決闘年越しそば【毎週ショートショートnote】
「貴様とは長い因縁だったことだ。
しかし、それも今日で終わる。俺の時代を、草葉の陰から見るがいい!」
赤いきつねは、そう言って抜刀した。
緑のたぬきは刀を納めたまま、赤いきつねの呼吸を見極めながら、回り込むようにゆっくりと歩きながら言った。
「もう、やめにせぬか。儂とおまえでは居場所が違うのだ。
こと、年越しにおいては、おまえは儂に勝てぬ。絶対に。」
「貴様の、そういうところが気に食わぬのよ!!」
赤いきつねは、一息に距離を詰めて斬りかかった。正面からの、袈裟斬り。
入った!
と、思ったのも束の間のこと。
緑のたぬきはわずかに後退しており、届いていない。
「くっ!」
刀を返す、その腕を取られて力を利用された。半ば自分の力で、赤いきつねは5歩も前で転倒した。
「くそっ!」
立ち上がり、構えようとしたが刀がない。
無刀取り。
取られた。刀は、緑のたぬきの手中にあった。
「何故だ! なぜ俺は、貴様に勝てない!」
緑のたぬきは、哀しげに答えを言った。
「うどんなのよ。
おまえは、うどんなのよ。
ゆえに、年越しそばでは、儂に勝てぬ。絶対に。」
決定的だった。赤いきつねは膝から崩れ落ちた。
完
(本文490字)
うどんでは、年越しそば対決では勝てんわな……。