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彼女には彼女の地獄がある

「私には私の地獄が、あなたにはあなたの地獄がある」
宇垣アナがTVでそう発言したらしい。闇深く聞こえるけれど、妙に共感できてしまう。

最近この言葉を、ふと思い出す出来事があった。

友人を通して知り合った20代半ばの女性。彼女は香港在住の香港人。学生時代をイギリスと日本で過ごし日本で就職。その後転職して母国に戻ったようだ。英語はもちろん日本語もペラペラ。香港では3か国語喋れる人は珍しくはないが、彼女の日本語はこれまで会った人の中でも断トツだった。


彼女からイギリスや日本での思い出話をたくさん聞かせてもらい、とても刺激になったんだけど、そのなかでずっと引っかかっているエピソードがある。

日本語が上手な彼女は「どうしてそんなに上手なの?」と尋ねられることが多いらしい。現に私も同じ質問をしていて、全く英語が上達しないので勉強法を聞いたりした。でも彼女曰く「こういうふうに勉強したから。」という話をしても納得してもらえないそうだ。
「勉強しただけでそんなに話せるようになるはずがない、って言われるの。だから一度くらいしか会わない人には、母親が日本人で~って適当に言うようにしてる。そうすると、あ~だからね。って相手も納得してくれる。」

この話を聞いて、彼女にこういう事言っちゃう人達ってなんというか想像力足りないんじゃないかと思ったんですよ。自分の経験値だけで他人を理解しようとするなよ。知らんけどどうせ自分にできなかったら、他人もできるはずがないと思っているんじゃないかと。ハーフだから喋れるわけではないし(本当はハーフでもない)、海外にいるからその国の言語が喋れるようになるわけではない。「勉強したから」という彼女の回答を、どうして素直に受け取ってあげることができないんだろうと思ってしまった。

誤解を招かないように言っておくと、日本語を習得するまでの苦労について彼女は一切言わなかったし、努力の過程を誰かに認めてもらいたいとも思っていないと思う。彼女にとって母国語のほかに伝える言語を持っていること、母国以外に暮らしていける場所があることは、もう当たり前のことなのだろう。

隣の芝は青いと言うが、他人に見せている部分なんてほんの一部分だ。皆それぞれ事情も違うし価値観も異なる。相手の全てを知る必要も、分かり合う必要もないけれど、相手は自分ではないのだから、違う環境で違う価値観で生きているのだと理解するのが必要があるかなと、自戒の念も込めて思う。

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