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上半期 主観作品セレクション 前編

皆さんおはこんばんにちは!
(4981文字/約6分で読めると思います)

「今年の夏暑くない??」という話題になったものの、そこまで暑さを感じていなぁと思ったところ、去年は在宅が中心だったので、夏の時期もほとんどクーラーの効いた部屋で過ごしていたこともあり、暑さよりも、夏らしい日に外に出れる幸せの度合いがまだ勝ってるんだなと感じた今日この頃です。

そんな2021年も気付けば7月に突入していて、いよいよ後半戦という感じですが、この区切りで自分自身の振り返りもしたいなぁと思い立ちまして、とはいえ仕事なり、プライベートの話をただツラツラと振り返るだけでは虚しいよなぁと思いつつ。。

なんとなく一番最初に書いた記事を振り返ってみたら、「説明できる感動"の構成要素をできる限り細かく捉えていきたいと思っています」的なことを書いてまして、日々自分が面白いと思ったことや、新しい気付きなどを書いていくnoteにしたいという思惑もあるので、上半期で観てきた個展やら展覧会やらで印象的だった作品、作家さんを振り返ってみようと思います。


とはいえ、情報というより、極めて主観のになりそうなので、お時間ある方、最近の個展情報とかに興味がある方はぜひ一読頂いて、そういうのに興味あるならこういう人、作品も面白いかもねぇみたいな情報もコメントで頂けると泣いて喜びます。

上半期で行った展覧会、個展は以下の通りでして、

「眠り展:アートと生きること」 @東京都国立近代美術館
「透明な力たち」 @東京都現代美術館
「琳派と印象派 東⻄都市文化が生んだ美術」 @アーティゾン美術館
「えんとつ町のプペル ができるまで展」 @HMV museum
「トランスレーションズ展 −『わかりあえなさ』をわかりあおう」
                   @21_21 DESIGN SIGHT
「佐藤可士和展」 @国立新美術館
「トライアローグ 語らう3つのコレクション」@横浜美術館
「まちへ出よう展」 @ワタリウム美術館
「ライゾマティクス_マルチプレックス」@東京都現代美術館
「20世紀のポスター[図像と文字の風景]」 @東京都庭園美術館
「OKETA COLLECTION: 4G」 @SPIRAL GAREDN
「KYNE KAIKAI KIKI」 @Kaikai Kiki Gallery
「LOUIS VUITTON &」 @LOUIS VUITTON 表参道
「JAGDA新人賞展2021」@Garraly G8
「脱線図」 @TS4312
「JAPAN」 @MAKI Collection
「Media Ambition Tokyo 2021」@東京シティビュー
「ライアンガンダー氏が選んだ収蔵品展」
               @東京オペラシティアートギャラリー
「イサム・ノグチ 発見の道」 @東京都美術館

こうして見てみると、そこまで偏りなくいろいろ観に行ってるなぁと我ながら思いましたが、この中でビビッときたものを一挙に振り返っていこうと思います!

印象的な作家・作品たち

クリスト・ジャンヌ=クロード
公共空間でのパブリックアート
@トライアローグ  語らう3つのコレクションにて鑑賞

ご夫婦で活動されていたクリストさん、クロードさんの作品の特徴はなんといってもその規模感で、展示で拝見したときには作品の写真や過程の資料が中心でしたが、それもそのはずとにかくお二人の作品は、道路から建物、橋、そして自然環境を舞台とした大掛かりなプロジェクトばかりで、一つの展示スペースにおいて鑑賞できるような代物ではありません。

ライヒスターク

ドイツ、ベルリンの旧帝国議会議事堂を布で包んだ「包まれたライヒスターク」は一見すれば一つの建物を覆うように布を被せただけかと思いがちですが、よく考えてみればドイツの国会議事堂です。しかもお二人はドイツ人で縁があるわけでもありません。

日本の国会議事堂で想像すると分かりやすいかもしれませんが、ああいった国が所有している権威的な建造物に布を掛けるという作業です。普通なら却下されますし、許可されても一体どうやってこれほどの規模の建造物を布で覆うのかその手段も考えなければなりません。

お二人の凄いところは、とにかく粘りまくる所と、Goサインが出たらすぐに実現へともっていく、圧倒的実行力にあると思い、このライヒスタークに至っては25年という歳月をかけて交渉し、展示期間は2週間、包むのに使った布やロープの材料費は7億円、結果的に500万人もの鑑賞者を集めるというもう圧倒的規模感を感じさせる数字のオンパレードです。

作品自体の壮大もさることながら、その過程での交渉術も脱帽ものでして、茨城、里見村に突如現れた1340本の青い傘の群れ「アンブレラ」では、地権者459人の許可を取り、その過程で6000杯の緑茶を飲んだそうです。
当時は小学生にまでも丁寧に説明したその姿勢は、作品への執念と言いますか、その過程を知ることで作品の意義が大きく変わる気がします。

許可を得ていく過程で、たくさんの、様々な立場の人たちと膨大な議論をする。それによってプロジェクトはアイデンティティーを獲得していくのです。

とクリスト氏が述べているように、長い長い交渉の過程を経て花開くような作品は、その見た目のインパクト以上の心の揺さぶりを生み、展示期間が過ぎれば、展示に使用された材料などは解体後、リサイクルに回され、その景色を二度とみることはできないからこそ生まれる刹那的な感動というものは色濃い感動体験として残るんだろうなぁと感じました。

「そりゃやれたら面白そうだけど、実現できるわけないよね」というようなアイデアをストレートに地で実現させていく、「アートは、楽しさと美しさだ」というお二人の姿勢がとても好きでした。クロードさんは2009年に、クリストさんは2020年6月に逝去されお二人の作品がもう見れないと思うととても残念ですが。。(一度は生で見たかった涙)

アンブレラ


■ キース・ヘリング
1980年代のアメリカ美術を代表するグラフィティアーティスト
@まちへ出よう展にて鑑賞

誰でも一度は見たことであるポップで見るだけで陽気な気分になれるデザインが特徴のヘリング氏。恥ずかしながらここで見るまで彼の名前と作品が一定していませんでしたが、知った時には、あぁー!この人がキース・ヘリング!となりました。実際に展示されていた壁画↓

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ニューヨークの地下鉄構内にあった、未使用の広告板を使い、通称サブウェイドローイングというグラフィティ・アートから始まった彼の作品は、通勤客の目に留まるところから、個展へと広がりを見せ、国際的にも高く評価されていきました。

ヘリング氏の作風としては、社会的・政治的な問題をテーマとした作品を制作が多いものの、チョーク・アウトライン形式という、(犯罪現場で被害者の周りを覆う白いチョークの線)大胆な色彩が使われており、どこかポップな優しさを感じることができます。

「まちへ出よう」展で展示されていた壁画は、1932年2月、同じくワタリウム美術館で日本初の個展を開催したときに、下書きなしかつ1日で描き上げという壮大な作品の一部でしたが、今思えばとても貴重なものだったと実感しています。

インタビュー動画内では、自分の作品について以下のように述べていました。

僕の絵は、何か特定のメッセージがあるわけでもなく
どんな年代、どの国、どんな人種の人達が見てもわかるように
ダイレクトでしかもハッピーな何かなんだ
核戦争の問題や、社会には深刻な問題がいっぱいあるけれど
そうしたものを乗り越えて、ハッピーな感情が僕を絵を見てくれる人みんなに一瞬で伝わることを目指したんだ

まさにハッピーな感情になれる画風で、ダイレクトでしかもハッピーな何かというシンプルでストレートな言葉、そんな姿勢で生まれた作品がとても好きになりました。粘り強く思考して、言語化していく過程も大切ですが、ざっくりとハッピーな何かという直感的な感覚も大切にしていきたいですね。


■ 窪田新
グラフィックデザイナー
@日本グラフィックデザイナー協会、JAGDAの新人賞展2021にて拝見

広告という、今まで見てきたアートとはまた違った視点でのデザインを鑑賞しに行った際に、自分の中で印象的な作品が多かったのが窪田さんでして、広告という企業と人との媒介を担うメディアにおいて、優しさとおしゃれが共存しているデザインが多く、ノイズにもなり得る広告のイメージがデザインだけでここまで変わるのかと気付かされました。

HEARTLANDと縁のある飲食店、100店舗にそれぞれ別のポスターを貼り、それらを繋ぎ合わせると、HEARTLANDのシンボルでもある「BIG TREE」の年輪が断面図として浮かび上がってくる「SLICE OF HEARTLAND」。

ビールを愛するすべての人の「止まり木」でありたいというハートランドの理念を丁寧に再現し、提供する飲食店と、ユーザとの関係性までも考慮したプロモーションとは思えない一つの作品のようで、デザインの力を感じました。

静岡新聞「人生、山折り谷折り新聞」は、2020年の仕事始めの年始の挨拶を粋に表現した一作。

人生いろいろありますが山あり谷ありだから面白い。仕事始めにそんな希望の後押しをしたい、でも照れくさいから山折り、谷折りしないと読めない仕掛けです。今年も静岡新聞は新聞広告で静岡を応援します。

というユーモアと粋な仕掛けが詰まった新聞で、いわば新聞広告の一つではあるものの、新聞自体を折るという動作がつながりつつ、折ることで文字が出てくるという、ビジュアルから、動作までが一貫してデザインされている感じがとても好きでした。

山織田にロイ

日本花き振興協議会の「Okulete gommen」プロジェクト。
お祝い事で花束を送ることは珍しくはないけど、どこか照れもある行為を後押ししてくれる優しさの詰まった企画。お祝いそびれてしまったことを「遅れてごめん!」というユーモアさでカバーし、ポジティブな行為へ自然と変換されているのがいいですよね。

お祝いそびれという少し気まずさもある行為を、「お祝いそびれた!ごめん」という直球の土下座スタイルなど、詫びているがどこか愛らしいデザインによって温かくされているところが凄いし、個人的にはこの動画CMをお笑いトリオのハナコのお三方が務められているのがとてもほっこりしました。

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最近では、Web広告やパーソナライズ広告も増えて、いいなと思える広告もあればそうではない雑音のような広告も増えたなぁと思っていたところに、窪田さんの作品との出会いがありまして。

広告といえども、法人という目には見えない組織の考え方や理念というものを伝える消費者との架け橋のような存在であって、配慮や優しさの行き届いたデザインであれば煩わしいどころか、むしろその企業のファンになってしまうそんなデザインの可能性を感じさせて頂きました。。

後編に続きます笑

上半期といいつつ、色々思い出しながら書いていたら結局3名しか取り上げられなかったので、後編的な感じで来週に持ち越そうかなと思います笑

こうして振り返ってみると、「これは絶対面白そう!」と思って行ったものから、「これはどうなんだろう。。?」という未知のものまで、鑑賞前の期待値みたいなものは割とバラバラだったなぁと思い、ただ、それぞれの展示で今まで触れてこなかったような作品、作家さんに出会うことで、あのデザインはあの人だったのか!など、過去の記憶が結びつくタイミングがあったり、、

あれ、この作品実はめちゃくちゃ面白いんじゃないか?というこれまでは自分の琴線に触れてこなかったようなものが急に響いたりと、鑑賞体験というのは、めちゃくちゃ生モノの体験だなぁと改めて実感しました。

生モノだからこそ、自分の感性がリアルタイムで更新されていく感じがとても刺激的ですし、自分の関心にまだ引っ掛かっていないものであっても、作品に触れることで一気に引き込まれたりするので、(これが堪らない)これからもあまり選り好みせず、積極的に色んな作品、デザインに触れていければと思いました!

こんな主観の話をわざわざ読んでいただき有り難うございました!来週は後編ですのでそちらもよろしければ。。!ではまた!

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