ノーマライゼーションカップで、女子日本代表の成長を見せたい|鈴木里佳選手
2月19日(土)に「さいたま市ノーマライゼーションカップ2022」が開催されます。ブラインドサッカー女子日本代表が、ユーストレセンチームと対決します。
もともと競技人口が少ない女子ブラインドサッカー。女子日本代表チームも、コロナ禍で集まることが難しく、活動を休止を余儀なくされました。そんなブラインドサッカー女子日本代表にとっては、さいたま市ノーマライゼーションカップ2022が、約2年ぶりの大会になります。
今回は、前体制で女子日本代表チームのキャプテンを務めていた鈴木里佳選手(弱視/コルジャ仙台ブラインドサッカークラブ)にインタビュー。女子日本代表が活動休止していたあいだの胸中や、山本夏幹新監督のもと再スタートを切るチームについて、話を聞きました!
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コロナ禍は自分を見つめ直す期間に
ーーコロナ禍に入り、対面での練習が困難となったブラインドサッカー女子日本代表は、しばらく活動を休止していました。そのときの気持ちを教えてください?
2020年のはじめごろは、私個人としてプレーがうまくいっていない時期でした。そのため、コロナ禍で女子日本代表が活動休止になったときは、一度ブラインドサッカーから離れて自分を見つめ直してみようと思いました。ブラインドサッカーの良さや、これから私が活動していく意味を改めて考えました。
ーーナイジェリアで予定されていた「第1回ブラインドサッカー女子世界選手権」も中止になりました。
初めての世界選手権で優勝することをチームの目標にしていたので、とても残念な気持ちでした。いつ次の大会が行われるのかわからない状況で、モヤモヤした気持ちはありましたね。
ーーコロナ禍では、鈴木選手はどういうことをしてきましたか?
はじめの自粛期間では、自主トレーニングが中心でした。課題だった持久力強化のために、心肺機能を上げることを意識して、自宅でフィジカルトレーニングや、外でランニングをしていました。少し社会の状況が落ち着いてからは、ジムでトレーニングをしていました。
その後、所属チーム(コルジャ仙台ブラインドサッカークラブ)の練習が再開してからは、ボールを使って複数人で練習することができました。
また、女子日本代表チームのメンバーとはオンラインミーティングで、活動休止前に取り組んでいたことの再確認をしていました。
さいたま市ノーマライゼーションカップ2022にむけて
ーーブラインドサッカー女子日本代表は、2017年4月に発足しました。鈴木選手は、発足当初から活躍されていますが、女子日本代表チームのこれまでの歩みについて教えてください。
女子日本代表が発足したとき、メンバーのなかにはブラインドサッカーのプレー経験がほとんどない人もいました。ボールを蹴ることすらままならないといった状況で、ゼロからのスタートといった感じでした。
そこから技術面や戦術面の練習を重ねて、少しずつブラインドサッカーができるようになっていきました。しばらくの間は、監督やコーチから指示されたことをすることだけで精一杯でしたが、いまでは選手たちが自分たちは何をやりたいのか、どうしたいかなどを話し合えるえるチームになっています。
ーー現在のブラインドサッカー女子日本代表の強みは何ですか?
守備面には自信を持っています。女子日本代表はチームとして、声をかけ合うことを特に意識していて、全員がお互いをカバーし合って、安定した守備ができていると思います。
そしてエースの菊島宙選手を中心とした攻撃にも注目してもらいたいです。サッカーの技術はもちろんですが、空間の認知能力がすごいと思います。
ーー今月開催する「さいたま市ノーマライゼーションカップ2022」では、ユーストレセンチームと対戦します。ユーストレセンチームのなかで対戦が楽しみな選手は誰ですか?
何度も一緒に練習をしたことがある、平林太一選手(松本山雅B.F.C.)と矢次祐汰選手(A-pfeile広島BFC)です。
ーー本大会は、障がいの有無に関わらず、誰もがともに暮らすことが出来る「ノーマライゼーション」社会を目指すさいたま市と、日本ブラインドサッカー協会が共催しています。さいたま市が制定している「さいたま市誰もが共に暮らすための障害者の権利の擁護等に関する条例」(通称:ノーマライゼーション条例)についての考えを教えてください。
「誰もが地域で共に暮らせるように」という考え方はとても素晴らしいと思います。障がいに対する理解と配慮があることで、障がい当事者にとって非常に暮らしやすくなり、それが自立心の向上にもつながると感じています。
そうして、一人ひとりが自分の良いところを発揮できる地域は、より活発で豊かになると思います。
ーー鈴木さん自身も、障がいに対する理解と配慮があったことで、自立心が高まったと感じることはありますか?
いまの職場では仕事のなかで私の障がいを理解していただいたうえで、私にできることを評価していただいて、役職をいただいています。責任ある仕事を任せていただくことは、自分のできることを認めていただいているということ。そう思うと、自立心が高まります。
プライベートの場面でも、晴眼者の友人と食事に行ったときに、友人が私にどんなメニューがあるのかを自然に教えてくれたことがありました。友人は私がメニューが見えにくいことは分かってくれていて、私が「メニューを教えて」とお願いする前に、会話のなかで自然とメニューを教えてくれたんです。何気ないことでしたが、とてもうれしくなる出来事でした。
ーー「さいたま市ノーマライゼーションカップ2022」への意気込みを教えてください。
前体制から積み上げてきた守備戦術に、新体制で得られたものを少しでも表現して、ブラサカ女子日本代表の成長を見せられるような試合にしたいです。ぜひ応援よろしくお願いします!
女子ブラインドサッカーの普及にむけて
ーー現在、日本国内のクラブチームでプレーしている選手は369名(※1)います。そのなかで、視覚障がいの女性選手は19名(※2)。毎年少しずつ増えていますが、ブラサカをプレーしている女性は決して多くありません。女性の競技人口を増やすためにどんなことをしていくべきしょうか?
いまは女性の競技人口が少ないため、日本の国内大会は男女混合で行われています。各地域にあるチームも男性が多く、男女混合の環境でプレーを始めると、どうしても激しいプレーに恐怖心が生まれてしまいます。ブラインドサッカーを初めてプレーするのが女性中心の環境であれば、恐怖心は減るのではないかと思います。
昨年の11月には、女子日本代表チームの合宿の2日目に、女性を対象としたオープン練習会を開催しました。そちらには女子日本代表のメンバーを除いて、3名の女子選手が練習に参加してくれました。
「女子日本代表のオープン練習会に参加して、クラブチームに入る」という流れを作っていきたいと思います。
ーーこの記事を読んでいる方のなかには、ブラインドサッカーに興味がある女性もいらっしゃるかもしれません。鈴木選手が感じるブラインドサッカーの魅力を教えてください。
ブラインドサッカーは、視覚障がいの有無に関係なく、フィールドプレーヤー、ゴールキーパー、ガイド、監督が協力して勝利を目指します。そんななかで、相手を思いやることの大切さを感じられるところがこの競技の魅力だと思います。アイマスクをつけていても、味方とのイメージが合ってプレーがつながるときは、とてもうれしいです。
ーー鈴木選手にとって、ブラサカ女子日本代表とはどんな存在ですか?
「ブラインドサッカーをもっとうまくなりたい」「いろいろな人にブラインドサッカーを知ってもらいたい」という前向きなエネルギーをくれる存在です。
ーー最後にこの記事を読んでいる、ブラインドサッカーに興味がある女性に向けてメッセージをお願いします。
ブラインドサッカーをしていると、障がいの有無を超えたていろいろな人と関わることができます。私もこの競技を通じてたくさんの仲間と出会いました。
女子プレーヤーの仲間がもっともっと増えてほしいので、ぜひ試合を観戦したり、実際に体験をしたりしていただけるとうれしいです! いつか一緒にブラインドサッカーができるのを楽しみにしています!
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編集後記
最後までお読みいただき、ありがとうございます。ブラサカマガジン担当の貴戸です。今回は、ブラインドサッカー女子日本代表・山本夏幹新監督の就任コメントを紹介します。
コロナ禍で苦しい思いをしながらも、前を向いて準備をしてきたブラサカ女子日本代表の選手たち。
彼女たちは、大会で優勝を目指すだけではなく、女子ブラサカ全体の発展のために普及・育成活動にも取り組んでいきます。2022年に再始動するブラサカ女子日本代表の戦いを、ぜひ応援してください!
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