなかった(HR 1.04;95%CI 0.77-1.40;P for trend 0.38)。


結論
白米の消費量が多いと、糖尿病発症リスクが高くなり、南アジアで最も強い関連性が認められた。その他の地域では緩やかな関連性ありもしくは有意ではなかった。

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人種の差があるといえど、1日白米3杯以上、つまり毎食をごはんにしていれば糖尿病リスクが増加するとは、米派の人間にとってはなんとも厳しい結果です。

なお、観察研究は一般的にはSRやランダム化比較試験(RCT)よりもエビデンスレベルは低いと言われています。一方で長期間の観察を要すもしくは倫理的に難しいなどの問題で介入を行えない、つまりRCTを行えないような研究の時には効果を発揮します。しかし、患者の背景因子を制御できず交絡やバイアスのリスクは常に付きまといます。その点を注意して解釈をする必要があります。

白米を10年間たくさん食べ続ける群とそうでない群を作り介入する、といったことは実験研究として行うことは難しいです。こういった観察研究は非常に重要な意義を持ちますね。


参考文献
Robert H. Fletcher, Suzanne W. Fletcher, Grant A Fletcher. 訳:福井次矢, 臨床疫学EBM実践のための必須知識第3版,第5章 

(文責:山上)

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