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ホラー小説「ケージ~黒い視線~」

【罠に掛かったネズミを逃がしたら、仕返しにやってくる】

 たった一つの言い伝えが、小さな村で平穏に暮らしていた一家に闇をもたらす怪奇ホラー。

◆第一章[黒い視線]あらすじ

 中学生の沙織は、小さな農村で両親と小学生の妹・真結と静かに暮らしていた。
 ある日、納屋でネズミ捕りに掛かったネズミを見付けた真結は、それを逃がしてやった。
 ネズミを逃がしたことを疑われた真結は、厳格な父に叱られるのが怖くて嘘をつくが、父から「罠に掛かったネズミを逃がしたら、仕返しにやってくる」と言われてしまう。
 その晩、真結はシンと静まり返る部屋の天井から、小さな何かが走り回るような音を耳にする。
 その足音に怯えながらも眠りに就く真結。
 
 真結の前に現れた一匹のネズミ。
 やけに人懐こい様子で、手を差し出すとネズミは手の平に乗ってきたが、いつの間にか真結の足元には無数のネズミが群がり、ネズミ達は真結の身体によじ登ってきた。
 そんな悪夢で目を覚ました真結は、姉の沙織にネズミを逃がしたことを告白する。
 それに対して沙織は、ネズミがお礼に来ることはあっても仕返しに来るというのは、単なる父の脅しだと言って真結を安心させようとした。

 しかし、その晩も天井からは再び小さな足音が聞こえる。
 やがて足音が静かになっていくと、今度はカリカリと何かをかじっているような音が聞こえ、天井には小さな穴ができていた。
 穴は次第に大きくなり、そこから何かがこちらを覗き込んでいるような気がした。
 次の瞬間、その穴からボタボタと無数のネズミがベッドへ落ちてくる。
 恐怖で震える真結は、隣の沙織の部屋へ逃げ込む。
 沙織が真結の部屋を見に行くと、ネズミはおろか、天井には何の異変もなかった。
 いまだ小さく震えている真結に、沙織は一緒に寝ることにした。

 深夜を過ぎて、物音で目を覚ました沙織は、隣で寝ているはずの真結がいないのに気付く。
 物音がする真結の部屋に行くと、学習机の下で何かにかじりついている真結がいた。
 何をしているのかと声を掛けた沙織に、振り向いた真結は手にしていたキャベツをボトリと落とし、その瞳は黒く染まっていた。


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