見出し画像

傳統繡花拖鞋 - Traditional Chinese Embroidered Slippers

中国刺繍のついた布靴、或はスリッパ。

恐らく中華圏、というか世界のどこでもいい、チャイナタウンに足を運んだことのあるひとなら誰でも一度は見たことがあるだろうし何なら一足くらいはお家にあったりするだろう。それくらいコモンな「中国物産」である。

そもそも布製の履物は、嘗ての中華圏の装い(長衫*など)とセットで、必需品でありファッションであったわけで。

世界最大のチャイナタウン、と言っても過言ではない街、ここ香港でも勿論存在する。しかも嘗ては中流家庭の人々の生活用品(香港の場合、室内でも二足制とも限らないが何せ楽なのが一番。帰宅したら履き替えるヒトが多い)として、広く普及していた。

ただ、中華圏も例外なく被服の西洋化が進み、伝統的な布靴カルチャーもメジャーではなくなり、この華やかな刺繍靴たちも近代的な西洋式にどんどん気圧されていき、街に並んでいた店舗が一つ消え、二つ消え…。

それでも、香港の場合観光土産的な需要が持続していたという背景もあってか、いくつかの老舗が今でも頑張っている。そのひとつが、日本人向けガイドブックにも必ず掲載されているのでは、という「先達商店 Sindart」

おそらく、店名を聞いたら香港ファンの方は「ああここ知ってる!」と口々に答えるはず。日本向けガイドブックにはほぼ必ず紹介される常連店だし、現地の日本語メディアでもよく取り上げられる。

1958年創業。21世紀に入り創業者のお爺様が亡くなったあと、孫娘のMiru Wong(王嘉琳)氏が香港の伝統工芸を継承すべく奮闘している。現代のライフスタイルへの取入れ提案や布靴のコーディネイト例なんかもご自身で紹介していて、アイディアがなかなか楽しい。

 ↓ Miru Wong氏のInstagram

本店は下町ジョーダン(佐敦)の古い商業ビルの一角にそっと存在している巣ストールだ。狭い香港ならではのローカル設計。


↓ 店内に所狭しと並ぶ各種刺繍スリッパたち。素材はサテン、ビロード(ベルベットというより天鵞絨=ビロードと呼んであげたい)、そして夏用のメッシュと様々。また、最近ではデニム地や輸入プリント生地なんかもあって、バラエティに富んでいる。

画像1

↓ 子供用。とても可愛い。中華系だって「ちいさきものはみな美し」だ。

画像2

わたしも自身で愛用するだけではなく、勿論香港土産として自分の周囲に自分の趣味を押し付けて?きた。少しは非中華圏への刺繍スリッパ啓蒙活動ができただろうか。

因みに今回は、長年履いていたメッシュ地の刺繍スリッパがとうとう破れたので、新たに仕入れてきた。ちょっと見てやってくださいな。笑。

↓ ピンクのパンダ。HKD180なり。ソールは皮製。汚れたら基本拭くだけなので、高温多湿気候の香港でもお手入れが楽なのも良い。

画像3

大人っぽい艶やかなフューシャ色のサテン地に素朴なパンダの絶妙なデザインのバランス。不思議と子供っぽくならず、シックでさえある。「カワイイ」が苦手な大人も十分エンジョイできるピンク色xパンダモチーフだ。

そんなわけで、最近自宅で足下を見ているだけで何故か気分が上がるわたくしである。ふふ。良い買い物をしたぞ。

画像4



[注]

*長衫(Cheongsam):男女問わず詰襟で裾の長い中国服を指す。日本で所謂女性の「チャイナドレス」とされるものは「旗袍 Qipao」と呼ばれるが、昨今では長衫と旗袍が同一視されていることが多い。因みに「旗袍」は上海発信で、「長衫=Cheongsam」は広東圏で「旗袍」が変化を遂げたもの。ここから華南~東南アジアの中華世界に広まった模様。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?