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トレーニング『方法』を排除すべき理由

そもそもの私の立場は、トレーニングを指導することが役割と考えられているフィジカルという分野に属する。
だからこれまで契約してきたチームでは大半がフィジカルコーチ(またはファンクショナルTRコーチ)という役割を担ってきた。
(狭い範囲だが)世の中にもそのように認知されていると思う。

フィジカル系のトレーニングに関しては、ほとんどが「方法」というキーワードを介して成立する。
私が出演・執筆依頼を受けてきたメディア(数少ないが)においても、常にトレーニング方法を紹介することを求められた。
メディアやSNSで注目を集める多くのトレーナーやフィジカルコーチ的な方々も大半がそうだろうと思う。方法を必ず紹介しているはずだ。
YouTubeもトレーニング方法を紹介したものの方が明らかに再生回数が上がるし、コメントやSNSなどで届く質問も方法を求めるものがほぼ全てだ。

多くのフィジカル分野に属する方々は方法の研究や発信を得意としている。
この方法をとった時の身体の変化はこうだ。
この方法よりもこの方法が良い。
このトレーニング方法はこういうデータに基づいて。
新しいトレーニング方法を紹介します。などなど。
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このようなスタイルが大半である。

だから斬新で見たこともないようなトレーニングを”売り”にした方がきっと注目が集まることはこれまでの経験上知っている。

しかしサッカー戦術動作アプローチでは、トレーニング方法はほぼ登場しない。
今回の取り組みではトレーニング方法を扱うべきではないと。扱うと最も重要な部分の焦点がぼやけると判断した。
それゆえ、トレーニングの方法は講義内容から意図的に排除している。



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供給側も需要側も、『方法』を欲している

トレーニング方法を提供したい側とほしい側が多い、それはそれで成立しているからいいのでは、というのも一つの考え方だ。
しかし同時に、”その程度しか”期待されてないとも言える。少なくとも私はそう感じてきた。
パフォーマンスを上げるために最も重要なことは、「何をするのか」という視点であり、つまり方法ではない。結果的に同じメニューをこなしていても、なぜどういう理由でそれをやっているのかが全てである。
差を生むのは、「どういう目的と理由でそれを行うのか」の部分である。「何をするのか」に目を奪われている間は、本質的には何も進化していない。
そして方法を探し続ける方法依存の泥沼にのめり込んでいくことになる。
この沼にはまっている人は、「もっと良い方法がある」というフレーズにひたすら弱い。

あらゆるトレーニング方法は、文脈や前提条件次第で「正しい/間違い」はころころ変わる。どの競技の選手がやるのか、どういう状態の選手がやるのか、どのタイミングでやるのか。
そういった前提条件で指標は大きく変わるため、正しいや間違いは、ほとんどのケースで絶対値ではない。つまり常に絶対に正解となるトレーニング方法はない。
私はそのように考えている。

そういう立ち位置から見ると、フィジカル系のトレーニング方法を選択するまでの『プロセスを設計する機能』は、世の中で考えられている以上に重要だ。

■トレーニング方法を選択するまでのプロセス
競技構造・競技動作構造・選手の運動構造の分析とその構造内での目的を達成するために方法を選択する手順のこと。
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このプロセスを経由せず、ブレない体幹・正しい走り方などのトレーニングの良し悪しを判断することはできないはずだ。



フィジカル系のトレーニングに関する専門家ならば本来はこのプロセスの部分に重点を置くべきだ。
方法の過剰供給が続く以上、これから重点的に習得すべきところになっていくだろう。



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『方法』は自分の目で見極めるという決意

情報量が少なく方法が少ないフェーズでは、方法を追求したり拡大していくことは業界発展の正常なベクトルと言える。
しかし情報の過剰供給状態を迎えるとその位置づけは大きく変化する。そして私の感覚的には今は明らかにそのフェーズである。(あくまでも主観だが、共感してくれる方はいるだろうか)

選択肢つまり「方法」が増え続け、”適正量”を超えた時、「選択能力の重要度」が飛躍的に増える。
数多ある方法の中から、何をどんな理由で選ぶのか。優先順位や組み合わせ。
それらを目的に合わせて最適化するのが『選択能力』であり『分析能力』。
選択能力の本質は、方法を追い求める視界には存在しない。
方法依存をやめ、「方法は自分の目で見極める」という決意を一旦はしなければならない。

■サッカー戦術動作アプローチでは
分析方法だけ紹介してあとはご自分で、というのはさすがに難易度が非常に高いので基本的な分析を私が担い、皆さんには各々の戦術を実行するのに必要な動きを見極める目つまり選択能力を重点的に身につけていただきます。


「自分達のチームに必要な方法は自分の目で見極める」というサッカー指導者の決意。
それがなければ、そうしなければ選択能力は伸びない。それぐらい方法依存沼の力は強大だ。
もちろん、このこととフィジカル担当者を言いなりにさせることは別である。
フィジカル担当者の主張することを検証できれば良いのだ。
そこにフィジカルブラックボックスがないかを問うことができれば良いのだ。
あなたのチームの戦術実行レベルの向上に繋がっているかを根拠を持って尋ねることができれば良いのだ。

そして指揮官側から、『この戦術にはこの動きが必要だ。構造はこうだ。それを習得できるトレーニングを指導してくれ。」というオーダーが標準になることでフィジカル分野の考え方は必ず変わる。変わらざるを得なくなる。


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勝利のための条件を十分に把握すべきだしフィジカルはその条件にかなり関わっている

あなたのチームが勝利するための『条件』をあなたが十分に把握するべきであり、フィジカルもその条件に必ず含まれる。そのために指導者側が身に着ける必要があるのが選択能力である。
今回の文脈における選択能力とは、自分たちの戦術実行にそのトレーニングがどれだけ有効か否かを見極められる『目』のことだ。
こういった目を養うには、トレーニング方法を学ぶのではなく、「動きの構造」を学ぶしかない。そしてそれを内包するサッカーの競技構造を学ぶしかない。
そのために一旦は「方法」を排除しなければならない。
フィジカル属性の人間(私)がやる学習コンテンツで、方法を一切排除するというのはそういう理由があってのことだ。
チームで何らかのフィジカル強化のトレーニングをやっている、またはその必要性を感じているならば、今回の視点は知っておいて絶対に損はない。


戦術動作インスタ/note用.009

サッカー戦術動作アプローチ

ひたすらサッカーという全体構造に内包する動作構造すなわち戦術動作を中心に学んでいただき、あなたの戦術のための、あなたの大切な選手たちのためのトレーニング方法を、「ご自身で」見極める能力を養っていただきます。
選択能力重視へのシフトチェンジに共感していただいた方はこの思考訓練コースにぜひご参加いただきたいと願っています。

コチラ→https://jarta.jp/soccer-approach/


次回はフィジカルが勝利に結びつくための条件について





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全てはパフォーマンスアップのために。



中野 崇 
YouTube :Training Lounge|”上手くなる能力”を向上
Instagram:https://www.instagram.com/tak.nakano/
Twitter:https://twitter.com/nakanobodysync

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1980年生
戦術動作コーチ/フィジカルコーチ/スポーツトレーナー/理学療法士
JARTA 代表
プロアスリートを中心に多種目のトレーニング指導を担う
イタリアAPFトレーナー協会講師
ブラインドサッカー日本代表戦術動作コーチ|2022-
ブラインドサッカー日本代表フィジカルコーチ|2017-2021
株式会社JARTA international 代表取締役

JARTA
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